若い子のなぐり書きみたいな文章

「行くぞ!」

 

 ギャリン! ジャキキキキシャリン! ズバババギィン!


「くっ、やるな!」

「まだまだ! 速度をあげる!」


 ギャリリリリリリリン!! シュァーシャキキシュリンズビュシュシャシャシュィンいやこれ小学校低学年の文章だろ。


 タクマは微動だに動かない。見ただけで避けられるから避ける必要がないのだ。

 竜王の放った火炎が迫る。


「フハハハハ! どうだ! 我が力――何ィ!?」


 獄炎が晴れた。竜王は狼狽えて慌てていた。


「どうした?」


 タクマは余裕の笑みで笑う。


「せめて、俺に指の一本くらい動かさせてもらいたい気がするな」

「バ、バカナ! 幻獣界一強いと言われるこの俺の炎がまったく効かないだと!? どうなってるんだ! ありえない!」

「理由が知りたいか?」

「教えてくれ!」

「俺が強いからだ」

 

 竜王が愕然と口を半開きにする。当然だ。強くない奴に俺の強さは分からない。強ければ強いやつには負けないのだ。強いから強い。それ以外の理由があるか? 俺は強い。それだけ分かっていれば十分だった。


「まだ戦うか?」


 竜王はへとへとに疲労していた。


「ま、負けだ」

「じゃあ死ね」


 俺が一言言ったら竜王は爆死して死んだ。女が俺にすがりつく。


「好き! 抱いて!」

「ああ。後でな」


 タクマは女を抱いてセックスした。いやこれは頭が残念な文章だろ。


 こういうときってみんな楽しめないからボクはアイリとサクラを誘って教室を抜け出し屋上でワルツを踊りながら天体観測を楽しんでいて、そのとき世界に隕石が迫ってきてることを示す流れ星が輝きアイリがワーワー騒いで泣いたもんだから、ついボクはボカって叩いて黙らせたんだ。いやこの系統は舞城王太郎の劣化コピーにしかならん。


 闇。暗黒。王。皇。閻。魔。竜。ドラゴン。龍。籠。伽藍。刹那。瞬。火。火炎。火焔。暗黒竜。暗黒皇龍。闇王龍。紅。紅の。紅ノ龍。紅ノ暗黒竜。王。Fack。いやこれは中学生の机のなぐり書き。


 世界が光っていた。ボクの目にはそう見えていた。

 ボクはアイリを抱きしめた。

「好きだよ。愛してる。でもボクは――」

 アイリは涙していた。分かっていたんだ。知っていたんだ。全てを。

 ボクは腕の力を強めた。彼女の全てを抱きしめたかった。手の中に収めたかった。どれだけ力を込めても足りない。すり抜けてしまう。どうしてボクはこうなんだろう。分からない。ボクの全てくらいじゃいやこれは若いとかと違う気がする。


 若い子のなぐり書きみたいな文章って、どんなんだろう。

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