第176話 ラジャル(エイ)
とりあえず競技場はこのくらいにし、あとはロズを代表にしてあとの細かいことは任せた。
レブとチェルシーを連れてコルモアへと向かった。
「レオガルド様、レブ様、チェルシー様、よくいらっしゃいました」
今回もオレらがくると迎えてくれるセオルとその嫁と子供たち。わざわざ申し訳ないな。
「ああ。秋の間はいるんでよろしく頼む。レブとチェルシーは少しの間だがな」
「はい。神殿も完成したのでゆっくり過ごしてください」
神殿できたんだ。人間の女が少ないので寝床があるだけのものだったが、巫女はどうしたんだろう? と思ったらゴゴール族の巫女が管理していた。
「そう言えば、神殿にくる途中、ゴゴールが結構いたな」
「同盟航路のことをレオガルド様から聞いて、冒険心のある者が集まってきたんですよ」
あー言ったっけ? いや、誰かに言った記憶はあるが、こんなにくるようには勧めてないぞ。
「そうか。まあ、選ぶのはレニーラだし、オレは口は出さんよ」
なにもかもオレが口を出すとオレに忖度し始める。レオノール国の営みはなるべく国民たちで解決するべきだ。オレは手伝いとしているほうがいいだろう。
……とは言え、オレたちの力がないと成り立たないんだから口を出すことになっちゃうんだけどな……。
「レニーラはきてるか?」
「三十日航海訓練に出ています。あと十日くらいは帰ってはこないと思います」
「三十日も船に乗ってるのか。よく堪えられるものだ」
あの狭いところで三十日も暮らすとか、ネガティブな妄想しか湧いてこないよ。
「まあ、わたしも海は渡りたくないですな。あの狭い中での航海は今でも夢に出ますよ」
死に物狂いで渡ってオレに出会うのだからトラウマの一つもできるだろうよ。
「レブ、チェルシー。エサ探しのついでにコルモアの周辺を見てきてくれ。オレはコルベトラまでいってくるから」
「わかった! チェルシーいくよ!」
駆けていくのを見送り、オレもコルベトラへと駆け出した。
「獣の臭いがなくなったな」
前は微かに嗅ぎ取れたのに、今はまったく嗅ぎ取れない。ブレイブが住んでるから逃げ出したのだろうか?
数分でコルベトラへと到着。去年より発展していて驚いた。
「ミドア。頑張っているようだな」
すぐにミドアがやってきた。
「はい。暮らしがよくなりましたから仕事が捗っています」
それはなにより。モンスターが出ないと人間の開発力は凄いもんだよ。
「ブレイブのボゥはどうしてる?」
「家族がきて、ちょっと奥に集落を作って住んでます」
と言うのでミドアを連れて向かってみた。
巨大なだけに家はデカいが、意外と普通の家だった。なんかこう、もっとファンタスティックな家に住んでるイメージしてたよ。
「ボゥ」
だと思う臭いに声をかけた。牛フェイスの区別はつかんわ。
「レオガルド様。久しぶりです」
「ああ。長いことこれなくて悪かったな。暮らしはどうだ? 不便してないか?」
痩せた感じはしないし、顔色は……わからんが、たぶん、いい艶してると思う。
「ミドア様たちにはよくしてもらっている。夜も心配なく眠れ、食べるものにも困らない。移り住んでよかった」
その牛フェイスでよくしゃべれるよな~。なんて考えながらボゥからここでの暮らしを聞かせてもらった。
「ブレイブは魚も食えるのか?」
なんかエイみたいなものが軒先に吊るされていたので尋ねてみた。
「毎日食べている。特にラジャルはよく捕れて美味い」
「美味いんだ。オレも狩って食ってみるか」
エイ──ラジャルはよく見ていたが、なんか美味そうに見えなかったのでスルーしてたんだよな。
さっそく海に向かい、飛び込んで捕まえた。
雷を通していただきます。淡白ではあるが、そう美味いってわけじゃない。たまに食うにはいっかな~ってくらいだ。干したら美味くなるのかな?
ラジャルは人間たちも食うと言うので二十匹くらい捕まえてきて、コルベトラの連中に振る舞ってやった。
「レオガルド様がきてくださると食卓が豊かになります」
「レオノール国の民を飢えさせたら守護聖獣の名が泣くからな。とは言ってもお前たちの努力が必要だ。飢えないよう頑張ってくれ」
「はい。自らの足で立ってこそレオノール国の民ですからな」
ちゃんと根づいてくれててなによりだ。
コルベトラの様子を見て回ってからコルモアへと戻り、セオルたちの歓迎を受けながらこれまでのことを聞かせてもらった。
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