第80話 ハンバーガー
進みは遅かったものの、ミナレアには五日で到着できた。
「バリュードですか。群れが流れてきてれのかもしれませんな」
「そうだな。流れてきてる恐れがある」
ミナレアの長老格のヤツらはバリュードを知っているらしく、そんなことを口々に言っていた。
「流れてきてるのなら
狩りと言ってもミナレアに獣が近づかないようであり、食い物を集めるのが主だがな。
「バリュードの毛皮はお前たちで分けろ」
ゼルム族は肉を食わないので、運んだバリュードはオレの胃へと収めさせてもらった。
「ミゼル。二日は休め。オレはルゼ公爵に報告してくる」
それにギギやレブにも会いたい。二日はオレも休むことにします。
ルゼたちに帰りの挨拶をし、マイノカやコルモア、コルベトラの様子を語ってやる。
「こちらはなにかあったか?」
「ゴゴールがよくくるようになりました」
季節は秋。冬籠もりのために食料を調達にきているそうだ。
ミナレアの地は恵まれた地であり、春夏秋と食える植物が生っており、保存技術もある。昔は奪い奪われる仲であったが、今では物々交換する仲までにはなっている。
もちろん、まだ恨み辛みはあるが、オレが睨みを利かしているので表立って騒ぐヤツはいない。三十年もすればもっと和らぐだろうよ。
「あちらにも顔を出さないとな」
年に一回は顔を見せないと不公平感が出てくる。と言うか、あちらにもなにか組織しないと不味いかな。なににしたらいいんだ?
「レオガルド様。皆でゴノの実を収穫にいきましょう」
「ああ、いこうか」
ギギの誘いに、考え事を放り投げる。
しかし、ゴノの実か。マイノカや農業村に移してからは収穫にも参加してなかったな。
次の日、巫女やヤトアの嫁を連れてゴノの実がなる場所へと向かった。
ゴノの実がなる場所は二十キロ先にあり、往来が激しいのか一メートルくらいの幅の道ができている。まあ、荷車の幅には足りてないが、それほど険しくない。謎触手で切り開いていけば一時間くらいで到着できた。
「たくさん生ってるな」
「ゴノの木以外を伐って少しずつ増やしていったみたいですよ」
へー。それは凄い。狩りで生きてると思ったら農業みたいなこともやっていたのか。
「こんなに生っているのに収穫が間に合わないとはもったいない限りだ」
秋は他のものも収穫しないといけない。ゴノの実は不作対策みたいなものらしい。
「来年は、収穫要員を連れてくるか」
ゴノの実は麦の代用品となるし、実を乾燥しておけは数年は貯蔵できる。飢饉対策として適したものなのだ。
「オレの風で落とす。ギギたちは拾え」
ゴノの実は熟すと落ちると言う。ならば実が詰まっているものなら揺すれば落ちるはず。と、謎触手を木に絡めて揺すったら読み通り落ちてくれた。
ゼルム族なら落ちたものを拾うのは結構大変なことだが、人間ならそう大変でもない。まあ、長時間やれば疲れもするが、ゼルム族よりは楽に集められる。
「少し、その辺を見回ってくる。レブ。頼むぞ」
三十人もいないので、五、六本も揺らせば集めるだけで一時間はかかる。その間に周辺の様子を見ることにする。
「わかりました」
レブとチェルシーがいるなら獣道も近づいては来ないだろうが、落ちたゴノの実を食いに猪が集まり、その猪を狙って肉食獣が集まってくるそうだ。
なんて聞いた話を思い出していたら猪の足跡らしいものを発見してしまった。
「猪ってどこにでもいるよな~」
世界が違えど猪と言う生き物は繁殖力が高いものだぜ。
ただ、この辺にいる猪は小型で、穴を掘るのが上手いらしく、狩るのはとても大変なんだそうだ。
三十分くらい歩み、密集しているゴノの木を一本噛んで引っこ抜いた。
今年は無理だが、来年から収穫するなら間引きしておいて栄養を分散させておこう。
密集しているところを何本か引っこ抜いてからギギたちのところへと戻った。もちろん、引っこ抜いた木は運んで収穫しますよ。
次の日もゴノの実の収穫へといこうとしたら、ゴゴール族たちがやってきた。
「我々も連れてってもらえませんか? ゴノの実を持ち帰りたいので」
「食料難か?」
ゴゴール族からくる報告ではそんなこと言ってなかったが?
「いえ、我々もゴノパンを食べるようになりまして、求める者が多いのです」
フレンズな獣人も雑食性な種族だから肉も野菜も食うが、ゴノパンはスカスカすると言っていたはず。いったいなにが起こったんだ?
「コルモアでハンバーガーを覚えてきた者がいまして、それから大人気になったのです」
あーそう言えば、肉だけでは飽きると言うのでハンバーグやハンバーガーを教えたな。オレは生肉派なので忘れていたわ。
「ゴノの実はこちらでは生りませんので、採らないなら我々に収穫させていた抱きたい」
これはオレの判断で決めていいことではないので、ルゼや長老格を呼んで判断させた。
「わたしは構わないと思う。長老たちはどうだ?」
「問題ないかと。我々では低い位置のものしか採れませんし、生りすぎると猪が増えますからな」
「そうだな。猪が増えてさらにバリュードが流れてこられても困る」
全会一致で可決。ゴゴール族たちに収穫させることにした。
「レオガルド様。レブにゴゴールの地へ走らせて人手を連れてきてはどうでしょうか? 今なら冬までにかなり採れると思うのですが」
「ルゼ、どうだ?」
またルゼたちに決めさせる。
「ついでに猪を狩ってもらったらどうだろうか? 我々では穴に逃げられたら打つ手はないが、ゴゴールなら穴にも入れるだろう」
「それはいい。穴猪は本当に厄介だからのぉ」
とまた全会一致で可決された。
「レブ。頼めるか?」
もう迫害どころか神聖化されたレブは、ゴゴール族に祈られる立場になっている。任せても問題ないはずだ。
「はい! 任せて!」
と、やる気満々なレブに任せ、オレらはレブの実の収穫に向かった。
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