第63話

翌日、警備隊の詰所に行こうとしたところで路地裏から騒ぎ声が聞こえてきた。


「何でしょうか?」

「問題でもあったのかしら」


ジゼルと顔を見合わせて首を傾げる。

もしかしたら昨晩何者かに話を聞かれたせいで問題が起こったのかもしれない。焦った私達は警備隊のところに行くよりも早く路地裏に駆け込む。


「おー、君達か」


人集りになっているところに向かう途中で声をかけてきたのは二日前の晩に路地裏で事件を起こそうとした男性達の一人だった。

朗らかに笑って近づいて来る姿に首を傾げる。もし路地裏で問題が起こっていたらこんな風には近寄って来ない。敵意剥き出しで責めてくるに違いない。

そうじゃないとすると路地裏の騒ぎは一体何なのだろうか。


「おはようございます。あの、こちらが騒がしいみたいですが何かあったのですか?」


尋ねた瞬間、男性は何を言っているのだと首を傾げた。疑問に思った事を尋ねたのに微妙な反応を貰ってしまったのだ。

変なことを聞いたのだろうかとジゼルを見ると私同様に訳が分からないと不思議そうな表情を浮かべていた。


「魔法道具の設置が決まったんだよ。どこに設置するか決める為に全員で見て回っているから騒がしくなっているんだ」


魔法道具の設置が決まった?

どこに設置するか決める為に騒ぎになっている?

訳が分からなかった。首を傾げると男性は満面の笑みで「君達が警備隊の奴らを説得してくれたんだろ?」と聞いてくるが心当たりがない。先程宿屋に帰って行ったジェドが説得してくれたのかもしれないと思ったがもしそうなら一言あるはずだ。


「俺達が署名を集め終わる前に片を付けてくれるとは思っていなかったよ」

「いや、あの…」

「君達には感謝しかない、今度改めてお礼をさせてくれ」


私とジゼルが動揺している間に男性は人集りの方に去って行ってしまう。

誤解だと解く暇がなかった。


「一体どうなっているの…」

「さ、さぁ…」


情報通のジゼルも困惑状態だ。流石にこの情報は知らなかったのだろう。

彼女から「とりあえずジェドさんに何か知らないか聞いてみませんか?」と提案されるが首を横に振る。

おそらく彼は今さっき寝始めたばかりだ。無理やり起こして収穫ゼロだったら申し訳ない。

路地裏の人達に話を聞くのが一番かもしれないが魔法道具の設置場所を思案するので忙しいはず。誤解を解くのは落ち着いたらにさせて貰おう。


「警備隊のところに行きましょう。何か知っているかもしれないわ」

「そう、ですね…」


頭にはてなを浮かべながら警備隊の詰所に向かった。


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