第8話:第2章④願い、叶えました
「え?あるの?願い!」
小さい子供のようにわかりやすく喜んだ。
「ああ、あるとも。そのかわり、難しい願いだぞ」
「大丈夫大丈夫、どんな願いだって叶えてあげるから」
大阪のオバチャンみたいに人懐っこく手で叩いてきた。
「じゃあ、願い事を言うな」
「オーケーオーケー。バッチこい」
そんな野球人みたいな悪魔に魔球を投げることにした。
「僕を満足させてくれ」
「……はい?」
しめしめ、癖を見ぬたと思ったら違うボールが来たみたいな困惑をしている。
「だから、僕を満足させてくれ。退屈なんだ。面白いゲームでもすごい人との出会いでも未知なるものの発見でもなんでもいいんだ」
「……ええっと」
おいおいどうした悪魔さん。今まで僕を困らせたバツが当たったんだよ。困って顔が赤くなっているよ?
「どうした、できないのか?だったら契約は無理だ」
「その、じゃあ」
「ん?」
「私の体で」
「それは要らないです」
「なんでー!」
彼女は狼の遠吠えのごとく叫んだ。
「いや、君、人じゃないじゃん」
「……!」
風呂を覗かれたみたいに顔を真っ赤にしているが、こっちも顔が赤くなった。まさか、この悪魔からそんな言葉が出てくるなんて驚いた。
でも冷静に上から下まで舐め回すように見たら、顔は悪くないしスタイルも悪くない。人間だったら断らなかったかもしれない。
……
「いや、まあ、人じゃないから」
変な空気になったから話題を変えようと思ったが、言葉が思いつかなかったので、録音機能のように同じことを繰り返した。こんなことなら、こんな願いを言うんじゃなかった。
「――じゃあ、あたしが人間になったらいいんですね」
「――はい?」
「だから、あたしが人間になったらいいんですね?」
いやいやいや……あれ? へんな流れになっている?
「いやー、それはやめたほうがいいんじゃないかなー。だって、悪魔を辞めるって大変なことだと思うよ」
「でも、そうすれば願いが叶うんですよね?」
いやいやいや。ちょっと待て。べつにそれで僕の願いが叶うわけではないと思うのだが。
「あのね。ちょっと落ち着こう?ね?」
「じゃあ、人間になります」
あっ、ちょっ、お前、待て!
あっ、こいつの体がオーロラのように輝き始めたぞ、いかにも魔法かけてますみたいな雰囲気で!
あっ、ちょっ、……えぇ。
「……人間になりました」
僕は1人の女性と出会った。
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