第25話「嫌だよ、そんな……。死にたくない……」
──残り一件。
犯人の警察が最後に放った言葉が波紋を呼ぶことになる。再び、出鱈目の犯人検挙が始まるのであった──。
今回は犠牲者こそ出たが、佐野の時とは違って行ける部屋が増えているわけではなかった。どうやら眼鏡の男の死は『死』としてカウントされていないようだ。
もしも誰かが通報をするとしたら、【殺人現場】の犯人について議論をしていくことになるだろう。
マコは【殺人現場】から持ち出してきたアイテムを見ながら溜め息を吐いていた。マコが証拠品として持ち出したのは『布切れ』と『携帯電話』である。
──これらがもしもの時に、見を守るアイテムとして役に立つのだろうか。どうも心許ない。
携帯電話は元々電波がなかったのだが、さらに電池も切れてしまってより使い物にならなくなってしまった。
「どうしよう……」
なんだか不安になってくる。
こんなもので他の人たちより優位に立つことが出来るのか──何より、綾咲や足達教官なんぞに手の平をかえされたらマコなど一溜まりもない。
──いや。二人はそんなことをしないだろう。
潜在的に、マコは足達と綾咲を信頼していた。
だから、そもそも向こうが何をして来ようとも、マコは二人を欺き蹴落とす気にはなれなかった。
ここへ来て、みんなは如何に自分の身を守るか──誰に罪をなすり付けて自分が生き残るか──そんな方法を模索しているようだった。空気はピリついて、満足に話すことすら難しくなってきてしまっていた。
だが、心優しいマコは邪悪に染まることは出来なかった。
しかし、それではマコも良い鴨である。こんな甘ちゃんではこの先、佐野や眼鏡の男のように凄惨なやり方で処刑されてしまうことは目に見えていた。
「嫌だよ、そんな……。死にたくない……」
誰ともなしにマコは呟き、体を震わせた。
でも──それでもマコは、みんなでここを出たいと考えていた。
誰も傷付かず、誰も泣かず──そんな方法はないものかと、頭を悩ませたのであった。
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