闇送りは誰にでも

霜月ふたご

第1話「それでは、死刑を執行致しましょう。」

 みんなの目が、少年へと向けられていた。


「嫌だ……違う。俺は犯人なんかじゃ……!」

 少年は涙を流し、必死に訴えた。

「貴方のバッグの中から、凶器の刃物が見付かったわ」

──女の子が言った。

「違う! 俺じゃない!」


「君の指紋が、被害者の衣服に付着していたよ」

──髭面の男が言った。

「でっち上げだ! 俺は、被害者なんて知らない!」


「防犯カメラの映像に、君が被害者を刺し殺す場面が映っていたよ」

──小柄な少年が言った。

「嘘だ! そんなものが、存在しているわけがないだろう!」


 天井から吊り下げられて設置されていたモニターが点る。

 画面に──鼠のお面を被った制服警官の姿が映る。

『それでは、宜しいでしょうか? 【殺人の罪】で、どなたを告発なさいますか?』

 鼠のお面に問われて、みんなは一斉に少年を指差した。

「ち、違う……! 本当に俺じゃ……!」


──嘘だ、嘘だ、嘘だ!

──嫌だ、嫌だ、嫌だ!


 少年は脳内で必死に叫んでいた。


 ふと、鼠のお面が笑ったかのように見えた──。

『満場一致ですね。犯人が決まったようですね』


「や……やめてくれ……」

 少年の顔は恐怖で引き攣ったものである。


『生き残れるのは、善良な市民一名のみです。皆様、引き続き凶悪犯を炙り出して頂くよう宜しくお願い致します』

 ペコリ──と、鼠のお面がモニター越しに頭を下げた。


 そして──。

『それでは、死刑を執行致しましょう。自らが犯した罪を悔いて、あの世で償って下さい!』


──ぎゃぁぁああああぁぁぁあ!


 少年の悲鳴が施設内に響き渡ったのであった──。

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