伊達政宗、隻眼の覇者は伊達じゃない その拾陸
タイムマシンを壊したのは、一般人に見つかった場合は悪用される危険性があるからだ。それにタイムマシンは動かそうとしても動かなかった。おそらくだが、片道だけのタイムマシンなのだろう。だから壊した。
まずは近くにある公園まで行き、落ちている新聞を拾い集めて日付を確認した。すると4月7日以降の日付の新聞はなかったので、今日は4月7日なのではないかとわかる。事実、駅前で『本日は4月7日』という看板があった。
そして、西暦は2019年のようだ。まだコロナウイルスが流行る前であり、前世の俺もまだ死んではいない。まあ、会いに行く気はないが。
何県かは駅名で理解した。千葉県館山市だ。チーバ君の足の方だな。田舎も田舎だ。出来れば住み慣れた町まで行って、そこで暮らしながら帰還方法を見つけたい。
アマテラスに呼び掛けてもあいつは返事もしないから、これくらいは自分で何とかしろ、と受け取れるのかな。
移動手段はどうするべきか。電車、バス、タクシーなどに乗ろうにもお金は持っていない。着ている服や持っているものを売るとしても、戦場に行くための服装だったからあまり高価なものは持っていない。
装着している鎧は高値で売れるだろうけど、ここら辺では鎧を取り扱っている店がない。こんな鎧を装着していたら目立つが、田舎だから人は多くないのが幸いだった。
持っている武器は木刀だけ。真剣を持っていなくて良かった。もし真剣を帯刀しながら歩いていようものなら、警察官に見つけられて銃刀法違反で現行犯逮捕されてしまう。
いや、ちょっと待て。鎧に敵方を斬った時に付着した血がある。これが見られたら殺人犯と疑われてしまう。この鎧は捨てておくのが最善だ。
鎧を山に捨てると下山して、徒歩で行けるところまで行こうと思う。念のために木刀を持ちながら歩いていると、背後から頭を叩かれた。
振り返ると、ラフな格好をした不良少年がいた。すると周囲を何人かの不良に囲まれた。これはカツアゲだろうか?
「おいガキ。金を置いてとっとと失せやがれ!」
「おお、やっぱりカツアゲか」
「あ? 舐めてんのか、テメェ?」
不良の手を振りほどくと木刀を握り、リーダー格の脳天を木刀で思い切り叩いた。残る不良も木刀でなぎ倒すと、全員のサイフからお金を抜き取った。
「俺はお金を一円も持っていない。どうやってお金を手に入れようかと考えていたからちょうど良かった。助かったよ、君ら」
「ち、ちくしょう......」
不良五人全員の持ち金を合わせて一万八千円。俺の故郷である千葉市に行くまでに一万八千円が尽きることはないはずだ。
節約のためにバスを乗り継ぎ、時にはタクシーに乗って千葉市を目指した。夜にはなったが今日のうちに千葉市に到着することが出来た。
泊まれる場所を探したが、持ち金もかなり少なくなってきた。出来れば持ち金をもう使いたくないので公園で寝ることにしたのだが、まあこれが肌寒い。
陽が出ている時は明るい印象を受ける公園だが、夜になると外灯の明かりにのみ照らされる公園は薄暗くて幽霊でも出るのではないかと思ってしまう。より寒さが増した......。
ベンチで横になって目を閉じると、どうやって戦国時代に戻るか考えながら眠りに就いた。
目が覚めると子供達にイタズラをされていた。ガキに木刀を取られて遊びに使われていたので、軽く頭を叩いて木刀を取り返した。
「うえええぇぇ~~~~ん!?」
頭を軽く叩かれたクソガキは泣き出し、近くにいた大人達は俺をジロジロと見ていた。ばつが悪いので公園から逃げ出し、どこか座れる場所を探しながら歩いた。
日陰でため息を漏らしながら、気まぐれにアマテラスに呼び掛けた。そうしたら、昨日は
『やあ、政宗。まさか2019年の日本に君が送られるとはね』
「アマテラス、テメェ! いつになったら戻してくれるんだ!」
『まあ待て。今は君の脳内に直接言葉を送っている状態だ。つまり、テレパシーという奴だよ。で、なぜ我は君の意識を神界に呼ぶのではなくテレパシーを使っていると思う?』
「まさか、二十一世紀に
『その通りだ。二十一世紀に、我は太陽神の座にはいないのだ。二十一世紀には新たな太陽神が鎮座しているはずだから、干渉が難しいんだ。もし二十一世紀までに我が生きていたら干渉は幾分マシだったが......。まあ、そういうわけでテレパシーを使っている』
「何となく理解した。早く俺を戦国時代に帰らせてくれ」
『言っただろ? 干渉は難しいと。江渡弥平達と戦う少し前に君を戻すには制約をかいくぐって力を発揮し、無理矢理にでも干渉しないといけない。それには少し時間が掛かるんだ』
「わかった。あと何日くらい要する?」
『三日ほどは必要だ』
「三日か。なら、それまでは二十一世紀の日本を
『了解した。急いで帰れるように頑張ってみるから待っていろ。帰還準備が出来次第、テレパシーで連絡をする』
「んじゃ、それまで戦場から離れて楽しい気分をさせてもらうことにするよ。不良をカツアゲでもして歴史本を大量に買い込んでやる!」
『好きにしろ』
テレパシーでの会話が終わると、近くにある本屋から読みたい歴史本を探した。ついでに神保町に行って珍しい歴史書を漁り、立ち読みしながら解読した。何十年かぶりの楽しみである。
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