伊達政宗、悪運の強さは伊達じゃない その拾伍
成実は頭を悩ませた。「その腐った卵をどのように使って毒ガスを作るんですか?」
「毒ガスと言っても見掛け倒しだからなっ! そこんとこは重要だ! ええと、まずは即死くらいの濃度の腐卵臭を
「抽出? それはどのようにしてですか?」
「そこは俺の神力の出番なんだよっ! 独眼竜と渾名された俺の力を舐めんな」
「は、はい!」
鼻をつまみながら腐った卵の入った容器を手に取り、空中に展開した防御壁の上に容器を置いた。フタを取ると、神力で卵を浮かせて
そして圧縮し、臭い成分だけを取り出して容器に詰めた。ちゃんと密閉されているか再確認し、
「毒ガスは完成したんですか?」
「まあな。って言っても、何度も言うが見掛け倒しのものだぞ。即死濃度には達しないように調整しながら、それでも毒ガスと
「
「やめとけ。嗅いだ瞬間に確実に気絶するくらいの刺激臭だから、絶対に嗅ぐんじゃねぇぞ」
「はっ! わかりましたっ!」
見掛け倒しの毒ガスとして明日にでも実用するとして、まだ量が足りない。まだ腐った卵を大量に持ってきたから、それも圧縮して抽出しよう。
「成実。腐った卵を入れた容器はたっぷりと持ってきているから、そいつらをここに運んできてくれ」
「了解しました」
成実はせっせと腐卵臭の詰め込まれた容器を運んできた。俺はその容器の中身の腐卵臭を圧縮して濃度を上げ、見掛け倒しの毒ガスを作っていった。
容器を運んできた成実のお陰で作業効率が上がり、夜が明ける前までに即死濃度をギリギリ下回る硫化水素の毒ガスが完成した。鼻をつんざく刺激臭であり臭いが非常に興味深いが、怖いのでまだ嗅いでいない。
これで化学兵器も出来て、いよいよ人取橋の戦いも二日目だ。俺は夜間に見張りをしていた夜行隊と遠距離射手部隊の様子を見に行った。
「舞鶴、敵方の様子はどうだ?」
「ああ、眠いですよ私は」
「だろうな。普通は交代しながら見張りをするんだが、元々夜盗のお前らなら耐えられるだろーが」
「夜行隊の一部は夜盗だが、君が敵方を
「ああ、確かにそうだったな。──それで早速本題なんだがね、毒ガスを作ったんだ」
「ど、毒ガス!?」
「見掛け倒しの毒ガスだけどな。やばい刺激臭の毒ガスだから、俺がそれを使うと合図を出したら夜行隊は離れてほしい」
「理解した。他の隊にもこのことを伝達するか?」
「頼もう。嗅いでも死にはしないが体に毒だからな。そうだ、嗅いでみっか?」
「......
「だろうな。言ってみただけだ」
俺は遠距離射手部隊のところへも行き、忠義と久々に会話を交えた。
「若様、お久しぶりですね」
「ああ、話すのは久方振りだ。だが、何度も顔は見ているから久しぶり感がねぇな」
「ですね。何か私にご用がお有りで?」
「まあな。毒ガスを作ったから、今日の戦で使うつもりだ。だから、俺が毒ガスを使う合図を出したら部隊を離れさせろよ」
「相わかりました! 部隊全員に伝えておきます」
「あと、これをやる」
背中に掛けていたものを取り外し、忠義にそれを渡した。
「これは......クロスボウですか?」
「その通りだ。仁和から教わりながら、忠義の体に合うように手作りした。弓と威力は
「え、ええ。仁和殿に教わったのならば、このクロスボウは安全性と威力を兼ね備えているという折り紙付きですね。ありがたく使わせていただきます」
元来、クロスボウは弓と同じくらい古くから存在したと仁和は言っていた。くわしくは聞いていないが、かなり威力を上げるような仕様にしたようだ。
「んじゃあ、日の出とともに戦闘開始だ!」
忠義はうつむきながら、太陽を指差した。「す、すでに日の出ですよ」
「うわあっ! 本当に日の出になっちまってんじゃねーかっ! 至急、戦を始めろ! まずは遠距離射手部隊が弓矢で攻撃、夜行隊は休め! 速攻部隊は接近戦、鉄砲隊は頃合いを待て!」
「「おおーーーーーっ!」」
本陣に戻って毒ガスの入った容器を腰に全て付けると、眠っていた成実を起こした。
「戦闘開始だ、成実!」
「ま、まだ眠らせてくださあぃ~~」
「駄目だ。毒ガスを敵方に放つから手伝えよ」
何とか起こすと、ウルトラウィークの背中に乗せた。俺もウルトラウィークの前方に乗り、戦場に
「全隊、
毒ガスを放つ合図をすると、全隊が撤退をした。敵方は何だ何だと騒いでいたので、密集している場所に向かって容器を投げた。
衝撃を受けるとフタが外れる仕組みの容器だから、そのまま密集地帯に毒ガスが撒き散らされた。そしてその刺激臭で、大体の敵方を気絶させた。
「よっし、まずは
見掛け倒しだが毒ガスは毒ガスだ。敵方は一気に総崩れだ。腐った卵も馬鹿には出来ないぜ。
まだまだ毒ガスの入った容器は数十個はあるから、伊達軍は負けることがない。あとは歴史通りに俺が動くだけで、オールOKだ!
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