伊達政宗、悪運の強さは伊達じゃない その拾壱
もうすぐ一日目が終わるな。二日目には戦は終わるから、あと少しだけ持ちこたえよう。
蘆名・佐竹連合軍、つまりは敵方と俺達とでは圧倒的な兵力差がある。伊達軍が負けても当然のことなのだ。まあ、史実では伊達軍がギリギリで持ちこたえているが、ぶっちゃけそこまで史実に忠実にしなくても良い。
ではでは、俺が作った武器を
「掛かってこいや、
挑発してみると、敵方の数人が俺の方に向かってきた。俺は燭台切を鞘に戻し、代わりに
「へっ! 木刀で勝てると思っているのか?」
俺は頭を抱えた。「木刀が使えないという嘘はいつ定着したんだ? 耐久力に目をつぶれば、テメェらの使う真剣より有用だよっ!」
「なぁっ!」
木刀に突かれた敵方は、
真剣と木刀が打ち合ったら、真剣の方が折れる確率が高いに決まっている。それに、真剣の重さが一キログラムだとして木刀は一キログラムの半分である五百グラムに近い。それならば、木刀の方が軽いから扱いやすい。
バリツのような突き技を応用した木刀の攻撃だが、振り下ろすより突いた方が良いであろう。振り下ろすには振りかぶる動作が必要だからスキが生じてしまう。例えるならば、テレフォンパンチだ。対して、突き技は振りかぶることはないからスキは生じない。
それに何より、突く方が威力が通りやすい。剣道で突き技が中学生以下は使用不可なのは、威力が強すぎるのが理由だ。
刀は剣と違って真っ直ぐではないから、突き技をしても威力が分散してしまう。木刀はその欠点を
剣豪・宮本
「おーい、俺の木刀に吹き飛ばされた奴!」
「な、なんだ!?」
「俺の味方になるならば命を救ってやるよ! どうする?」
「命を救ってくださるならば、味方になるぜ!」
「よし! ならば、あっちの方へ向かえ! 舞鶴と名乗る奴に事情を話して、夜行隊の一員になれ」
「わかった......わかりました」
「おう」
これでまた仲間が増えた。この程度で敵方との兵力差を埋められるとは思っていないが、即日伊達軍敗北となることを避けることぐらいは出来ているだろう。
戦というものは神経を使うなぁ。精神的に疲れてきたよ。体力的にはまだ限界じゃないから、もう少し頑張ってみよう。
「負けたい奴から掛かって来いよ! ゴラァ!」
「「よっしゃ! あいつ殺そう!」」
数人がかりで俺に向かってきたが、木刀で頭を突き飛ばした。その後、腹を蹴り飛ばして力の差を見せつけた。
「俺の仲間になるか、ここで殺されるか。自分が最善だと思う方を選べ!」
こうやって威圧すれば、大体は勝手に仲間になる。そろそろ馬に乗って一気に敵を倒したいところだな。いや、まずは本陣に戻るのが良いのか。ウルトラウィークはジョーが使っていたから、さてどうするか。
「若様!」鬼庭は馬を止めて、俺に顔を向けた。「どういたしましたか?」
「あ、鬼庭か!」
「はい!」
鬼庭良直には指揮を任せている。だが、別に人取橋の戦いの一日目は目立った活躍はしない。良直に本陣まで連れて行ってもらおう。
「俺を乗せてくれ! そして、本陣へ向かってくれ」
「本陣ですね? わかりました! さあ、乗ってください」
「助かる」
俺が乗ると、良直はトップスピードで本陣まで馬を走らせてくれた。隠居後のご老人といえど、伊達氏四代に仕えただけはある。忠臣だ。
けれど、史実では鬼庭良直は人取橋の戦いで死ななければならない。俺が良直に指揮を任せたのも、そのためだ。すまない、良直よ。
「若様、どうしたのですか?」
「な、何がだ?」
「お顔が悲しそうでした。何かあったのでしょうか? でしたら、お役に立ちますよ」
「いや、気のせいだろ。俺は悲しくはないぞ」
「さようですか? それなら良いのですが、この老体が何か
「ならば、警戒していろ」
すまぬ。お前を殺したいわけじゃないんだ。史実通りにするには、お前に死んでもらうしか道はない......。悪く思うな。
「体調が優れないのですか? 発汗をしていますが」
「なあに、緊張しているだけだ」
こいつ、直感が鋭いのか? 察しが良すぎる。だが、自分が死ぬとまでは思っていない。それも当然だ。良直ほどの歳ならば、寿命で死ぬ方が自然。
「なあ、良直」
「何でしょうか?」
「戦で命を落とすということは、名誉あることだと思うか?」
一瞬、良直は驚いたようにこちらを振り返った。それから肩を落とし、息を吐いた。
「戦士たる者、戦で死ぬのは名誉あることだと思います。しかし、この歳になってからというもの
良直の答えを聞き、俺は唇を噛んだ。こいつには天寿を全うしてもらいたい、と思う自分がそこにいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます