伊達政宗、悪運の強さは伊達じゃない その壱
小十郎の刀を磨き終えると、その刀を渡した。
「おお、助かるよ」
「ちゃんと戦の準備をするんだぞ」
「わかっているよ、そんなこと」
俺は燭台切を手に取って、手入れを始めた。戦の開始までは七日程度ある。ゆっくりと戦の準備をしようじゃねぇか。
光り輝く刀を持って、小十郎は部屋を出ていった。っにしても、刀以外に、高性能の銃も必要だな。権次と兼三に一丁ほど作ってもらうか。
立ち上がり、扉を開いた。すると、小十郎はまだ廊下にいた。「どうしたんだ、名坂?」
「まだいたのか?」
「じゃなくて、どこ行くんだよ」
「権次と兼三のところ」
「僕も着いていって良いかな」
「構わない」
権次と兼三の部屋へ向かうと、二人そろって刀を眺めていた。それも、かなり真剣な表情で......。
俺は二人に近寄って、口を開く。「それは何か特別な刀なのか?」
「うおっ!」権次は驚いた。「わ、若様ですか」
「そうだが?」
権次は反応したが、兼三はなおも例の刀を観察していた。あの権次や兼三が興味を持つような刀なのだから、特別な何かがあるんだろう。これは聞いておく必要がある。
「権次、その刀はなんなんだ?」
「刀って、兼三が見ている刀ですか?」
俺がうなずくと、権次は説明を始めた。「最近手に入れた、いわく付きの刀です。
「どんないわく付きなんだ?」
「少々説明するとややこしいのですが、簡単に言ってしまうと『呪い』でしょう」
「ほ、本当に簡単に言ったな!」
「ええ、まあ」
じっくりと刀を見ていた兼三だったが、ため息をもらしてから話し始めた。「呪いと言っても、かなり強いものだそうです。製作者が命を削って作り上げたこの刀・
なるほど、諸刃の剣か。それだと、攻撃力が格段に高くなるはずだ。例え害があっても、使ってみたい!
「その諸刃刃親光は使っても良いのか?」
「若様ほどの使い手なら、この刀も喜ぶことでしょう。我々も刀の性能を確かめてみたいので、お願いしても良いですか?」
「じゃあ、
俺は諸刃刃親光を手に取り、空中を斬ってみた。軽いぞ。刃先も
「小十郎、俺の相手をしてくれ」
「えぇ!? 若様は強いですし、相手は無理ですよ」
小十郎は戦に弱い。なら、景頼に相手をしてもらうしかない。それも無理なら、成実くらいか。
「おい、小十郎。景頼を呼んでこい。陽月斬を持たせるんだぞ」
「わかりました!」
諸刃刃親光を振り回していると、陽月斬を持って景頼が来た。
「お呼びですね、若様」
「練習相手になってくれ」
「では、外に出ましょうか」
「うん」
その場にいた小十郎も着いてきて、計五人で外に出る。大剣を構える景頼に
燭台切より持ちやすい。ふむ、折れやすいだろうが大剣と当たらないように攻撃すれば良い。
「んじゃ、戦闘開始だ!」
諸刃刃親光を振り下ろすと、早速陽月斬に当たりそうになった。ここで折れてしまっては困る。刀を持ち替えて柄を向け、柄で陽月斬を弾きかえした。
「なっ!」
大剣が景頼の背中に向いた。陽月斬は重いから、かなり踏ん張らなくては振り下ろせない。すきが出来たようだ。
刀の刃先を景頼の胸に軽く押し当てて、優しく地面に倒した。
「負けました」
「この刀......すさまじい攻撃力だ」
燭台切以上の刀だ。ここまで攻撃力を追求した刀は初めて手にする。
「さすがは若様です」
「なぁに、刀のお陰だよ」
景頼を起き上がらせて、座れる場所まで運んだ。権次と兼三の方に目を向けると、熱心に紙に書き込みをしていた。
「おい」権次に顔を向けて、紙を覗き込んだ。「何を書いているんだ?」
「諸刃刃親光の性能と改良点について書いています。兼三の場合は、諸刃刃親光の二代目を作るための重要な点について書いているのでしょうが」
「ほう。諸刃刃親光の二代目を作るなら、この刀を貰っても良いのか?」
「初代諸刃刃親光のことですね? もちろん、差し上げますとも」
「本当に!?」
「ええ」
刀を鞘に収め、腰に帯刀する。景頼は重い大剣を下ろし、床に置いた。そして深いため息をついた。
「陽月斬は重く、さすがに疲れますね」
「景頼は力があるだろ。俺なんかより陽月斬の所有者に向いてるぜ」
「力押し、ということは心得ております」
権次と兼三に高性能の銃の製作を頼みに来たのだが、まったく忘れていた。
腕を組んで、銃はどうしようかと考え込む。でも、この刀を貰っちゃったしなぁ~。銃の製作を頼みにくいよな、うん。
今日は引き下がることにしよう。
小十郎は俺の表情を伺った。「若様、結局当初の目的はどうするんですか?」
「刀を貰っちゃったし、今回はこれくらいで良いだろう」
火縄銃の強化版はまだ持っているし、これ以上高性能の銃を求めるのも
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