伊達政宗、輝宗を殺すのは伊達じゃない その伍壱

 やばい、成実に転生のことを聞かれた! どうやってごまかせば......。

「伊達成実よ」アマテラスは咳払いをした。「こやつは二十一世紀で死んでこの時代に転生してきたんだ」

「はぁ!? テメェ、何を言ってやがんだっ!」

「まあまあ、落ち着いてくれよ」

 アマテラスは成実の頭に手を置いた。そして、力を込めた。すると、成実は納得したような顔付きになった。

「若様は転生者だったのですね! 理解しました!」

 アマテラスはニヤリと笑う。「誰にも言うなよ。この秘密は小十郎と景頼、愛姫などの少数しか知らないのだ」

「わかりました!」

 俺の秘密を知る者が一人増えてしまったが、仕方ないか。成実が納得したのは、アマテラスの力なのだろう。同盟相手として信用出来そうだ。

「若様達が私にこそこそと会議をしていたのは、転生のことがあったからですね!」

「あ、ああ。まあ、そうだな」

「では、私もその会議に混ぜてもらえるということですか?」

 成実はキラキラと輝く眼差しを俺に向けている。これを断るのは難しい。

「わかった。お前も入れて会議をやる」

「ありがとうございます!」成実は土下座をした。「一生感謝いたしますっ!」

「頭を上げろよ。土下座するほどのもんじゃねぇだろ?」

「あ、すみません」

 これでやっとアマテラスと同盟を結び、心置きなく輝宗を殺すことが出来る。計画は完璧だ。直ちに輝宗を殺す計画に移行しようか。


 ホームズとともに、俺は部屋で話し合っていた。

「輝宗を助ける方法が見つかったというのは、本当かい?」

「ああ、見つかったのは本当だ」

「どういう方法か、良かったら僕に言ってみてくれ」

「前に言っていたことだ。ホームズの住む世界へ輝宗を送る」

 ホームズは目を大きく見開いた。「正気かい!? あの世界は危険なんだ!」

「正気だぜ、俺はいつも」

「いや、しかし......」

「まずは俺の作戦を聞いてくれ」

 俺はホームズに、作戦概要がいようを伝えた。すると、合点がってんがいったのか手を合わせた。

「素晴らしい作戦だね」

「頭の良さには自信があるんだ。この戦国時代を生き延びるには、それが必要不可欠だろ?」

「確かにそうだ」

 ステッキを振り回しながら、ホームズは真剣な表情になった。

「どうしたんだ?」

「僕がここにいられるのもあと少しだ。君にバリツを伝授でんじゅしたい」

「バリツを?」

 今までに見たことがないような真剣な表情で言われてしまった。俺はこれを、良い機会だと思った。前々からバリツを教わろうとは考えていたからだ。

「城の外でやろう」

「望むところだ」

 燭台切を持とうとしたら、ホームズがそれを止めた。そんでもって、予備のステッキを渡してきた。

「そのステッキにも鉛を流し込んでいる。まずは僕の動き方から覚えてくれれば良い」

 ホームズはたくみにステッキを扱った。それにならい、刀とは違った振り回し方を練習した。一時間もする頃には、かなり上達していた。

「次は僕とバリツで戦ってみよう」

「やっとか」

 一時間で身につけた構え方をし、バリツを発動した。まずはホームズとの距離を縮め、そこから気合いを込めた突き技!

「なっ!」

「その程度はステッキで受け止められるよ!」

 俺の気合いの一撃を、ステッキだけであっさりと受け止めやがった。そこから体勢を崩され、ホームズはすかさず俺を床に倒した。

「体勢を崩すのは命取りだ。──さあ、二試合目を始めようか」

「次は勝つぞ!」

 それから、更に一時間後。バリツをうまく使えるようにはなってきたが、ホームズを倒せるくらいにまでは身に染みていない。倒せるとしても、持久戦で泥沼試合に持っていくしかない。

 ただ、それだと時間が掛かりすぎる。なら、先手必勝だ。俺は大きく踏み込んで、前方に飛び出てホームズのステッキを蹴り上げる。そのステッキは空中を舞い、はるか彼方かなたに落ちた。

 勝機だと感じ、俺はステッキでホームズの首を叩きつけた。

「ガハッ!」

「すきあり」

 一瞬のすきを作れたら、後はホームズと同様に地面に倒して首をとらえた。

「勝負あったな!」

「負けたのは久々だよ」

「だろうな。結構強かった」

「勝った奴に言われても嬉しくないよ」

「それもそうか」

 ホームズの体を起こし、二本のステッキを渡した。ホームズはそれを受け取り、俺の頭を撫でた。

「よく頑張った。バリツの使い手は少ないから、相手の意表いひょうを突けると思う。おめでとう。また一歩前進だよ」

「お前のことは忘れない。また好きな時にでも来いよ。次ももてなしてやる」

「食事は豪華ではなくても良いが、好きな時に来させてもらうことにするよ。あ、そうだ。親友のワトスンを連れてきても良いかい?」

「構わないぞ」

「ありがとう。ワトスンに君のことを話したら、ぜひ会ってみたいと言うもんだからね」

「んじゃ、明日に備えて寝ておけ」

「心得ている」

 ホームズと城へ戻ると、そういえばホースティーはどうなったのだろうかと思った。アマテラスに叩きのめされた部屋へ向かうと、ホースティーはまだ倒れていた。

「おーい、ホースティー! 無事かぁー?」

「......」

「おーい!」

「......」

 ホースティーは気を失っていたようだ。めんどうだが、一応治療室に運んどいた。

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