伊達政宗、脱出するのは伊達じゃない その参
俺は死ぬかもしれない。ただ、その時にある考えが頭をよぎった。
安土城に未来の馬の足跡があったり、俺を監禁している誘拐犯が未来の馬を所持したりしている。もしかすると、未来の馬を売りつけている組織か何かがいる可能性がある。
例えば、残党・江渡弥平。江渡弥平はすでに未来からまた兵士達を連れてきていることは否定出来ないし、そのついでに未来の馬を戦国時代に連れてきて諸大名に売っているのか?
未来技術も戦国時代に持ち込んでいるだろうし、歴史が大きく変わってしまう。
では、江渡弥平が未来の馬を諸大名に売っているとして、その理由はなんだ? 歴史を変えるためだとしても、未来の馬を戦国時代に定着させる意味はあまりない。歴史を変えるなら、普通は有名な大名を殺すくらいはするだろ。未来の馬を戦国時代に定着する理由がまったくないじゃないか。
この誘拐は、俺を殺すためということか?
駄目だ。まったくわからない。俺を誘拐する目的も皆目見当が付かないし......。俺の誘拐は江渡弥平が関わっているかわかれば良いんだけど。
脱出経路を見つけ出して、逃げ出すに限るか。この監禁場所には扉が一つある。あの扉を出入り口として使っているところは見たことがないが、あの扉しか脱出経路の候補はない。扉には鍵を掛けるつまみがあるけど、そのつまみはこちら側にある。外側から扉が開けられない仕掛け、ということなのか否か。
あの扉以外に出入り口があるとしたら、床だ。カーペットが敷いてあるが、そのカーペットを取り払うと出入り口がある可能性がある。他の出入り口候補は......ないな。
よし、脱出を試みるか。縄を引き千切るとして、工夫して間接を曲げればいける。間接を曲げれば、人間の可動域を
バキボキ間接が鳴って、縄から体を抜かせた。ただ、間接が痛すぎて誘拐犯どもを倒せるのか。
「ガハッ!」
間接を破壊したら、動くことが出来なくなった。脱出は難しい。
伊達政宗が間接を破壊して自爆した頃、小十郎率いる伊達家の家臣団は仁和の推理する『伊達政宗の監禁場所』のポイントを移動していた。
仁和ら未来人衆は未来の馬についても有益な情報をしているらしく、馬がどうのこうの、と話していた。
「あの」景頼は顔を仁和に向けた。「馬が、どうかしたんですか?」
「ええ。もしかするとですが、我々や三笠氏の以前の総司令官・江渡弥平氏らが未来の技術を戦国時代に伝えようとしている、との情報が入りまして。政宗殿の今回の誘拐は江渡弥平氏が関わっているかもしれないのです」
「江渡弥平......。私は数年も前に江渡弥平とは縁を絶ちましたので。それより、若様の誘拐は江渡弥平が関わっているのですか?」
「その可能性が高い、ということです」
「未来の技術を江渡弥平が戦国時代に伝えていたとして、それはまずいのではないでしょうか?」
「まずいです。この時代に戦車などの未来の兵士が現れては、技術の発達によって第三次世界大戦も
間接破壊で床に倒れて身動きを取れずにいると、第三次世界大戦が云々という仁和と景頼の会話が耳に入ってしまった。俺の推理通り、江渡弥平が未来の馬を戦国時代に定着させようとしている。第三次世界大戦は起こしたくない。
「未来の技術を戦国時代に伝えて、江渡弥平に利益はあるのですか?」
「どうでしょう。下っ端には目的は教えられても、その理由は教えてくれませんから。牛丸統率官になら、江渡弥平氏は理由を伝えていたのではないでしょうかね。私は歴史改変計画第1期戦国派遣構成員第1期機動隊長ですから」
「第1期派遣構成員なのですか」
「はい。そして、江渡弥平氏の未来の技術を伝えている件についてですが、その理由はやはり『日本の歴史を塗り替える』ためでしょう。日本政府に都合の良い歴史に改変するのではなく、目的はあくまでも歴史を変えるためなのです」
まさか、日本政府に都合の良い歴史に変えるために歴史改変計画を実行したのではなく、歴史を変えるためだけにこの計画を実行に移したということだ。
歴史を変えられるかどうか。本当にそんなちっぽけなことだけを確かめるためだけに、俺を初陣で殺そうとしたり未来の技術を戦国時代に伝えているとは......。
いや、他の考え方もある。第三次世界大戦を起こすための予備実験が俺を殺すことで、第三次世界大戦を起こす目的の作戦が今実行されている『未来の技術を戦国時代に伝える』ことだということはないのか? つまり、江渡弥平は第三次世界大戦を起こすのが目的だということだ。
第三次世界大戦を起こすメリットはなんだ。戦国時代の技術の発達で、俺が暮らしていた前世より世界は高度な文明となる。そして第三次世界大戦が
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