伊達政宗、信長救出は伊達じゃない その玖
馬を駆けて前後に注意し、少しずつ前へと進む。ヘルリャフカ殲滅作戦は、安土城の視察も兼ねている。安土城に向かいつつ、その間にヘルリャフカと出くわしたら殲滅する。
俺の予想では、往復で二週間か三週間といったところか。ヘルリャフカとはあまり早くは出会わないはずだ。
「疲れた!」
俺の心の叫びに、二階堂は驚いた。「若様! 体の具合が優れないのですか?」
「駄目だ。馬の背中ってのも、まあまあ疲れるもんだぞ」
「ま、歩いている俺らの方が大変ですけどね」
皮肉を口走った二階堂を忠義は蹴りつけた。「二階堂さん! 若様を
「ハァ......わかりましたよ」
「それでいいんです」
二階堂の方が忠義より強そうだが、あれでも二階堂は忠義に一目置いている。すんなりと忠義の注意を受け入れて、二階堂は持ち場に戻る。忠義も弓矢をつかんで、周囲を警戒する。
馬を乗っているのは俺と小十郎だけなのだ。仁和、二階堂、忠義は戦国時代に来てから日も浅く、馬に乗るための技術を取得出来ていないからだ。結果、馬に乗れる俺と小十郎だけが楽をしている。
俺は頭を掻いた。「仁和も二階堂も忠義も疲労しているし、今日はここいらで野宿にしようか?」
満場一致で、この場で野宿を始めた。海に近く、ある程度は開けた場所だ。食料もまだあるし、安土城には予想していたより二日くらい早く到着しそうだな。
小十郎はため息をもらして、腰に手を当てた。
「小十郎。そんなに疲れたのか?」
「そりゃもちろんですよ、若様」
「そうなのか?」
「だって、ずっと座っているのも辛いですよ? 若様も身に染みてわかっていると思いますが?」
「確かにそうだな。疲労回復の手立てを考えてみよう」
こんなことをしなくても、転移すれば一瞬だ。だけど、ヘルリャフカを倒す目的もあるから、転移はしてはいけない。野宿のこの辛さを、ヘルリャフカへの攻撃の糧にしてやるぞ!
未来人である仁和、二階堂、忠義の三人が協力して、西暦2000年代から持ってきたテントを張った。それから火を起こし、忠義は弓矢で用心棒を務める。二階堂は忠義と交代制で用心棒をするらしく、今日は忠義の番だった。仁和は未来の本を開いて、黙々と読み進めていた。
それを見た俺と小十郎は、食料を引っ張り出してきて軽く調理する。本日の晩飯はは焼き魚だ。だが、魚にはくわしくないので何という魚かはわからない。ただ、噛みごたえがあって舌触りもよく、ボリュームも兼ね備えていた。しかし、味はイマイチ。普通の焼き魚だな、という感想しかない。問題は、
「小十郎。鎧の予備があっただろ?」
「ありますが、どう致しましたか?」
「用事だ。鎧を寄越せ」
小十郎から鎧を受け取ると、海の方に走った。海は塩だ。多少は不衛生だが、妥協しよう。ここは戦国時代だから、不衛生なのだ。
「よし。まずは鎧を温めようか」
二階堂が起こした火を少し拝借して、薪を使って火を大きくする。そこに鎧を乗せて、熱々にした。数分してから、海水をすくい上げて鎧に掛ける。ジュワーとかジューとか音を発して、水は干上がり塩が残る。
その作業を繰り返してから、テントに帰った。
「皆! 塩を持ってきたぞ!」
小十郎と忠義は喜んで、魚に塩を掛けた。だが、仁和と二階堂は
俺は食べかけの焼き魚に塩を掛けて、一口頬張る。やっぱり、焼き魚には塩が良いな。こんなにうまいなら、不衛生とか関係ないぞ。焼き魚ってのは、調味料次第でうまくなるもんだな。
「さすがは若様」忠義は焼き魚を
「実際はやり方が違うんだ。不純物を取り除くのが正規の塩の取り出し方だけど、こっちのやり方だったら手っ取り早いからな。不純物ではあるが、塩は塩だ」
忠義に、塩について散々説いていたら、日が暮れた。全員がテントの中に入り、布団を敷いて就寝する。俺はテントの天井を横になりながら見つめて、あくびをする。そうしたら、いつの間にか寝ていたようだ。目覚めたら朝だった。
「仁和!」
俺は仁和を呼び止めて、あと何日で安土城周辺に
「くわしくはわかりませんけど、あと三日か四日くらいで着くのではないですか?」
「三日か四日か。あと少しだな」
「......
「わかった」
あと少しで安土城だから、心を整えておかないと。安土城には視察で行くだけだから泊まることはないけど、今回の作戦の途中で織田信長と繋がりのある未来人がわかるかもしれない。慎重に慎重にして、
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