伊達政宗、信長救出は伊達じゃない その伍

「レイカー!」

「どうしたんだい?」

「俺が苗床ごとヘルリャフカを倒してやるよ」

「ずっと待っているよ」

「そういえば」俺はあることを思い出した。「ヘルリャフカの望みってのは、具体的には何なんだ?」

「強者との戦い、じゃないかな?」

「雑な説明だな......」

「まあ、良いじゃん。で、意識を下界の伊達政宗の体に戻すけど、大丈夫?」

「知りたいことは大体わかった。四人で協力して、ヘルリャフカの攻略方法を導き出す」

「大いに結構! それまでが楽しみだ」

「楽しんで待っててくれよ」

「そうする」

 レイカーは合掌がっしょうし、俺の足元に魔法陣が現れた。アーティネスなら、もっとあざやかに意識を体に戻すが、レイカーは違うようだ。そういうことを考慮するならば、アーティネスの方が上級の神様ってことか。

「誰がアーティネスより下だって?」

「うぉっ! 心の声が聞こえるのかよ!?」

「これでも神の端くれだからね。アーティネスの方が上級の神様ってのは合ってるけど、実際は僕の場合は戦いより小手先の技術が向いてるんだ。アーティネスは太陽神の器で、戦い向き」

「小手先の技術?」

「今みたいなテレパシーもそうだよ」

「わかりやすいな」

「だろ?」

 レイカーは再び合掌を始め、意識は伊達政宗の体に返された。

 っにしても、どうやって意識だけを神界に送れるんだろう。しかも、神界での出来事はほんの一瞬だ。その仕組みをくわしく知りたいもんだな。

「──さかっ! 名坂っ!」

 小十郎の呼びかけに反応して、俺は顔を上げる。「ん?」

「ずっと黙ってどうした?」

「今、犠牲神・レイカーと神界で会ってきたんだ。そこで興味深いことが知れた?」

「犠牲神・レイカー? 新しい名前だな」

「アーティネスとはギスギスしてるからって理由で、レイカーが俺を呼んだ。そんで、レイカーから悪魔憑きの話しを聞いた。俺達の前に突如として現れたあの悪魔は上級悪魔カイザー・ヘルリャフカ。150年前に神界で神々を虐殺してアマテラスがやっと封印した悪魔らしい。が、復活が早すぎたんだとさ」

「カイザー・ヘルリャフカ?」

 俺は三人に、レイカーから得ることが出来た悪魔のこととヘルリャフカについて長々と伝えた。

 小十郎は首を傾げながらうなった。「悪魔を倒すには苗床の心臓部を狙えばいいが、体を覆う金属を攻略するすべがないんだろ? 無理ゲーにもほどがあるぜ」

 無理ゲーがどんな意味からわからんが、大体前後の文で意味は伝わっている。ほとんど不可能というものだ。

「だから、これから金属を攻略する方法を話し合いながらるんだろーがっ!」

「マジか!?」

 三人は顔を硬直させた。それも当然だ。苗床の体を覆う金属が何なのかはレイカーから教えられていないから、一か八かのぶっつけ本番が勝負だ。そんなことをやれと言われたら、温厚おんこうな俺ですらキレているだろう。

「ま、諦めて死力を尽くしてくれ」

 金属攻略程度なら、人海戦術で間に合う。未来人衆も手伝わせればはかどる。早速、未来人衆の新たな司令官である仁和を呼び出した。

「仁和。未来人衆を全員、屋外に集めろ!」

「は、承知しました!」

 仁和は未来人と言えど、戦国時代に慣れるのが早かった。すでに戦国時代での生活が板に付いている。

 成実と小十郎と景頼も屋外に引っ張り出して、他の配下どもにはありったけの金属片を持ってこさせた。

「いいか? 金属片を相手にして、どうやったら金属にダメージを通せるか考えるんだ! そしてヘルリャフカを倒すために付け焼き刃以上の技になるように磨くんだ!」

「「はっ!」」

 俺は別の面からヘルリャフカを倒すために、神の使者の力の限界を知りたい。でも、神力の酷使は申請が必要だから今はやめておく。

 俺が今するべきことは、何だろうと考える。俺の知識は歴史に限られる。歴史知識でヘルリャフカを攻略するには、どのようなことが出来るんだ......。戦いに関しては、歴史知識ってのは役に立たない。転生する時に、転生特典でチートを貰っとけばよかったと後悔する。

 さてさて。歴史知識以外での俺の力は皆無。腕を組んで眉をひそめていたら、仁和が話しかけてきた。

「政宗殿。どうされましたか?」

「俺って単体じゃくそ弱いし、何も出来ないなと思ってたんだ」

「確か独眼竜の称号を得ていらっしゃいまたしたよね?」

「まあ、雷を操っただけたが......」

「であれば、雷を使うのが適切かと思われますが」

「あれから実験をしてみたが、雷などの天候を操る能力は俺を巻き込む自爆技なんだ。雷に打たれたのは最初の一回だけだけど、運が悪かったら即死だ。使い物にはならない」

「政宗殿が絶縁体の物をまとえば問題ないでしょう。雷なら例のヘルリャフカも倒せるのでは?」

 仁和は話しを進めていく。俺よりボスに向いている人材である。それに、理系にも通暁つうぎょうしていそうでたよりがいもある。彼女に未来人衆の統率を任せたのは、まさに適材適所という感じだ。よくやった、俺。

「では、仁和。絶縁体やらの話しをしようではないか。手伝ってくれるか?」

「もちろんです」

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