外交使節団 下
日本国 大阪
新幹線での旅を終えた一行は、バスでホテルへと向かう。
「オェ。気持ち悪い。」サンドール王国使節が言う。
「だから言いましたのに…」
「こうなりゃ迎え酒にしてやる。有言実行だ!」
「団長、ふざけないで今日は大人しく寝てください。」
「私は今日はどんなホテルなのか楽しみでなりません。上質なベッドや内装はともかく、電気や冷蔵庫、そしてテレビでしたか。不思議でしたね。今回もあんな不思議な道具がたくさんある部屋がいいです。」とカンタレラ王国使節。
「それらは標準装備です。どこのホテルにもありますよ。」天田が言う。
「そうなのですか!いいホテルほど様々な不思議道具が増えるのかと思ってました。」
「そういうわけではないです。さぁ、着きましたよ。これが皆様にご宿泊していただくあべのハルカスです。」
「こりゃ、またすごいな。」
「東京スカイツリーよりは低いですが、スカイツリーと違いあべのハルカスの内部はテナントがひしめいております。」天田が説明を加える。
「これだけ巨大な建造物の床面積は想像もつきません。仮に我が国に同じものが建てられたとしても需要が無いでしょうね」カンタレラ王国使節が言う。
「これから発展していけばいいだけですよ。今日はお疲れになられたことでしょう。ゆっくりと疲れを癒してください。」天田は一礼すると、案内をホテルのスタッフへと引き継いだのだった。
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空には雲一つ無く、朝焼けが街を黄色に染める。
「皆様、おはようございます。昨日はよく眠れましたでしょうか?本日は陸上自衛隊信太山駐屯地にご案内いたしました後、東京へと戻る予定です。」外交官、天田が言う。
「とうとう日本の軍が見られるのですね。アンゴラス帝国を返り討ちにした軍。一体何が見れるのでしょう。」カンタレラ王国使節が、目を輝かせて言う。
「日本との国交はそれにかかっていると言っても過言ではありませんね。」ラーマス王国の大使が言う。
「ああ、頭が痛い。」サンドール王国使節がこめかみを押さえる。
「迎え酒なんてするからです。これに懲りたらお酒は控えてください。」部下がため息を吐く。
「俺が酒を控えるなんてあり得ると思うか?」ニヤニヤしながら部下に言う。
「はいはい、あり得るわけないですよね。」頭をさするサンドール王国使節を見て、今日は虐められないだろうと、一人安堵するアマリーナ公国使節であった。
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一行の前には巨大で重厚な鉄の塊があった。
「こちらは、10式戦車という我が国の主力兵器です。」天田が説明を加える。
「なんと頑丈そうな。」サンドール王国の使節が言う。
「しかし、重そうですね。足はあまり早くないのでは?」カンタレラ王国使節が天田に問う。
「いえ、時速70kmほど出ます。」
「この巨体でか!信じられん。」サンドール王国使節が愕然とする。
「皆様には、戦車の走行と射撃を見てもらおうと思っております。」
「乗せてはくれんのか?」サンドール王国使節は言う。
「申し訳ありませんが危険ですので。」
「そうか。なら仕方がない。」使節は少しがっかりした顔を浮べる。
「では、お願いします。」天田は無線に語りかける。
44tもの巨体がゆっくりと動き始める。
「おお、本当に動いたぞ!」
「しかも加速力がすごいです。」一行は口々に話始める。
「続いては射撃をいたします。」戦車が停止し、砲塔が動くそして…
「ドゴォーーン」爆音が一行を襲う。
「ひゃーー!」アマリーナ公国使節が悲鳴をあげる。数秒後、遠方で爆炎が上がる。
「まさか、魔道砲か?あんなところまで届くとは。」サンドール王国使節は驚愕する。
「威力も申し分ないですね。アンゴラス帝国を上回るのは確実です。」カンタレラ王国使節が言う。
「お前、何をしている?」
アマリーナ公国の、使節は青白い顔をして、うずくまっている。
「これでも、国を代表する使節か!」今日もまたアマリーナ公国使節はサンドール王国使節の説教を受けるのだった。
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サンドール王国
「本当ですか!」この国の姫であるローザは驚きを持って男に言う。
「ええ。国民の徴発の免除、そして農業物の輸入単価の引き上げをお約束いたしましょう。もしも約束を違えることがなければですがね。」黒い外套を着た男が言う。
「必ずややり遂げましょう。」ローザは力強く宣言する。
「では、御武運を。」男はそう言うや否やきびすを返し人混みへ消える。
この国は私が守って見せる。ローザはそう心に刻むのだった。
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