懲罰攻撃 下

戦列艦 サマール


「旗艦轟沈!」


「戦列艦、竜母約200隻が沈みました。」


「200だと!あいつを撃ち落とす。対空戦闘を開始する。砲に張り付いている兵に、甲板へ上がるように伝えろ!」


「異形の竜が艦隊に接近してきます!」突如として竜が、光の雨を降らしながら吠える。行く筋もの光が木造の脆い船へと放たれ、船の内部で爆発を起こす。


「戦列艦アマン、ソナス轟沈!」乗組員の悲痛な声が響く。


「艦長!サリドール王国駐留艦隊が撤退を開始しました。」


「なんだと!臆病者どもめ。」艦長は鬼のような形相を浮かべ憤慨する。


「艦長、我々も撤退を。」航海長か進言する。


「ふざけるな!お前もアンゴラス帝国兵なら勇ましく最後まで戦え!」


「植民地マールス地区駐留軍、アマーナ公国駐留軍も撤退していきます。」艦長はばつが悪そうな顔を浮かべるが、気を取り直して言う。


「せめて任務だけは達成せねば牢獄送りになるやもしれん。。今回の任務はサマワ王国への懲罰攻撃だったな。対空戦闘を止めさせ敵王都を攻撃。その後離脱する。」艦長は残念そうに言う。


「了解!」


「全員持ち場に戻れ!」甲板でファイヤーボールを撃っていた兵達が下層へと戻っていく。


「戦列艦リスター、エナム轟沈!」


「敵機接近!」異形の竜がとてつもない速度で接近し光の雨を降らす。


「戦列艦モナ轟沈!」隣を走る戦列艦に穴が開き、ゆっくりとひっくり返る。


「艦長、全員配置に着きました。」


「取舵一杯!右舷砲門一斉射。撃て。」


「了解。右舷砲門一斉射。3、2、1、撃て!」10の魔道砲より、魔道光が放たれる。光はまっすぐと突き進み、いくつかの建物に命中した。


「よしっ!撤退する。風魔法最大出力!戦域より離脱せよ!」申し訳程度とはいえ、敵首都への攻撃は行った。このまま戻っても粛清は免れるだろうと艦長は一人考える。


「敵機接近!」しかし、その行動が敵の目を引くこととなった。サマールに光の雨が降り注ぎ、船はあっという間に浸水。転覆した。艦長は船からの脱出を試みたものの、船に流れ込む水流に逆らえずそれはかなわなかった。戦列艦サマールの行動を見て、粛清対策として撤退前に王都を攻撃する船は少なくなかった。




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護衛艦 いかづち


ただでさえ傾いている艦に注水したことにより、さらに傾斜が急になる。甲板上の帝国兵の何人かは、それにより海へと放り出されたようだ。


「友軍が到着!レーダー破損で数は分かりませんが50はくだりません。」


「やっときてくれたか。」艦長はため息をつきながら言う。


「艦長、また、隔壁が破られました!このままではもちません。」


「せっかく友軍が来てくれたというのにな。」艦長は打開策を見つけるため考えを巡らすのだった。




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「このっ!」廊下の角から鉄の船の乗組員が飛び出し斧でアンゴラス兵を殴りつける。


「何をするこの野蛮人が!」すかさず隣の兵が反撃に出る。乗組員は真っ黒焦げになり、倒れる。


「おいっ!大丈夫かっ!しっかりしろ!」カイスが斧が刺さったままの戦友に声をかける。だが返事はない。


「こいつはもうだめだ。諦めろ。」軍曹が言う。


「ふざけるな!俺はな、こいつとは10年来の付き合いなんです。こいつと今の嫁さんを引き合わせたのもオレだ。すごく幸せそうだったさ。何でこいつがこんな目に会わなきゃなんないんだ!」声を震わせて叫ぶ。


「気持ちは分かるが悲しむのは後だ。まずは敵をとってやれ。」軍曹は部下を諭す。不意に前方の鋼鉄の扉が開く。


「くそっ!待ってやがれ野蛮人ども!」カイスは突っ走って行く。


「待てっ!また罠かも…。ちょっとこら!止まれ!」慌てて軍曹とその他の部下は後を追う。




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「全乗組員、中央及び機関室を除く後方部下より退去しました。」


「機関始動。」


「機関始動します。」


「有毒ガス発生による警告が表示されました。」艦長は力強く頷く。


「竜が煙突を破壊してくれて助かったよ。」微笑を浮かべながら艦長は言うのであった。




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「んっ?何だこの臭いは。オグッ!」カイスは異臭に気づく。


「逃げろ、早く後ろへ…」軍曹は部下達を下がらせようとするが、時すでに遅く倒れてしまう。


「ゼェ、ゼェ、ハァ…。野蛮人どもめ!必ず仇を…」気力を振り絞りカイスは前に進もうとするが間もなく力尽きた。


艦内の帝国兵はガスにより中毒死するか、艦の外へと避難した。しかし、彼らが見たのは燃え盛る、また現在進行形で沈められる戦列艦、そして撤退する艦隊。あるものは強大な力に恐怖を感じ、あるものは自分達を見捨て撤退する友軍に愛想をつかせ戦闘意欲を無くし、杖を捨て降伏をした。


アンゴラス帝国戦列艦450隻、竜母24隻、白竜192騎は護衛艦いかづち、ありあけとfー15J40機、f-2A20機、f-35、5機と戦闘、飛鳥Ⅱを護衛していた2隻の護衛艦は間に合わなかった。。護衛艦1隻を撃沈、1隻を中破させるも、戦列艦271隻、竜母14隻、全ての白竜を失った。この事は世界に衝撃を与えることとなった。

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