第23話 尋問1
お姉様が容赦なく水をぶっかけると、ロネンサのツインテールが垂れて黒いワンピースに張り付いた。
「うっ、ここは……はっ!? な、何ですのこれは?」
ロネンサが暴れるたびに両手についた鎖がガチャガチャと音を立てる。
「目は覚めたようね」
「GA」
「貴方達……ふふ。そういうことですの。流石は偽王、まさか不意をついてなお、この私が手も足も出ないとは思いませんでしたわ」
あら、この状況で嫌味を口にできるなんてすごい胆力。少しだけロネンサを見直したわ。それとも余裕を保てるだけの理由が何かあるのかしら?
「魔族に人権がないことは分かっているわよね。貴方、このままだとどういう状況になるか分かっているのかしら?」
「GA」
「あら、心配してくれているのかしら? 見たところ貴方達だけのようだけど、クラスメイトを拷問なんてできるのかしら?」
それが余裕の根拠? いくら何でも短絡的じゃないかしら。
「確かに私達に拷問なんて真似できないわね」
「GA?」
お姉様、怖いのでそこで首を傾げないでほしいです。
「でも貴方を国王軍に引き渡すことは簡単なのよ」
「……もしかしてまだ引き渡していないのかしら?」
顔色が変わったわね。でも安堵するならともかく、何でそこで強張るのかしら。
「そうよ。ロイとクルス君がターニャ先生に誘拐されたの。行き先を知りたいけど、貴方を国王軍に引き渡したら情報を引き出す前に獄中死なんてこともあり得るでしょう。だから混乱に乗じて貴方をここに連れてきたの」
「GA」
国王軍の魔族への取り調べは苛烈を極め、一度捕らえられた魔族は三日と生きていけないと有名だ。王子はともかく王は懸命な方だから、情報を得る前に殺すような真似はしないと信じたいけど、ロイの父である辺境伯の権力が増大するのを王がいい顔をしてないという噂もあるし、可能ならまずは私達で情報を引き出しておきたい。
「貴方が素直にロイ達の居場所を教えてくれたら逃してあげないこともないわよ」
「GA」
「ふ、ふん。舐めないでくださいます? 誇り高き吸血鬼がその程度の脅しに屈して口を割るなんてあり得ませんわ。どうぞ、王国軍に差し出してくださいな」
……気のせいかしら? むしろ王国軍に引き渡してほしそうな感じがするのは。ロネンサの態度、まるで私達と一緒にいる方が危険だと言わんばかりだ。
肩をツンツンと突かれた。
「お姉様?」
『私が尋問してもいい?』
「え? 別にいいですけど……」
まさか拷問するのだろうか? できればお姉様にそういうことはしてほしくない。でもこうしている間にロイがどんな目に遭っているのかを考えると……。
「分かりました。お願いします。でも手を汚すときは私も一緒です」
「GA?」
「いえ、いいんです。まずはお姉様にお願いします」
それで手伝えそうなことがあったら私も手伝おう。
「な、何をする気ですの? 貴方達、勝手にこんなことしていいと思ってますの?」
ロネンサはさっきまで余裕の態度だったのが嘘のように暴れている。ガチャガチャと音を立てる鎖が今にも千切れるんじゃないかって少しだけ心配だわ。
お姉様は暴れるロネンサに近づくと、
ビィリリリリ!!
とロネンサの服を引き裂いた。
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