第21話 一転する状況
……これ、どういう状況なのかしら?
ロネンサが魔族? それに今の攻撃、身代わり魔法が発動してなかったような?
「あのミララ先生、魔法がーーキャッ!?」
「は~い、動かないでね。動くと綺麗な肌に傷がついちゃうわよ~」
首筋に当たるひんやりとした感触。これは……爪? ナイフのように伸びた爪が私の首筋に当てられてる。
ターニャ先生が私の後ろにいるミララ先生をキッと睨んだ。
「ミララ先生!? これは一体どういうことですか?」
「ごめんなさいね~、私ももっと先生やってたかったんだけど、状況が変わったのよ~」
「その瞳、ミララ先生……貴方吸血鬼だったの?」
私からは見えないけど、吸血鬼ってことは多分瞳が赤くなって瞳孔が縦に伸びてるんだと思う。
「そうなのよ~。それでターニャ先生は吸血鬼な私をどうする気かしら~?」
「……投降しなさい。こんな所で正体を明かして逃げられると思っているんですか?」
「勿論よ~、こんな時の為に色々手は打ってあるし~。たとえば、ほら、こんな感じとか~」
「なっ!? か、体が!?」
ターニャ先生の様子がおかしいわ。まるで金縛りにでもあったかのよう。
「ふふ。貴方の体はもう私のものなのよ~」
「そ、そんな。じゃあ、今までのことは……」
「いやだわ~。そんな顔しないで。貴方のことは本当に好きなのよ。心配しなくても正体を明かしたからといって捨てたりしないわよ~。背徳と殺戮の夜空を一緒に飛びましょう。だから今はお休みなさい」
「そ、そんな……」
ここに来る前から吸血鬼に何かされてた? ターニャ先生がいきなりその場に倒れてしまった。
え? これってもしかしなくても拙い状況……よね?
「そんなに怖がらなくてもいいのよ~。私前からずっとシルビィさんとはもっとお近づきになりたいと思っていたんだから」
ミララ先生が一層私に体を寄せてくる。そのせいで私の頬を生温かな吐息が撫でて、背中に大きな膨らみが押しつけられる。吸血鬼の手が私の体中を這い回った。
「ふふ。思った通りの手触りね~。今日からターニャ先生と一緒に……あら、嫌だわ~」
「がぁ!?」
「ぐぅお!?」
激しい激突音。
何が起こったのか見えなかったけど、状況から察するにミララ先生の背後から奇襲をかけたロイとクルス君が先生の攻撃で吹き飛ばされたみたい。
「いやだわ~。私は魔族よ? 人間ごときが、それも雛鳥風情が勝てると思っているのかしら~?」
「そ、それは……やってみないと分からないよ」
「ああ。その上から目線をぶっ飛ばしてやるぜ」
ダメージを負いながらも立ち上がるロイとクルス君。でも先生の言う通り勝ち目は薄いわ。人類よりも圧倒的に数が少ない魔族が常に人類の脅威であり続けているのは、個として人類を遥かに凌駕しているからなんだから。
「二人とも、逃げ……んんっ!?」
「シ~。いい子だから静かにしててね、シルビィちゃん。そんなに頑張ってアピってこなくても、後で先生がたっぷりと遊んであげますからね~」
口内に侵入したミララ先生の指が私の舌を弄ぶ。自分の唾液に塗れていく指の感触が酷く不快だった。
ど、どうしよう。どうすればーー
「ふぎゃあああ!?」
ドカン!! ゴロゴロ……ドォオオン!!
ものすごい勢いで転がっていく物体……じゃなくて、あれはロネンサ? ロネンサが凄い勢いで地面を転がってそのまま壁に激突した。
「GA」
人類を遥かに上回る絶対強者が見せるとは思えないその光景に誰もが呆然とする中、お姉様はゆっくりと色紙に文字を書くと、それを皆によく見えるように高く掲げた。
『私のこと忘れちゃいやん』
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