【石の街】攻防記
ウナーゴン
序
その日、大量の水が街を襲った。
呪術結界が施された強固な石の外壁が、轟音と共に押し寄せた水流によって破壊された。
外部からの攻撃だ。
やつら、とうとうここまで力をつけやがったか。自治会のおじさんがぼやいた。度重なる攻撃が段々と威力を増しているのは、僕も感じていた。
ひとしきり荒れ狂った濁流は、昼前には収まった。幸い死者は出なかったが、街中が水浸しになった。
誰しもが異変に気づいたのはその頃だ。水が一向に引かない。
広場で僕はとても奇妙な光景を目にした。
斜面の石段をゆっくりと、下から上へ水が流れている。
飛沫がゼリーのような固まりとなって空中をフワフワ浮いている。
この現象は何だ。僕は書物で得た知識に照らし合わせ、ようやく気づいた。
「反克の術だ!」
土克水の逆、水克土。
まずい。水が飲めなくなっている。
まだ影響は人体に及んでいないが、状況が加速すればこの限りではない。
結界内の物理現象が、緩やかに綻び始めていた。
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