聖女、教皇へ報告する
聖女は暗殺者と勇者を王都に置いて帰郷していた。帰郷といっても聖女に故郷はない。故郷は聖都の大神殿だ。
「久しぶりに来ましたね....」
「あら、聖女様?」
「お久しぶりです。シスターマリ」
「勇者パーティーの調子はどうですか?あまりいい噂はお聞きしませんが」
「いまのところは順調ですよ。魔王を討伐するのに何年かかるかはまだわかりませんが」
「早くなんとかして欲しいものですけど中々難しそうですね」
「私の力不足で申し訳ありません」
「いえ、貴女だけのせいではないでしょうに。本当に変わりませんね」
「そういうマリこそ変わってないですよ」
「ティーナはまだあの演技は続けているの?」
「ええまあ。あの喋り方の方が警戒を解きやすいでしょうし」
「私はあの話し方のティーナも好きだけどなぁ」
「止めてください。あれは自己暗示をかけてからじゃないと恥ずかしくてできないんですよ?」
「そうだったね。とりあえず奥に行こうよ。教皇猊下がお待ちだよ」
「了解しました。ご報告も兼ねて伺います」
ティーナは教皇の間に来ていた。教皇の許可を得た人物しか入ることができない神聖な場所だ。
「聖女よ。戻ったか」
「ええ、ただいま戻りました」
「勇者暗殺の進捗を報告せよ」
「それより先に1つ。御子息がなくなられたとか。お悔やみ申し上げます」
「あんな愚者のことなど良いわ。悪魔崇拝に通じていたという噂もあったし、そのうち処分するつもりだったからな」
「そうでしたか。では報告を。聖騎士ミラを殺害し、勇者を殺害するのには一度失敗しました」
「失敗とな。何があった?」
「聖剣を奪ったにもかかわらず、刃が彼に通りませんでした」
「原因はわかっておるのか?」
「予想にはなりますが、防具もしくは靴に何か効果があるのかと」
「裸になったところを殺す方が早そうだな。下がってよいぞ」
「はい。ありがとうございます」
息子が死んでもあの態度なのは上に立つ立場の人間としては正しいとは思う。殺した本人が言うのもなんだが親としてはどうだろうと思わなくもないが。
「ゲイランとラナただいま」
「おかえりなさい」
「おかえり。教皇様への報告はどうだった?」
おそらくゲイランはパーティーへの資金援助の件が心配なのだろう。
「滞りなく。ミラが行方不明なことも隠しておいた」
教皇猊下への嘘は許されないが勇者への嘘はいくらでも許される。ゲイランは人を信じすぎている節があるからだ。
「暫くはミラを探すことに尽力しよう」
「助かるよ。ティーナいつもありがとう」
暗殺者は1人冷ややかな目線を聖女に送っていた。
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最近投稿遅くなってます。すいません。
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