賢者とお姫様、魔法の新しい一面を知る

 旅の途中宿屋で朝ごはんをノアさんと食べていた。

「そういえばマギは将来どんな家が欲しいですか?」

「どんな家ですか」

「ええ。将来城を出るのであれば家も必要でしょう?」

「まあそうですが。やけに唐突ですね」

「いえ、前にそういうお話になった時に結局聞けず仕舞いでしたから」

「そういえばそうでした。うーん、そもそも俺はきちんとした家に住んだことがないんですよね」

「どういうことですか?」

「こんなこと言ったらノアさんは離れてしまうかもしれませんが俺、孤児なんですよ。村が魔族に襲われ、両親を亡くしそこからずっと」

「そうだったんですね....。それはさぞ辛かったでしょう」

 ノアさんが俺の頭を撫でてくる。思っていた反応と違う。俺の知り合いの聖女よりこの人の方が聖女なんじゃないか?そんな考えすら浮かんでくる。



「何か思っていた反応と違いますね」

「マギ、私はその人の生い立ちで人を選びません。大切なのはその人の今ではないですか?」

「それは確かにそうですね」

「残念ながらそういう考えをできる貴族や王族、皇族が少ないのも事実です。私はいつかそれを変えたいとも思いますが」

「流石ノアさんですね....」

「いえ、そんなことは。それでどんな家に住んでみたいですか?城みたいなお屋敷とかですか?」

「そうですねぇ。強いて言うなら普通の家ですね。屋敷でも城でもなんでもなくただの民家に住んでみたいです」

「それはいいですね。私もそんな家に住んでみたいです。生まれてこの方、城と宿屋でしか過ごしことありませんから」

「そう考えるとノアさんと俺は少し似ているのかもしれませんね」



 俺達はそんな話をした後、買い物に来ていた。

「今日は何を買いに行くんですか?」

「ノアさんの2本目の刀とかはどうです?」

「そうですね。ここの町には腕利きのドワーフの方がいるという噂も耳にしましたし、丁度いいかもしれません」

「後は防具ですかね」

「確かにマギのローブはそろそろ買い換えた方がいいかもしれません。私はダメージを喰らわないので別にいいのですが....」

「いえ、俺はノアさんの防具も修復をした方がいいと思いますよ。目に見えないダメージがありますし」

「言われてみるとそうですね。失念していました....。これから戦闘も続きますしこれを機にきちんと整備しましょう」



 俺とノアさんは腕利きのドワーフの工房に来ていた。

「ここみたいですね」

「ええ。とても工房には見えませんが」

 どう見てもただの一軒家だ。

「ごめんください。どなたか居ますか?」

「なんじゃ?お主ら....って嬢ちゃんその刀見せてくれないか?」

「ええ、いいですけど」

 そういいノアさんが刀を差し出す。

「嬢ちゃんこれをどこで手に入れた?」

「帝都のとある武器屋で」

「帝都....。ああそういうことか。通りでいい刀だと思ったぜ」

 そう言って刀を返すドワーフ。

「実はこれと同じぐらいのものを一振り作って欲しいんだ」

「兄ちゃん悪いがそれは難しい。それはドワーフ1の腕利きが作ったものだ。俺は町では1番かもしれないがそいつには追いつけない。そいつに頼むんだ」

「そうだったんですか....。じゃあ防具だけでも整備をお願いしていいですか?」

「まあそれなら....ってこれも聖剣なにのしろもんじゃねぇか。無理だ無理!すまないが帰ってくれ」

 俺達は半ば追い出される形で工房を出る。



「マギ、そんないいものを私にプレゼントしてくださっていたんですね」

「いえ俺も知りませんでした。今度帝都に戻った時にドワーフのおじさんに聞いてみます....。それとノアさんの防具そんなにすごいものだったんですね」

「元はただのオリハルコンですよ。ただ聖属性は武器や防具を育てる性質もあるのでそれのせいでしょう」

「そんな効果もあったんですね....」

「まあいまの今までただの伝説だと思っていましたが」

「俺もそう思っていましたよ....。もしかしてその刀もゆくゆくはそうなっていくんですかね」

「恐らくは。早めに2本目を作った方がいいかもしれません」

「そうですね。では一回程度に戻りますか」

「そうしましょう」

 こうして俺とノアさんは2本目の刀を作る為に帝都に戻ることにした。



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