第10話 カヴァリヤ城 - 3 -
「さぁ、着きました。この扉です」
両開きの大きな扉に圧倒される。
「私、マナーとか何も分からないんだけど……」
「ただの夕食です。気にすることはありません。列席者もフェリックス様ですから、マナーなどあってないようなものです」
曲がりなりにも王様に向かって、暴言とも言えるセリフである。
「そうそう、フェルデナントも特別に同席します」
「フェルデナントも! よかった、ちょっと安心……」
知った顔、といっても彼と会話をしたのもほんの数時間程度だが、味方を得たかのようで心強く感じる。
フェルデナントが言っていた“詳しい説明“というのを聞くことができるのであろうかと、サラの頭に突如多くの疑問が飛び交った。
救世主とは?
予言書とは?
ここはどこで、私は……
「私は家に帰れるのかな……」
「サラ様?」
どこだかわからないから、帰れないと思っていたが、救世主や予言書がなんであろうと、一体ここがどこであろうと、元の生活に戻ってしまえばここで滞在したことは全て夢として片付けてしまえる。
カイがサラの背中の触れるか触れないかのところに手をやり、柔らかく微笑んだ。扉が開かれ部屋の中の明かりが漏れる。
「それにしても、フェルデナントを褒めてやらなければならないですね。ドレスを選んだのは彼です。サラ様、よくお似合いですよ」
囁いた言葉で見送られ、扉を進んだ。
そういえばと急に指先に触れたフェリックスの唇の感触が思い出された。
こんな状況でなければどんなに楽しい一日だろうか、と目が眩むほどの大広間を長いテーブルに向かってサラは進んだ。
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