第二章 ため息の音

第1話 歌詠 - 1 -

 救世主はフェルデナントに抱えられてやってきた。


 黒い長い髪は予言書の通り異国人そのものだった。長旅だったのだろう、起きる気配は全くない。私が幼いころからずっと思い描いてきた救世主と大した違いはなかったが、そのせいか想像の延長のようで実感が湧かなかった。


「フェルデナント」

 少女を部屋に寝かせて、出てきたことろで声をかけた。

「あぁ、シアラ。居たよ、救世主様」

 少し困ったように笑った。彼ははっきりと物を言うが表情がいつも曖昧だと思う。

「うん……ところで予言書と変わったところはあった?」

「いいえ、全く。予言書通りの少女だよ。本人に自覚がないから、まるで誘拐犯の気分だ」

 わざとらしく溜息をついた。

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