第11話 これ、この味が原点です、ハイ。
前回のあらすじ:念願のオリーブ油を手に入れたぞ!!
オリーバの油を手に入れ、カエデの木を丸ごと回収して家の近くに植え、それに喜ぶマーブル達にホッコリしながら、本日メインの作業を行うとしましょうかね。
昨日仕込んでおいた手打ちパスタの生地を用意し、テーブルに置く。ほう、あまり変わらないか、ということは薄力粉かな? いや、全粉粒だからか。まあいいや。本当は軽く打ち粉をしてからの方がよさそうだけど、勿体ないから水術で軽く表面を凍らせれば大丈夫かな。
麺棒でのばしてはひっくり返してを繰り返す。形は正方形を意識するのを忘れないように向きを変えては伸ばしていく。そんなことを続けていたら、マーブル達もこっちに来たようで、興味深そうに見ている。見ていてもいいんだけど、うどん打ちとそれほど変わらないよ?
切る作業があるため、生地はデカい1つではなく、小さめのものをいくつか用意した感じなので、同じ作業を何度か繰り返さないとならない。そうなると、近くにいる可愛いギャラリー達は手持ち無沙汰となってしまうので、少し手伝いをお願いすることにした。
「この作業をずっと見てもつまらないだろうから、君たちに任務を与えます。」
「ミャア!」「了解です!」「やるぞー!」
元気よく返事を返す3人。こちらのやる気も上がりますな。
「ジェミニ隊員、土鍋を薄く、更に底の浅いやつは作れませんか? こんな感じのやつ、、、。」
「アイス隊長! 可能です!」
「大変結構! では、ジェミニ隊員はそれを土魔法で4つほど作成。ライム隊員は、表面をつるつるにしてもらう作業と、焼き上げの後の掃除を。マーブル隊員は、ライム隊員のつるつる作業が終わったら、焼き上げ、それが終わったら、風魔法で冷ます作業を。」
「ミャア!」「了解です!」「りょーかい!」
3人が嬉しそうに敬礼で応えた。やはり、いいものですなぁ、、、。
ということで、私は次の生地を伸ばす作業に着手した。マーブル達はしっかりとした連係でなんちゃってフライパン、土バージョン(以後面倒だから簡易フライパンと命名、異論は認めない)を4つ作り上げた。その一方で、私の伸ばし作業まだ終わってないからね、、、。
完成した簡易フライパンをマーブル達が1人に付き1つずつ頭に乗せて持ってきてくれた。何この可愛い生き物たち。あまりの可愛さに身もだえしそうになったが、ここで手元が狂うと、厚さが変わってしまうので必死で乗り切った。完成品だけど、かなりいい出来で、もうこれでいいんじゃね? とか思ってしまったけど、やはり鉄鉱石もあることだし、鉄製の調理器具は手に入れておきたい。とはいえ、まだお客さんどころか、周辺に人が住んでいるかもわからないので、しばらくはこの簡易フライパンでも十分だろう。
「思った以上にいいできだね、ありがとう! 次はお湯を沸かしてもらいますが、いつもより温度を下げるようにしてください、できますね?」
マーブルは問題ない! と言わんばかりに元気よく鳴いてくれたので、お任せする。ジェミニには、ざるを用意してもらう。ざるに関しては、こちらで頼んでもいないのにすでに作ってくれていたようだった。これも土製の間に合わせ程度のものだったので、いずれは何かの糸、あるいは鉄網でのざるが欲しい。ライムについては、調理後、あるいは食事後に重要な任務が控えているので待機してもらう。
そうしている間にも、何とか伸ばし作業が完了したので、次は、伸ばした生地を切る作業である。言うまでも無く鉄の器具はないので、包丁すら存在しない。ではどうするか、といったら、これについては考えが浮かんでいたので問題なし。パスタマシーンという文明の利器を作成することも考えたけど、現物を見たことがないので無理。
今回作ろうと思ったのは、四角い枠を用意して、その上側に頑丈な糸のようなものを設置、そこに伸ばした生地をおいて、上から押して切断する方法だ。平たく言うと昔のところてんを押し出す道具の応用だ。今回は水術で作るけど、いずれは鉄製のものを用意しておきたい。
早速水術で考えていた道具を作る。完成したので試してみたけど、予想以上にいい感じに仕上がった。この店ではこれでいこうと決めた。
生パスタの準備が整ったけど、まだ茹でるのは早い。というのも、乾麺タイプのパスタとは違い、生パスタはゆで時間が短いので、先にタレを用意する必要があるからだ。パスタを茹でるのは、タレの準備ができてからでも遅くはない。
と、その前に、お湯に塩を入れないと。先程手に入れた岩塩を取りだして砕くと、良い感じの大きさになったので、試しに味見をする。おお、流石は岩塩だ。スガーも十分に塩分を出してくれてはいるが、どちらかと言えば、スガーの場合は塩化ナトリウムに近い。こちらは塩化ナトリウムの他にも様々なミネラルが含まれている、はずだ。
私が岩塩の味見をして納得して頷いていると、作業が終わってこちらを見に来たのか、マーブル達がジーッとこっちを見ていた。要は味見をさせろということだ。
「マーブル達も味見をするの? でも、これ、甘いものじゃ無いけど、どちらかと言えば塩っぱい味だけど、大丈夫?」
「ミャウ、、、。」「甘くないですか、、、。」「あまくないのー?」
「うん、甘くないよ。だって、これ、スガープラントの代わりの塩だし。」
そう言うと、3人は引き下がった。それはそれで珍しいけど、少しションボリした顔を見ると、何だか申し訳ない気持ちになってしまうけど、致し方ない。
「でもね、これのおかげで、夕食はかなり美味しくなるから期待しててね。」
「ミャア!!」「楽しみです!!」「わーい!!」
一変して嬉しそうな顔に戻ってくれて何より。期待を裏切らないように気合を入れて作りますか!
お湯の量を確認して、先程砕いた岩塩を投入。割合的には1%くらいでいいかな。これはボロネーゼ(予定)だからね。岩塩が溶けたのを確認してお湯の味見をしてみる。うん、良い感じだ。本当は少し物足りない感じがするけど、まだ麺は投入しないので、どちらにしろ水分は減るから問題ない。向こうで鍛えた調理技能が役に立っていて何よりだ。
昨日までに採取しておいたタマネギを3個ほど取りだし、マーブルにみじん切りにしてもらう。言わなくてもマーブルは皮の部分をしっかりと分けて出してくれた。そのタマネギを水術で水分を5分の1まで減らし、それぞれを3つの簡易フライパンに投入し、先程手に入れたオリーブオイルをかける。
それら3つの簡易フライパンをコンロにそれぞれ置いて、マーブルに火魔法をかけてもらう。中火くらいで大丈夫だろう。火が通るまで少し時間がかかるので、その間にお肉とトマトの準備をしておく。お肉は昨日手に入れたヘルボアとダークブルを使用する。つまり、豚と牛ということである。フライパンを3つ用意したのは、それぞれヘルボアのみ、ダークブルのみ、合わせで味の違いを確認したかったからだ。
マーブルは火の係だから、今度はジェミニに肉をみじん切りしてもらった。ライムは肉を入れるボウルを用意してくれたので、それぞれに入れた。それから肉に塩コショウを入れて、水術で手を少し冷やしてから軽くこねる。フライパンを見てみると、まだ火が通っていない状態だった。流石は土鍋、薄くてもまだ火が通ってないぜ。
今のうちにトマトを加工する。2つずつでいいか。合計6つ取りだして、水術でトマトを軽く茹でて、まずは湯むきを行った。湯むきが終わったら、これまたライムに用意してもらったボウルに投入。水術で棒を作ってそれらをひたすら潰す。マーブル達が手伝いたそうにしていたので、今後手伝えるような道具を作らないとね。トマトも良い感じですり潰せたので、そのトマトに水術をかけて水分を飛ばして大体半分くらいの量にする。
これで全ての準備は整ったので、手順を間違えずに作り上げるだけである。
しばらくして、油がフツフツとしてきたので、マーブルに火を弱めてもらい、タマネギを炒めていく。タマネギはあらかじめ水分を抜いてあるので、色が変わるのも早く、結構アッサリと濃い飴色(純○というハチミツと紅茶の飴があったけど、あの紅茶の飴くらいの色)になったので、ゆで汁を投入して、しっかり混ぜる。
しっかり混ざったら、先程の加工したトマトを入れてかき混ぜながら水分を飛ばしていく。手が空いたし、時間的にも丁度良さそうなので、沸騰しているお湯にパスタを投入。ちなみに、沸騰させているお湯だが、沸騰温度の100℃ではなく、もう少し低い状態だ。というのも、沸騰させすぎたお湯では美味しく仕上がらないから。
少ししたら、パスタが浮かび上がってきた。ボロネーゼの方も良い感じで水分が減っているので、ここで仕上げだ。ある程度湯切りをして手打ちパスタをそれぞれのフライパンに投入して、しっかりと混ぜ合わせる。よし、完成だ!
テーブルに用意しておいたパスタ用の皿に、それぞれ肉の違うボロネーゼを入れていく。盛りつけは面倒なので最低限で済ませる。今回は試食も兼ねているので、みんなの分の取り分け皿も用意、私用の箸も用意して夕食の準備完了。
「みんな、待たせちゃってゴメンね。これは、ボロネーゼっていうお肉のパスタだけど、気に入ってもらえると思う。」
「ミャア!!」「早く食べたいです!!」「あるじー、はやくはやく!!」
「それでは、材料となってくれた生き物や植物たちに感謝して頂きます!!」
「ミャア!!」「頂くです!!」「いただきますー!!」
食事前の挨拶を済ませたので、早速頂くとしましょうか。ふむ、なるほど。これだけ違いがあるんだねぇ。ヘルボアの方は、豚だけあって油の甘みがほんのりとだけど強いかな。ダークブルの方は、これぞ肉! って感じの味わいである。合わせは見事に中間かな。正直どれも美味しく、一番は選べない、、、。さて、うちの猫(こ)達の反応はどうかな。
「マーブル、ジェミニ、ライム、美味しいかな?」
「ミャア!」「美味しいです!」「おいしーよ、あるじー!」
うん、喜んでくれているようで何よりです。
「ミャア!!」マーブルが指したのは合い挽きのやつだ。
「ワタシはこれが好きです!!」ジェミニはダークブルか。
「ボクはこれー!」ライムはヘルボアね。
私は正直選べなかったけど、3人は見事に好みが別れたかな。とはいえ、みんなどれもガッツリ食べてるけどね。とにかく喜んでくれて何よりだよ。
「アイスさん! これ、お店のメニューにしましょう!!」
「ミャア!」「さんせー!」
「一応、そのつもりで作ったんだけど、改めてそう言われると嬉しいね。よし、みんな一番の好みが別れたから、みんなの名前をつけたメニューにしようか!」
「ミャア?」「どんな名前です?」「なにかなー?」
「いや、普通の名前だと思うよ。ヘルボアで作ったやつは、ライムミートパスタ、ダークブルで作ったやつは、ジェミニミートパスタ、合い挽き肉はマーブルミートパスタという名前で考えてるけど、どうかな?」
3人とも恥ずかしがっていたけど、許可は出してくれた。ってか、私にはネーミングセンスなんてないから、この辺が限界だよ? それに、変に可愛くし過ぎても頼みづらいでしょう?
取り敢えず、基本の看板メニューはこれでいいだろう。ミートパスタの他に定番メニューも少し用意して、他には季節に合わせて何か作り分けるのもいいかな。問題は飲み物かな。酒は、しばらく無理そうだけど。
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