アイスさんの転生記 ~今回は食堂のオヤジです~
うしのまるやき
第1話 今日も無事終了しました、ハイ。
「アイスさん、今日もうまかったぜ、ご馳走さん!」
「お粗末様でした。またのお越しを。」
「マーブルちゃん、ジェミニちゃん、ライムちゃん、また来るからね-!」
「ミャア!」「キュウ!」「ピー!」
「うーん、今日も可愛いわね!!」
こうした遣り取りも、結構当たり前になってきたな。
さっきの人達は、ほぼ常連となっている冒険者達で、男女1人ずつという比較的珍しい2人パーティである。ちなみに、彼らの顔は覚えていても、名前は覚えていないので、これ以上の説明は無理。マーブル達は名前も覚えているのだろうけど。
私の名前はアイス。以前いた世界では、郡元康(こおり、もとやす)という名前だったけど、齢45にして死んでしまったらしく、アマデウスという神様に転生を持ちかけられて転生した経緯がある。ちなみに、もう既に数回転生しており、転生には慣れたものである。転生してどんな人生を歩んでいるかは、割愛させていただきたいと思う。(「とある中年男性の転生冒険記」と「アイスさんの転生記 ~貴族になってしまった~」をご参照ください。ご覧頂けますと嬉しいです。)
また、私には他に3人のかけがえのない家族がおり、名前をそれぞれ、マーブル、ジェミニ、ライムという。
マーブルはトラ猫の外見をしている猫で、ジェミニはウサギ、ライムはスライムである。この猫(こ)達の詳細については、、、以下略。
で、私達はこの世界に転生して何をしているのかというと、魔の森と呼ばれている人気(ひとけ)のない森で食堂を営んでいる。街で営業しないのか? という意見もあるだろうけど、マーブル達と一緒にのんびり暮らしたいので、人の多いところは勘弁願いたいと思っている。
また、街などで生活をしていると、何かとしがらみが発生してしまうので、それもできるだけ避けたい。何より、魔物を食材として扱っているので、ここを生活拠点にしていれば食材は簡単に集まる上、いわゆる獲れたて新鮮な状態で提供できる。
というわけで、街にいなくても問題なく生活できるので、街にいる必要がほとんどない。まあ、食堂を経営するのにもお釣りなどで貨幣が必要だったりするので、たまに街へは顔を出しているけどね。
では、何故食堂を営んでいるのかというと、今回の転生は、魔物退治がメインらしく、倒した魔物を有効活用するには、食堂が一番手っ取り早かったからである。
っと、今のお客さんが帰ったところで、今日は店じまいとしますかね。
「では、今日はこれで営業終了なので、これより片付けを始めます。」
「ミャア!」「了解です!!」「かたづけー!!」
私がそう言うと、マーブル、ジェミニ、ライムは横一列に並んで敬礼のポーズを取る。マーブルとジェミニは、右前足で、ライムは触手みたいなものを伸ばしてしっかりと「>」の字のような形をしており、結構さまになっている。それ以上に可愛らしくて内心ホッコリ。
「では、マーブル隊員は、店内の砂埃を取り去ってください。」
「ミャア!」
マーブルは返事をすると、風魔法を駆使して床の砂やゴミはもちろん、テーブルの上にも存在する砂埃も巻き込んで、煙突のような形をした排気ダクトへとそれらを異動させた。終わると、「ミャア!」と鳴きながら、こちらに飛びついてきたので、感謝の気持ちをたっぷりと込めて撫で回す。うん、非常にすばらしいモフモフ。天国とはこの場所にあることは間違いない。
「次ですが、ライム隊員は床とテーブルと椅子を更に綺麗にしてください。ジェミニ隊員は、洗った皿達を棚にしまってください。もう乾燥も済ませておりますので。」
「了解です!」「がんばるぞー!」
ジェミニとライムはそう言って、仕事を始める。マーブルもそうだけど、もう何度もやっている作業なので、早いこと早いこと。それほど時間もかからずに、ジェミニもライムも作業を終えて、私に飛びついてきた。ジェミニから順番に感謝の気持ちをたっぷりと込めて、撫で回した。
説明し忘れたけど、ジェミニとライムとは会話ができる。ジェミニはウサギ語なので、基本人間では私としか会話ができないが、ライムは実は人語を話すことができるけど、限られた人の前でしか話さないようにしている。マーブルは本当は人語も話せるらしいけど、当人はイメージが損なわれるから猫のままで、ということらしい。このことは、ジェミニやライムを通じで聞いたので間違いない。まあ、こちらの言うことはしっかりと理解しているし、今までもそれで問題なく過ごせてきたから、今更それを変えようとは思っていない。むしろ、猫のままで接してくれているのが非常に嬉しいことである。
まあ、それは置いといて、お客さん側の部屋の掃除が完了したので、今度は明日の分の仕込みに入る。仕込むものは、日替わり用と定番用の2種類だ。どちらも比較的需要があるため、仕込みもしっかりしておく必要がある。
仕込みが終わった後は、調理場の掃除である。マーブル達に指示をしながら今日の売り上げなどを計上したりする。基本的には森で手に入る素材を使っての料理であるため、基本的には黒字である。それでも、何故計上しているのかといえば、森では手に入れることの出来ない食材を手に入れるためである。街は幸いにして港町なので、魚介類などが主なものであるが、それをどれだけ仕入れるかは、この売上額にかかっているのである。
計上が終わる頃には、マーブル達も調理場の掃除が完了している。正直自分でやるよりも、マーブル達にお願いした方が綺麗になるので、いつも頼んでしまっているが、マーブル達も私の手伝いをできることが嬉しいらしいので、これでいいのだ。
仕込みと掃除が完了したら、後は自分たちの自由時間である。自由時間の時に狩りをしたり、風呂に入ったり、洗濯をしたりしてその日は終了する。
現在生活している家は平屋で、食堂部分と調理場、後は、食材を保管する倉庫と私達が寝たり寛いだりする部屋、後は、風呂場とトイレである。
ちなみに、家の周りには、小さな湖と少し離れた場所に畑がある。我が家で必要としている水は、もちろんそこの湖からもらっているし、畑から食堂で使う分や自分達が生活に必要としている作物を作ったりしている。
畑については、最初こそ、野生の獣や魔物が作物目当てに襲撃したりしてきたけど、最近は放っておいても来なくなった。
山賊や盗賊の類いだけど、ここは魔の森と呼ばれる危険な場所であり、特に私達が生活しているような場所で出現する魔物は、山賊や盗賊程度の腕では退治どころか、下手すると全滅しかねないクラスの魔物らしく、彼らの拠点やアジトは存在しようのない所のようだ。
そんなわけで、わざわざこんな場所に食事に来るお客さんは限られており、まさに知る人ぞ知る場所となっている。一部では、ここで食事をするのが一種のステータスになっているらしい。我が食堂もそうなるほど有名になったようだ、、、。
さて、今日はこのくらいにして寝ましょうかね。
「では、今日は寝ましょうかね。おやすみ、マーブル、ジェミニ、ライム。」
「ミャア。」
「アイスさん、お休みなさいです。」
「あるじー、おやすみー。」
こうして、今日という日は終わりを告げた。
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