《5》10代のママごと(2)
【すみません。ポロリはないですけどボロリがあります。ごめんなさい】
居間の隅にある箪笥の上に一枚の写真立てがある。その写真立てには中学の制服を着た男女が隣り合ってまるで結婚写真のように写っている。左のセーラー服の少女の手には厚手の布にくるまれた赤子が抱かれていた。
その写真立ての目の前でその写真に写る今の本人たちが視線を合わせている。
先に口を開いたのは彼だった。
「バイト代の振り込み先、君の口座にしておいたよ」
それを言うと彼女は頷く。
「うん。ありがとう。じゃあ、ちゃんとお小遣いの分は分けてその時に渡すから、それでいい?」
彼は頷く。
「いいよ」
そして彼は彼女に一歩近づく。
「二人目、出来たって聞いた」
彼女は嬉しそうに頷く。
「君が二人目が欲しいっていうから、その……やったけど」
彼女はやはり優しく自分の下腹部を撫でている。そして言った。
「今度もDNA鑑定……する?」
上目遣いの言葉に彼は首を振った。
「いいよ。もう親父も何も言わないから」
そう言って居間の脇にある揺りかごまで近づき顔を覗かせる。
「何ヵ月?」
「ニヶ月だって」
「予定日は?」
「十二月」
「またこの一年身重で過ごすんだよ?それでよかったの?」
「いいよ。私とあなたの子供だもん」
「たしか女子高だったよね?学校はなんて言ってるの?」
「主の教えを説く宗教高がむやみやたらに中絶や退学なんて薦めたりしないよ」
「だから、そういう高校をわざわざ選んだんだもんね」
そして揺りかごの中ですやすやと夢見る自分の子供を見る。
「お前に弟か妹ができるよ。俊哉」
「お父さん、がんばってるよ。ね?」
ゆっくりと立ち上がり、彼の隣で寄り添うように彼女も自分の子を眺める。
その横顔を見て、ふと制服の肩にかかる少女の髪先に目がいった。
(ああ、あの時もこんな感じだったな)
彼は思い出していた。
中学二年の十二月。クリスマスの前日、今いる隣の彼女と二人っきりで彼女の部屋でいずれ来る高校受験に備えた勉強会をしていたその日の夜。
彼女は押し倒された彼女のベッドの上でのし掛かった彼の直視になったその下の先を指先でなぞりながら息も殺して言ったのだ。
「おいで……、あなたの……お母さんになってあげる」
―次回―
彼と彼女の罰は終わらない。
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