第128話 黒炎王シリーズ

 今回の武器作成対象者は、マルク、レティア、そして問題のハンマーを使うリィン。アリエルは火属性の矢が魔法で作れるし、私はアゾットロッドがある。

 ハンマーの質量のせいで、素材を錬金釜いっぱいに作らなきゃいけないんだけれど、魔力が持つかしら?

 しかも、工程が二工程。

 まずは、鋼製の武器の元になる『ウーツ鋼』を作る。ウーツ鋼がバランスのいい割合で作れたら、そこに黒溶鉱をまたバランスを見ながら混ぜていく。


 沢山の鉄がいるので、私は、アナさんのお店からの帰り道に買い物に行って、鉄のインゴットを大量に買って、アトリエに帰ってきたところだ。

 ゴトゴトといくつもの鉄のインゴットを錬金釜の横の床に置いていると、ポーション作りを終えたマーカスがやってきた。

「これ全部加工するんですか?」

 大きく目を見開いて、驚いている。

「リィンって鍛冶師の子の武器が巨大ハンマーだから、それなりに量を作らなきゃいけないのよね」

 私がため息をつくと、「なるほど、大変ですね」とマーカスは同情してくれる。


 まずは、陶器製の乳鉢に黒炭を少しづつ入れて、細かな粉末状の黒炭を作る。

「今度の作り方はちょっと変わっているのよ。マーカスも見ていく?」

 声をかけてみると、嬉しそうにウンウンと頷いた。

「是非!」


「まず、『鋼』と言われる武器の元になる素材の、『ウーツ鋼』を作るの。鉄に黒炭を混ぜるんだけれど、ほんの少しでいいから、様子を見て少しずつ混ぜていく」

 私は、鉄のインゴットの半分を錬金釜に入れ、攪拌棒を差し込んで魔力を流し込んで鉄を溶かす。半分にしたのは、念の為。もし途中で魔力切れして倒れたら大変だから、半分で作ってみることにしたのだ。

 大量の鉄のインゴットはやがて、ドロリ、と粘性のある液体に変わった。

 そして、スプーンの手に持つ柄の方の端っこに、少しだけ粉の黒炭を掬いとって、錬金釜に混ぜる。

 ねえ!この慎重さ!成長したと思わない?(エッヘン!)


【ウーツ鋼?】

 分類:合金・材料

 品質:低品質

 レア:B

 詳細:鉄に黒炭を混ぜたもの。武器にすると強度の高いダマスカス鋼になる。

 気持ち:まだじゃない?


 まあ、ほんのちょこっとしか入れていないもんね。

 私は、少し混ぜては攪拌、を繰り返していく。

 暫く繰り返して……。


【ウーツ鋼】

 分類:合金・材料

 品質:高品質

 レア:B

 詳細:鉄に黒炭を混ぜたもの。武器にすると強度の高いダマスカス鋼になる。

 気持ち:うん、比率がちょうどいい感じ!君、繊細な作業も出来たんだね!


 ……褒められてるのか、貶されているのかわからないわ。


「ああ、この辺りでいいみたいですね。品質もいい」

 隣で見学するマーカスも頷いている。


「じゃあ、今度は黒溶鉱を加えていくわね」

「はい!」

 マーカスは、興味津々といった様子で作業を見学している。

 私は少しづつ様子を見ながら拳大の黒溶鉱を錬金釜の中に落とし、溶かし混ぜ込んでいく。


【黒炎鋼?】

 分類:合金・材料

 品質:低品質

 レア:A

 詳細:ウーツ鋼に火属性を加えたもの。武器にすると強度の高い火属性のダマスカス鋼の魔剣になる。

 気持ち:まだ火属性を加えた方がいいね。


「まだ足りないようですね。品質が、低い」

 私と同じように【鑑定】の目で見たマーカスが呟く。

 鑑定のガイドに従って、黒溶鉱を少しずつ加えていく。


【黒炎鋼】

 分類:合金・材料

 品質:良品

 レア:A

 詳細:ウーツ鋼に火属性を加えたもの。武器にすると強度の高い火属性のダマスカス鋼の魔剣になる。

 気持ち:まだ火属性を加えた方がいいね。あとちょっと上手に調整してね。


「小ぶりの黒溶鉱ないかしら。後ちょっとみたいなのよね」

「これなんかどうですか?」

 黒溶鉱を入れた入れ物から、マーカスが親指大ほどの小ぶりの塊を手のひらに乗せて差し出す。

「うん、これで試そう。ありがとう、マーカス!」

 受け取った塊を釜の中に落とす。最後の一個が溶け込み、ドロドロの粘液状態の金属が光り輝き、禍々しいほど真っ黒な鋼ができた。


【黒炎鋼】

 分類:合金・材料

 品質:高級品

 レア:A

 詳細:ウーツ鋼に火属性を加えたもの。武器にすると強度の高い火属性のダマスカス鋼の魔剣になる。

 気持ち:うん、ベスト!


 ……そういえば、作り方が繊細だけれど、思っていた程魔力は持っていかれなかったわ。

 まだ半分あるし……、どうせなら、ねえ?


 錬金釜を使った調合は、意外に魔力を食う場合があることに気がついたので、マーカスにも『魔力操作で魔力を使い切って寝る』増幅法をやってもらっている。だから彼もただいま魔力量増量中である。今日ぐらいの魔力ならいけるだろう。

 マーカスも、経験を積んだ方がいいもんね!

「マーカス、残りの半分作ってみる?」

 聞いてみると、大喜びで大きく頷いた。

「ぜひ、やらせてください!」

 そうして、半分は私が見守る中マーカスが制作し、無事にインゴット型に入れた大量の黒炎鋼が出来上がった。


 そして、日を経てリィンの元から出来上がってきた武器はこの三品だ。


【黒炎王のハンマー】

 分類:武器

 品質:高級品

 レア:A

 詳細:強度の高い火属性のダマスカス鋼の魔剣ハンマー。基本ダメージに炎属性の追加ダメージ十五%。

 気持ち:黒い鋼の上に、ダマスカス鋼特有の模様が美しいだろう?


【黒炎王の槍斧】

 分類:武器

 品質:高級品

 レア:A

 詳細:強度の高い火属性のダマスカス鋼の魔剣ハルバード。基本ダメージに炎属性の追加ダメージ十五%。

 気持ち:いや、一番イケてるのは俺だろ!


【黒炎王の剣】

 分類:武器

 品質:高級品

 レア:A

 詳細:強度の高い火属性のダマスカス鋼の魔剣。基本ダメージに炎属性の追加ダメージ十五%。

 気持ち:いや、一番美しいのは私だろう?


 ……美しさ勝負はいいから、ちゃんと働いてね?

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