第1話・Aパート(始)
[ゲーム内・某所]
山々は大地を形作り、広がる青空には綿雲が点在する。
木々が立つ山肌には緑の低木草が生え、
木々についた葉の間から差す陽は
茂みの中、
男は
[無線が入る音]
防弾衣の左肩に付いた無線機のボタンが赤く点滅し、呼び出しを知らせる。
男は左手で無線のボタンを押す。
無線の声「CP、マルヒト。追跡中の目標を発見。1A1と見られる」
「マルヒト、CP了解。方位320、距離200の位置までマルフタが接近中。誤射に注意されたし」
無線の声1「CP、マルヒト了解。マルフタは1A2を追跡中との事。誤射に注意し、レディポイントまで移動する」
「マルヒト、CP了解、通信おわり」
[ボタンを離す]
銃を構えた右手の肘に左手を添え直すと、眼鏡越しに動く影を追う。
影は遠くの平野に車と共に小さく映り、どうやら車の近くに何かを置いている。
男の左目が細まる。
[呼び出し音]
銃床の肩当てを地面に置き、防弾衣の左肩から無線機を外す。
無線機の液晶には通知を知らせる文字が並ぶ。
[表記:ホンブヨリ キンキュウ]
CP「、、、本部から?」
[無線機横のレバーを上げる音]
無線機を防弾衣左肩に戻す。
「本部、こちらCP」
再度銃を構え直し、動く影を追う。
「CP、こちら本部。L-9、中央の山にて無許可の発砲を確認。現状での被害は死亡3、重傷1」
影が止まる。つまみを回し倍率を調整。
「現在、L-11にて参加者らが応戦中。5分後に現地航空隊が到着予定。対策部の情報によると敵チームはタイプCの可能性あり」
口から息を少し吐く。
「第一目標は砲弾の回収もしくは無力化とする。至急対処されたし」
[銃声・眼鏡越しの影が倒れる]
[ボルトを引く音]
排出された薬莢を左手で掴むと、男は銃の二脚を畳み、銃床を地面に立てて続ける。
「本部、CP了解。CPは現在進行中の1Aから離脱。新たな脅威を2A攻撃と判断し、対応にあたる。対応開始はただいまより180秒後」
「CP、本部了解。終わり」
男が別の無線を入れる。
「聞いたよね、そっちは任せたよ」
無線の声1「マルヒト、了解」
無線の声2「マルフタ、了解」
[ボタンを離す音]
[同刻・L-11 南の丘]
焦げた芝が広がる地面には大量の薬莢といくつかの死体が転がる。
黒く濃い煙が立ち、くすんだ灰色の車道に所々に亀裂が入る。
路上には陥没した路面のコンクリート塊が付近の家屋を貫通したまま点在する。
二階建て家屋の一階の窓は割れ、外の地面にはトラックが停車している。
[爆発音・激しい銃声]
陽が差し込み、床を照らす二階に3人の武装したプレイヤー達が立つ。
[弾帯が動く音・銃声・薬莢の落ちる音]
窓枠に二脚を乗せ機関銃を撃つ兵士。左の肩から血を流し、発砲の反動で重装備の身体がきしむ。
けたたましい機関銃の音は奥の居間まで響く。
[ベランダの柵が吹き飛ぶ・銃声・床がきしむ音]
機関銃の兵士の後ろ、居間の物陰に二人の兵士が滑り込む。
[装備が床にぶつかる音・服の擦れる音]
土埃を被る二人。ヘルメットの紐が外れた女兵士が厚いノートパソコンの画面を手で払い、砂を落としてキーボードを叩く。
その隣に座る男は左腕に亀裂が入り、血を流している。
男は防弾衣外付けの装着帯のポケットから注射器を取り出し、右手で左腕の二の腕に突き刺す。
親指で
男は苦悶の表情を浮かべると、注射器を床に放る。
[球が床に激突する音・転がる音]
窓枠の兵士をかすめ、外から飛んできた球が床に激突して床を転がる。
男は床に転がった球を見つけると、球を掴み、ベランダの外に投げ返す。
[破裂音・ベランダの床に無数の穴]
破裂と同時に広がった光が二階を強く照らす。
プレイヤー1「クソッ、どこから撃たれてる!?」
プレイヤー2「射角が特定できません!規模も不明です!」
[弾帯が揺れる音]
機関銃を柵越しに撃っていた兵士が二人に向かって叫ぶ。
プレイヤー3「こちらサポート!発射炎を捉えた!敵は北西の」
[繊維の潰れる音・銃声]
重装備の兵士の頭が大きく陥没し、その重々しい身体が床に倒れる。
[床に倒れる音]
女兵士は倒れる兵士を見ると、手首に付けた端末を見る。
プレイヤー2「・・・バイタル消失。これで5人目です!」
プレイヤー1「、、、チッ」
プレイヤー2「分隊長!これ以上の戦闘は危険です!一度撤退を!」
プレイヤー1「ダメだ!ここにある砲弾を敵に渡すわけにはいかない!」
プレイヤー2「しかし!」
プレイヤー1「航空隊の到着まで持ちこたえる!」
分隊長の男が無線を入れる。
プレイヤー1「ローバー、エンジニア、砲弾の積み込みは?」
無線1「敵からの攻撃が激しく、再開は困難です」
無線2「こちらからトラックを確認していますが、荷台へのそれ以上の積載は危険です。」
分隊長の男が眉をひそめる。
プレイヤー1「、、、助手席に詰め込む。最悪運転手さえいれば後は構わん。合図したらこっちへ来い」
無線2「了解」
プレイヤー1「スナイパー、敵は北西の方向だ。見えるか?」
無線3「
[通知音]
女兵士のノートパソコンに一件の電光掲示が表示される。
プレイヤー2「航空隊から通信!1番です!」
分隊長の男が無線のボタンを押し、階段の塀裏に隠れる。
分隊長の男が片付けの無線を入れる。
プレイヤー1「バード1、ニューイヤー。敵は我々の北西、約500m付近。規模不明。光学迷彩使用の可能性あり。こちらから概位置を表示する」
[無線を入れる音]
プレイヤー1「スナイパー!植生に焼夷弾を撃ち込め!」
[銃声・曳光が山に飛んでいく]
航空機無線1「ニューイヤー、バード1了解。30秒後に到着。表示を確認後、攻撃する」
航空機無線2「援護可能は600秒。司令所から伝令。ジャニュアリーは撤退準備」
プレイヤー1「ニューイヤー了解。終わり」
分隊長の男が無線を切り、立ち上がって階段を降りる。女の兵士も後から続く。
重装備の二人が降りる階段は音を立ててきしむ。
[階段を降りる足音]
プレイヤー2「撤退ですか?」
女の兵士は階段を降りながらリュックを前にずらし、チャックを開ける。
プレイヤー1「そうだ。車の燃料を確認しろ」
プレイヤー2「了解」
[チャックを閉める音]
女の兵士が一階の裏口から表に出ていく。
建物内の一階はいたるところに銃痕があり、ススや血痕が壁にこびりつく。
一階の隅、階段下の空き場所に装備を付けたままの仲間の死体が積み重ねられおり、死体と死体の隙間から箱の角が見える。
[ピンを抜く音]
分隊長の男は発煙弾のピンを抜くと、割れた窓から外に放り投げる。
次に死体の場所まで歩き、死体の両脇を抱えて引っ張る。
重装備の死体は一個一個が重く、箱の上から降ろす音が床に響く。
[引きずる音]
分隊長の男は力みながら死体を降ろし、額に汗をかいている。
プレイヤー1「ハァ、、、ハァ、、、。・・・?」
死体の認識票が赤く光っている。
死体を降ろし、両脇から手を離す。
男は認識票を手に取り、引っ張って取る。
[留め金具が外れる音]
プレイヤー「この反応、、、バカな、、、奴らただの傭兵じゃないのか?」
[足音]
女兵士が両手に燃料タンクを下げて部屋に戻ってくる。
プレイヤー2「航空隊が来ました!箱は?」
分隊長の男は女兵士を見ると、認識票を握って答える。
プレイヤー1「・・・あぁ、」
分隊長の男は認識票をポケットにしまい、死体の両脇を抱える。
プレイヤー1「手伝ってくれ」
[L-9・中央の山・上空]
[エンジンの回転音]
二機の小型プロペラ機が斜めに編隊し、上がっている煙に近づく。
プロペラ機は後部座席の後ろにエンジンと一つのプロペラを付け、向かい風で翼が少し揺れている。
前方の地表は一角が光って見える。
操縦手「見えた、あれだ」
銃手「あぁ」
航空隊無線1「こちらバード1、表示を確認。攻撃を開始する。バード2、旋回して地上部隊の援護に回れ」
航空隊無線2「了解」
一機が高度を落として前進する。翼に風が当たり、少し揺れる。
[線をまとめる音]
銃手「準備よし」
後部座席に座った兵士がいくつかの爆薬とそれぞれ付いた線を束ねて持つ。
兵士が持った爆薬と線の中心には鉄製の球が括り付けられている。
爆薬から延びた線は機体横付けのホイールに巻かれており、ホイールの丸板には穴が開けられている。
ホイールから延びている線は板と穴を挟んで結ばれており、その先で金具に留められている。
操縦手「投下」
銃手が線のついた爆薬を機外に垂らし、手を離す。
金具の先から延びる線は銃手が握ったスイッチに繋がっている。
[ホイールの回転音]
線と爆薬が下に落ちていく。
銃手が下を見ながら右手に握ったスイッチのボタンに指をかける。
操縦手「まだだ」
落下する爆薬と線は風に煽られながら、共に落下する鉄製の球に引っ張られ、前方に落下していく。
ホイールの回転する丸板から金具に延びる線が高速で円を描く。
[ホイールの回転音]
操縦手「まだだ!」
[重りが地面に激突する音]
操縦手「発破!」
[ボタンを押す音・無数の爆発音]
照明の辺りが光り、激しく爆発する。
爆風と破片が地面の植生と付近の木々を吹き飛ばし、爆風の一部が歪む。
[スパーク音・何かが破れる音]
歪んだ空間が剥がれ落ち、鉄鋼製の囲いが現れる。
囲いの穴からは銃口が覗いている。
[囲いの表面に無数の凹み・銃撃音]
囲いは銃撃を受け、その表面が歪む。もう一機のプロペラ機がその上を通過する。
[ボタンから線が切れる音]
航空隊無線1「効果あり、敵を視認した。再度旋回して攻撃する。バード2、奴らを施設に近づけるな」
航空隊無線2「了解」
[上がるエンジンの回転音]
プロペラ機は高度を上げ、上空に向かう。
煙が広がる青空に、プロペラ機が昇っていく。
[機体に風が当たる音]
銃手は線をホイールに少し巻き付け、丸板と穴を挟んで結ぶと、ホイール外付けのボタンを押す。
日の光が機体に当たり、銃手の手元が照らされる。
[ホイールの巻き上げ音]
ホイールから下に延びた線に爆薬を付け、金具から延びた線にスイッチを付ける。
爆薬の先には鉄製の球が付けられている。
銃手「よし、いけるぞ」
操縦手「了解」
[エンジンの回転音]
機体は大きく右下に傾き、旋回しながら降下する。
急降下する機体に、強い風が当たる。
[巻き上げの停止音]
銃手は線と爆薬をまとめ、別の線に付けた重りを機外に垂らす。
煙の中に見える地上の囲いを見ながら、線を掴んだ右手を緩める。
[地上・鉄板が倒れる音]
囲いの外壁を倒し、中から偽装網を被った兵士が現れる。
兵士は表面の網に大量の血痕を付けており、その手に持った機関銃を空中のプロペラ機に向けて構える。
[身体に無数の穴・兵士が倒れる・銃声]
もう一機のプロペラ機が倒れた兵士の頭上を高速で横切り、上空に向かう。
銃手2「・・・甘いぜ」
機関銃の照門から目を浮かせた銃手は銃口を倒れた兵士に合わせる。
[強い風の音]
二機のプロペラ機は交差して上空ですれ違う。
降下するプロペラ機の銃手が線を掴む手を緩める。
[強い上向きの風・機体が揺れる]
薄い黒煙で見えにくくなった地上の光に向け、プロペラ機は降下する。
銃手はゴーグル越しに地上の光を睨み、線を離す瞬間を伺う。
銃手「・・・見えた!」
操縦手「投下!」
[後部座席に穴が開く・銃声]
プロペラ機は銃撃を受け、後部座席の一部が吹き飛ぶ。
後部座席から線付きの爆薬と線が落下し、光から少し離れた地上に落下する。
[重りが地面に激突する音]
操縦手「・・・クソッ」
[エンジンの回転が上がる]
機体は地上付近で上昇に転じ、黒煙の中から抜け出す。
操縦手「・・・どこから撃ってきやがった」
機体は再び高度を上げ、青空に向かう。
[線の切れる音]
操縦手「最初と同じ方法でやる。準備しろ」
[機体に風が当たる音]
操縦手「?、おい!」
操縦手が操舵桿を握ったまま後ろを向く。
操縦手「ッ・・・」
後部座席の銃手は頭部に穴が開き、血を垂れ流している。
太陽の光がそれを照らす。
[風の音]
操縦手「クソッ・・・」
コクピットのボタンを押す。
航空隊無線1「こちらバード1、爆が死亡。地上部隊の掩護に回る。バード2は上空で旋回し目標を囲め。こちらでスポットする」
航空隊無線2「了解」
二機のプロペラ機は上空に向かい、地上の光と距離を取る。
[地上・山腹]
[遠ざかっていくプロペラ機の音]
傾斜に立つ木々の中、偽装網を被った男が重々しい狙撃銃を構え、上空を狙う。
狙撃銃は男が組んだ足の上に乗っかっているリュックに置かれている。
男「甘いぜ・・・」
男は手元の端末を見ながら引き金に指を掛ける。
端末にはライブ映像が流れており、ゲーム内の映像が流れている。
[風の音]
「オートエイムの対物ライフルとは、、、中々やるね」
男「?!」
男は腿のホルスターから拳銃を引き抜き、声の方向に向ける。
しかし拳銃を持った手の肘を蹴り飛ばされ、そのまま首元まで勢いよく体重を掛けられる。
[拳銃が落ちる音]
首を後ろから挟むように跨られた男はリュックの上に頭を沈められ、前髪を後ろに引き上げられる。
[ナイフが刺さる音]
男「グブッ」
「適材適所ってやつかな。」
[ナイフが押し出される音]
首の前面をナイフで切られた男は血を大量に首から吹きだし、吹出された血はリュックの凹凸のシワに溜まる。
[頭を押さえつける音]
男は痙攣し、四肢を動かす。
男の上には一人の兵士が跨る。
兵士は頭から手を離すと跨ったまま地面の拳銃を拾い、スライドを引く。
[弾の落ちる音]
兵士は痙攣する男の右手を掴み、手のひらにグリップを押し付ける。
頭を膝で抑えつけ、男の頭をリュックに倒し、横を向かせる。
「もう少し頑張ってくれ、、、」
兵士は力を入れ、抵抗する男の右手に拳銃を握らせる。
「いいよ、、、あとちょっとだ」
右手に握らされた拳銃は男の顎の付け根に向き、付け根に近づく。
「よし、、、これで」
[男の荒い息]
[付け根に銃口が付く]
「カンペキ」
[後頭部が吹き飛ぶ・飛沫が飛ぶ音]
男は拳銃を握ったまま動かなくなる。
穴が開いたリュックには男の血が溜まり、溢れた血がリュックの傾斜を伝って下に流れる。
[風の音]
「、、、ふぅ・・・近接って痛いねェ・・・」
兵士は死体の側から立ち上がると、首の後ろに掛けた帽子を被り直す。
兵士「、、、さて」
[端末が割れる音・銃声]
兵士は拳銃で端末を撃ち抜くと、背中右下のホルスターにしまう。
[ホルスターにしまう音]
兵士「次、いってみようか」
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