ラピタの悲劇

カフェオレ

問題編

「『目がぁ! 目がぁ!』

 そう言うと被害者は倒れ救急搬送された。どうだお前なんだろ? 夢須神むすかさんの目薬に毒物を混ぜたんだ!」

 取り調べ室にて俺、刑事留下るしたは語気を荒げ容疑者波須はすに詰め寄る。

 事件が起きたのは大手企業「ラピタ」のオフィス。そこに勤める営業部部長の夢須神羅火太むすからひたが昼食を終え、目薬を注した直後、目の不調を訴え気を失ったのだ。

 夢須神は依然、意識は戻らないものの、幸い一命を取り留め、現在病院での治療が続いている。

 取り調べを受けている容疑者の波須はその夢須神の部下である。

「違う! 確かにあの目薬は僕が夢須神部長に頼まれて買ってきたものです。でも、箱ごと渡して、それからは部長以外触っていません。僕は嘘つきなんかじゃない!」

「箱ごと渡したが、箱を開けたのは被害者とは限らないだろ。仮に被害者が開けたとしても、箱なんて細工すればなんとでもなるんだよ」

 進展のない取り調べに俺は苛立ちを隠せない。ちくしょう、こいつが犯人のはずなのに……。

 その時、取り調べ室の扉が開き一人の刑事が入ってきた。俺の部下だ。

「鑑識の結果出ました。目薬から毒物等は検出されなかったそうです」

「なに!? ということは目薬が原因じゃないのか?」

「ほら! だから僕じゃないんですって!」

 波須は即座に反応した。

 どういうことだ? 目薬から毒物は検出されなかった。しかし、被害者は倒れる直前、目の不調を訴えたのだぞ?

 すると、部下はさらに報告を続けた。

「それと、夢須神さんの弁当の内容ですが、ふりかけご飯におかずはハンバーグ。それと筑前煮とポテトサラダだったそうです。作ったのは奥さんの夢須神派露むすかはろさんですね。

 それと課長の鯛沙たいささんからお菓子を貰ってますね。マカダミアナッツをチョコレートでコーティングしたものです。これは鯛沙さんがすでに開封していました。

 さらに被害者はこの日、以前女子社員の楽酢理らすりさんから誕生日プレゼントで貰った金属製のベルトの腕時計を着けていたそうです。これは事件当日の朝まで未開封。ですがプレゼント用のラッピングをしたのは楽酢理さん本人です。

 いずれにも被害者がアレルギーを持っているということはありません」

「そんなこと誰が調べろと言った?」

 そう言った直後、扉が開いた。

「私だよ」

 入ってきたのは、女探偵の堂羅どうら。数々の難事件を解決した私立探偵だ。今まで警察でも何度もお世話になっている。それと三人の人物を引き連れている。

「堂羅さん、その人達は?」

「夢須神さんの奥さんである派露さん。それに課長の鯛沙さん、腕時計をプレゼントした楽酢理さん。この人達に事件の真相を聞かせてあげたくてね」

「てことは?」

 俺は期待を込めて聞いた。

「ええ、犯人が分かったわ。そしてその人物はこの中にいる!」

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