星鉱をさがして その2

ナウヴェルが王様かよ……

しかも鍛冶屋の王ってなんかよく分からんけど、すごい奴だったんだな。

「まあ、王とは言うてもあくまでわしらがそう呼んでいるだけじゃ」

つまり、鍛冶屋連中に神格視されてるようなものか。しかしそれでもかなりのものだな。

そんな話をしてるうちに、いよいよ行き止まりとなった。

「ここがそうじゃ」とジジイが見上げると、そこにはまるで星空……いや、朝日を通してオレンジ色に輝く星たちが頭上に輝いていた、

高さは俺の背丈の倍ってとこか、それほど広くはない。

ジジイが言うには、新たなラウリスタが誕生する際に献上する星鉱をここで採るんだそうだ。

「さて、わしとチビはここで星鉱の採掘じゃ」

「待てよ、俺はどうすんだ?」

「ほあ? お前なにも聞いておらんのか」

「聞くって……つまり俺の斧の素材のことか?」

「わしも聞いとらん、勝手にやればよかろう」


おいおいおい! ここまで来て勝手にやれってか! ふざけんな!

俺が怒りをあらわにすると、ジジイはこう言ってのけた。

「ラウリスタ様はただ造るだけじゃ。お前はなにを求め、どんな思いを持ってその武器を手にしたいんじゃ? まずはそこからゆっくり考えるがいい」

そういってジジイは、穴の隅でチビとコツコツ採掘をはじめやがった。

「おじいたん、これどうつかうの?」

「よしよし、これはこう持ってな……でもって」

側からみると、ジジイが孫と遊んでいるようにしか見えねーし。

まあいいか。俺は自身の……なんだっけ?


なにを求め、どんな思いを……か。

燃えるようなオレンジ色の日差しが目を刺す。俺はそのまま目をつぶって、言われたとおりゆっくり思いを巡らせてみることにした。

確か……俺はあの時、親方にもらった大量の宝石をどう使おうか考えていたんだっけ。けどいきなりこんな大金もらってもな、なんて悩みに悩んだ挙句、専用の武器を、俺にしか扱えないくらいの武器をオーダーしてみようと、街にある武器屋に行ってみたんだ。


まるで昨日のように思い起こされる、あの時のこと。

あの時店にいた店主、つまりあいつが前のラウリスタとつるんで稼いでいたワケだな。そう考えると結構悪どいやつだったかも知れない。宝石渡したらいきなり目の色変えて丁寧な態度取りやがったし。


ーなぜ、俺は斧にしたかったんだ? 別に剣でもよかったんじゃないのか?


いや、俺はあの時、斧がいちばんいいって直感したんだ。

ブン殴れるほどに重く厚く、そして鋭く切り裂ける大きな刃。

でもって俺と同じくらいの長さ。じゃないと取り回せないし。

力を十分に込められるには柄がとにかく長くなくちゃいけねえ。もうその時点で剣は却下って考えに至ったんだっけ。

それを店主に余すところなく伝えて、できたものが……あの大斧なんだ。

重すぎもせず、かといって俺の腕には軽くもなく。そうだ、まるで腕の一部にでもなったみたいな、そんな感触だったっけな。

まず最初に見せたのは親方だった……いややめよう。また頭の中が湿っぽくなっちまう。

だから……やっぱりナウヴェルに新しく仕立ててもらうんだとしたら、同じくらいの大斧がいいな。


なんて思っていると、突然俺の足元がぽかぽかと温かくなってきた。

チビが漏らした? いやそんなバカな。通ってきた洞窟と同じ、ここも地下水が滲み出てひんやりとした岩穴だぞ!?

「どうしたんじゃ?」

「なんか、足元が急に温かくなってきて……」

そう話すとジジイは、ニンマリとしわくちゃの笑顔を見せた。

「なるほど、つまりそこが正解じゃ。掘り出してみい」


言われるがままに俺は、手にしたハンマーとノミで足元一帯の岩をガツガツと掘り砕いた。

だが手にしたそれは両手のひらに収まるほどに小さな石塊だった、この広間のように光も通さず、輝きもせず……だ。

「これがそうなのか?」

「いや、わしにはそれが正解かどうかは分からん」

「おいジジイ、さっき正解って……!」

「言ったじゃろ。それを見極めるのはお前自身、そしてそいつから造り出すのはラウリスタ様の腕じゃと」


言ったか? そんなこと。

でも……確かに俺は感じたんだ。足元のこの岩に温もりがあったことを。

だとしたら、間違いはないはずと信じたい。

「さて、コツが分かったらもっと頑張ることじゃ。その程度の星鉱じゃ矢尻ひとつくらいしか造れんぞ」


マジかよ……何日かかるんだ?

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