疑問
時間に余裕があるうちに、俺はガンデの話を聞いた。
ジャノたちと親子で砂漠で暮らしていたことを。
その時出会ったキャラバンの積荷と、そしてリーダーの言葉に導かれるままに、こいつはワグネル・ラウリスタの弟子になったことを。
そして……
「ナウヴェルさんとも話しました。ワグネル師のことについて」
やっぱり。ナウヴェルたちはここに来ていたのか!
そのことについて問うと、やはり「捕らえられている」とのこと。
なるほどな。つまりマシャンヴァルの一大拠点となったここエズモールにはよそ者を入れたくないってワケか。でもってたまたま来ちまったエッザールとナウヴェルの……いや、エッザールは無事なのか!?
「安心してください。ゲイルさんが絶対二人は傷つけるなって。エッザールさんは今は鉱石掘りに駆り出されているはずです」
ゲイルがそんなことを……あいつほんとムカつく奴だけど、俺と同様に同胞のプライドだけはちゃっかり持ち合わせてるんだよな。まあそこが唯一の憎めないトコなんだわ。
「ワグネルはゲイル様と契約をしたのじゃ……自身の創り出す武器をさらに世に知らしめたいとな」
縛られていたジジイもぽつぽつと話してくれた。
「ええ、ワグネル師も最初は拒んでいたのですが、やはり欲に目がくらんでしまって……だから」
ぎゅっと、ガンデの拳が握られた。
「ナウヴェルさんにお願いしたんです。もし師と会えたのなら、いま一度師を説得してくれないかって。それが無理だとしたら……」
ガンデは自身の胸を握りしめ、俺に言った。
「あなたが新たな師匠となってください……と」
「わかったラッシュ? 仕事がひとつ増えちゃったけど」
「……厄介だな。まあ俺が説得するんじゃねえし」
ジールは笑いながらそう言ってはくれているが、つまるところ俺の武器はいったいどうしてくれるんだ? 気弱そうなガンデがまた斧を作ってくれるとでもいうのか? それが俺のいちばん心配なトコなんだがな。
「ところで……妹は、ジャノはどこにいるんですか?」
そうだ、すっかりアイツのこと忘れてた、んだが……
「またひどい熱を出しているって、ジールさんが」
また? またって一体どういうことだ?
「それについてはあとで私からラッシュに説明するわ。まずは一刻も早く……うーんと」
言葉に詰まった。ジールはプランとか作戦練るのかなり苦手っぽいんだよな。
「うっせえわラッシュ」
笑いをこらえていた俺の爪先を、ジールが思いっきり踏んづけた。
「んがぐぁあ!」変な声が出ちまった。
……………………
………………
…………
さてと。ジジイから大まかな場所を聞き出せたからいいとして、問題はワグネルがどこにいるかだ。ガンデによるとこのでっかい山の奥でひたすら武器を作り続けているんだとか。
そう。弟子のこいつとは一切コンタクト無し。だから余計に不満を募らせているんだ。
だがまずはエッザールとナウヴェルの解放が先だな。戦力は充実させておきたいし。
病院を後にした俺の背中に、ジールが小さく話しかけた。
「さっきのジャノのことなんだけど……」
熱病のことかと聞いたら、あいつは首を左右に振った。
「病気じゃないの。もっと……ヤバいこと」
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