おかえりなさい

街の喧騒とは無関係な俺の家。相変わらず男ばっかりでむさ苦しいというかなんというか。しかも仲間も増えたっていうのに。


「おおっ、ラッシュさんの家って宿屋だったのですか!」家を前にして驚くエッザール。一応は説明してあげないとな。一応傭兵ギルドも兼ねているって。


「それで、こちらのメンバーはどれくらいいるのでしょうか?」


「俺一人」


「え……?」


「俺一人だけ」またもや驚いてるし。


けどまあ無理もないかもしれないかな。オコニドとの停戦以降、情勢も落ち着いてきたんだし

さてさて、ドアを開けると……やっぱりだ。誰も迎えちゃくれない。入口に面した食堂だって誰もいないし。


「おう、帰ってたのか……ってこれまたずいぶんと苦戦してきたようだな」俺とエッザールの包帯姿を見て、ラザトのやつがくすりと笑った。


まずコイツがギルド長であり親方のラザトだって、エッザールに紹介。

「初めまして。私の名前はエルザルド・バニオーティス=デ=ガルシャント・シャウズ=エ=サガラロ・アンザールと申します」


なげえ。


エッザールとしか聞いてなかったとはいえ、こいつもルースやマティエ同様苗字持ちだったのか。とはいえクソなげえ。アホみたいになげえ。

「私の国では普通ですよ」と言ってはいるが……うん。だから略してエッザールだったのか。

あとで聞いたところによると、こいつの家は代々続く戦士の家系なんだとか。そっか、だから例のワグネルの剣を持ってるってワケだし。

でもってこいつは成人を迎えるために、いろんな国を回って修業しているとのことだ。傭兵として参加することもその一環なんだとか。


……え、成人!? まだこいつ成人じゃないのか!


「成人の儀は国や地域によって異なるんだ」とラザトが言ってくれた。

ンなモンただの儀式だ。あってもなくても関係ねえ。と蛇足ながらも加えたその言葉……

「親方さん、結構アクの強いお方ですね」やっぱり。内心腹立たしさは隠せないようだった。

折り目正しいエッザールとズボラ極まりない……ある意味俺と似た正確なラザト。こりゃトラブルにならないように気をつけないとな。


「息子とチビはどこ行ってんだ?」

「ああ、いつも通り外でやってンぞ、そろそろ帰ってくるんじゃねえのか」

あ、そっか。フィンがチビのお守してるのか。

エッザールは「子供さんいるのですか?」って聞いてはきたものの、これどうやって答えればいいのか難しいな……

そんなこと考えていると、帰ったぞー。とフィンの声が。


「おとうたんおかえりー!」

俺の姿を見止めるやいなや、猛ダッシュで俺の尻尾にぼふっとタックルしかけてくる……そう、チビだ。

まだ身体の節々が痛いけれど抱き上げて……と、そういやこいつ泣かなくなったな。ちょっぴり成長しているのかな。


「えっ……と、人間のお子さん……ラッシュさんの養子ですか?」


あああ……どうやって答えればいいのやら。

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