第7話
大好き。
2日目。
「花影、お前本当に大丈夫か?」
「うん、なんとか」
「昨日より顔色悪い気がするぞ?」
「休んだらどうだ?」
みんな心配してくるほど酷いんだ、僕の顔。
「…ごめん、やっぱ休んでくる。みんなは楽しんできて」
1人立ち止まり、くるりと回る。
「夢眠、僕も…」
「いや、夏儺はみんなと楽しんできてよ。僕のことは心配しないで」
本格的に体調が悪くなり、やっとの思いで本部に着いた。
「あれ、花影お前どうした?」
「顔色すっごい悪いわよ。よくここまで1人で来れたね」
そう言いながら椅子に座らせてくれた。
あぁ、今はこの2人の先生しかいないのか。
女の人の方は初めて赴任してきた人だ。あまり近寄りたくない。
「ちょっと待って。あなたと仲がいい先生ならあと少しで私と交代だから」
まだ先生の名前を覚えていないのか、少し戸惑いながら教えてくれた。
だんだんと息がしにくくなってきた。
それと同時に痛みが増してゆく。
これは確実にやばいやつだな。
「おい、花影?大丈夫か?」
「ちょっと先生呼んできます!」
声がだんだん遠くなっていき、
椅子から倒れ落ちた。
その後病院に運ばれて小一時間点滴を受け、
次のホテルに移った。
それからはみんなと一緒に行動して
ご飯も食べていたが、
頭痛がずっとしていて食欲もなく、
話も聞けなかった。
今日こそシャワーを浴び、
また夏儺より先に寝てしまった。
翌日はお土産を買ってから
バスに乗り込むが、僕にはお土産を渡すような人もいないし、
自分用に買ったとしても帰った後ゴミになるからそこへ行かずに
すぐにバスに乗って寝て待っていた。
とは言っても
こういうところでは寝れない性分なので
目を閉じているだけだから、
お土産を買い終わってバスに乗り込んでくる人たちの声が入ってしまっていた。
それにうんざりしかけていたとき、やっと僕の好きな声が聞こえた。
「僕ねぇー、夢眠にお土産買ったの〜」
「何を買ったんだ?」
「ふふっ、それはねぇ〜。夢眠〜起きてる〜?」
「起きてるよ」
目を閉じながら返答した。
「夢眠〜、これどーお?」
うっすらと目を開けると、
夏儺が水色と黄色のキーホルダーを
2つ持っている。
"かなで"
"むう"
「夢眠はこっちね〜」
夏儺は"かなで"の方を僕に渡した。
「これね〜、星になってるの。二つ合わせたら出来るよ」
…あぁー!選ぶセンス良い!
可愛い…!
それにしてもよく"むう"っていうのあったな…。
「ありがと、夏儺」
僕は思い切って夏儺を引き寄せ
頭にキスをするも一気に恥ずかしくなり、
そのまま寝落ちた振りをした。
「⁉︎夏儺にキスして寝た⁈」
「うわぁ、花影ってそうゆーこと普通にできる奴だったんだ」
「かっこいいなぁ」
「夏儺が羨ましい」
みんな小声でそう言っていて周りには聞こえていなかったが、
僕だけには聞こえる声がした。
「むー、ずるいよ」
そう言って僕の胸に額を擦り付けた。
僕は逆にこんな可愛い彼がいて
嬉しい限りだよ。
ありがとう、夏儺。
そして、さようなら。
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