第54話 唐突な再会

 その後の生活では、缶コーヒーを飲む機会が増えました。コーヒースタンド『ピーベリー』のコーヒーの味とは比べ物にならないものですが、その時の私にとっては唯一の救いでした。

 少し酸っぱくトゲトゲしい苦みはあまり好きではありませんでしたが、飲んでいるうちに慣れましたね。


 あれからコーヒースタンド『ピーベリー』のシャッターが開く事は無く、かと言って他のコーヒー屋さんのコーヒーを飲みに行く気になれず、会社の休憩スペースにある自販機の缶コーヒーを飲んで、やり過ごしていました。やっぱりもうお店が再開される事は無いのでしょうか?


 そんな日々が一週間も続いた頃でしょうか。久しぶりにコーヒースタンド『ピーベリー』の近くを通ったので、お店の方を覗いてみると、見知らぬ白の軽トラックが停まっているのを見かけました。

 その傍らに立っているのは、奥の店員さんでした。


「あっ……」

 漏れ出た私の声を聞きつけ、軽トラックの隣に立っていた奥の店員さんが、後ろにいる私に向かって振り向きました。

「あ。お久しぶりです」

 お互いに会釈をします。

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