第52話 とても残念です

 それからとりあえず持ち直した私は、書類仕事と入力仕事を片付けて、帰路につきます。持ち直したとは言っても心のざわめきは落ち着いてないので、なんだかザワザワした心持ちで電車に揺られていました。


「今夜……。とりあえず見に行ってみよう」

 そう。いつもなら夜の焙煎作業があるはずなんです。なのでそれがやっているかどうかの確認もするため、また戻ろうと思っていました。

 怖い人に絡まれる覚悟はできています。いざとなったらすぐに逃げられるように、靴とかを準備しておかないと。


 そして帰宅して着替えて、いつでも動けるように、パーカーにデニムパンツにスニーカーで行ってみます。

 多分大丈夫……と思いたい。


 そしてまた電車に揺られて戻り、コーヒースタンド『ピーベリー』の前まで来てみました。

 やっぱりシャッターは下まで降ろされて、隙間からは灯りも漏れていませんでした。本当にお店自体をお休みしてしまっている状況でした。


「やっぱり……。もうダメなのかな?……」

 まだ名前すら聞いていない店員さん。あの人は、今何をしているのでしょう。


 私は肩を落としてトボトボと帰り道を歩きます。誰かがその時の私を見かけたら、おそらく心配してくれるでしょう。そのくらい心境は残念さでいっぱいでした。


 帰りの電車の中でもうつむき加減で、窓の外の景色すら見られませんでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る