七十三日目
七十三日目
今回の旅の目的は果たせたみたいだ。
昨日、念のために酒場を覗いてみたけれど、オークさんの討伐依頼書みたいなものは貼られていなかった。
これで当面は……少なくとも何かの拍子で人間にオークさんたちの姿を見られるまでは、安全になったんじゃないかと思う。
あと太郎丸の無事も確かめられたから宿につれてきてあげた。
厩舎はあたたかそうだし、食べやすそうな干し草もいっぱい出してもらえて嬉しそうだったよ。
まともな活動はそれくらいで、それ以外はずっと宿でごろごろしてた。
オークさんの集落が襲われてからまともに休む機会がなかったもんね。テントがあるとはいえ野営は野営だし。
とはいえ二日連続でだらだら過ごすのも気が引ける。宿代もそれなりに高そうだし。
というわけで今日は姫ニャンと町に繰り出すよ。
ちなみに金貨は私と姫ニャンで半分ずつ持つことにした。
まあ姫ニャンのおかげで手に入ったお金だし全部預けてもよかったんだけど、受け取ってもらえなかったんだ。
まあ、確かに一文無しの人がいたら傍から見てると心配になるかもしれないね。
そうと決まって、私が最初にやったのは金貨を体のあちこちに隠すことだった。
靴の中にも入れたし手足の包帯の中にも忍ばせた。
太もものナイフホルダーにも分けたし、元の世界の財布にも入れた。
馬鹿正直に金貨の袋に入れたのなんて二、三枚くらいかな。
海外旅行とか行くときはこういうふうに所持金を分散させて持つものだって、JCのころ理科の先生が言ってたよ。
姫ニャンにもできるだけ分けて入れるようにしてもらった。
……姫ニャン、ブラの中に入れたりできるんだね。すごいや。
出かける前に、二人でマントから髪とかはみ出てないか確認してからフードをかぶせ合いっこしたりもした。
制服ももうボロボロだけど、なんかデートに行くみたいでむずむずした。
さて、町に出たはいいけれどどこに行こうかしら?
文字は読めないけど看板の形でだいたいどういうお店かは見当がつく。
姫ニャンもギュッと手を握ってくるわりには……――手を握ってっ? いやもう、ホントナチュラルに手を握ってくるようになっちゃってもう!
話が逸れたけども、姫ニャンも行動は私に一任するつもりみたいで、自分からどこかに行く様子はない。
ええい仕方がない。気になるお店を片っ端から覗いてやろう!
最初に覗いたのは装飾品を扱ってるお店だった。
いや、私だってこれでも女の子だもん。異世界のアクセサリーとか少しは気になるさ。
並んでるのはマジックアイテムだったりするのかな。宝石がついてるのが多かったよ。
あと安いものほど模様とかの装飾がいい加減だった。
つなぎ目の模様が思いっきりズレてたりとか。
あいにく私には効果とかわからないし、これが似合う服も持ってない。
姫ニャンと合わせっこしたりはしたけど、ここは冷やかすだけにしたよ。
他にも道具やっぽいお店や武器屋なんかも覗いてみたけど、一番楽しかったのは普通の服屋さんだったかな。
この世界にもちゃんと試着室があったから、二人で入っていろんなのを試着してみた。
元の世界の姫ニャン(Vチューバー)が着てたのとそっくりな白いワンピースがあったから着てもらったら、想像以上に似合ってて鼻血が出そうになった。
私の方はビキニアーマーみたいなの着せられて恥ずかしかったけど、姫ニャンは大喜びしてたっけ。
結局私はこの世界風の上着とシャツを、姫ニャンは白のワンピを買ったよ。
制服も雑に縫い直しただけだから、代わりの服が欲しかったんだ。
異世界生活七十三日目。異世界デート楽しかった。
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