六十八日目
六十八日目
オークニキと別れて十七日目。ようやく私は人間の町にたどり着いた。
私の外見はいろいろマズいらしいことはわかったので、ここではしゃべれないフリをする。
まあ、しゃべれなかったらしゃべれなかったで別のトラブルを招きそうではあるけれど、不気味がられるよりはいくらかマシだろう。
町の規模としてはどれくらいなのかな?
遠目に見た限りでも、家屋の数は相当数あった。百や二百じゃないだろう。
漠然とだけど、数千件はありそうに見えたよ。もっとあるかもしれないけど。
出歩く人々の数となると、たぶん一万を超えてるんじゃないかと思う。
建物はレンガ造りのところが多い。木製のもちらほら見かけるけど、あまり良い造りじゃなさそうかな?
たぶんレンガの方がいい家なんじゃないかと思う。少なくとも、ここでは。
住民はもなんかいろんな服装の人たちがいる。
ファンタジーに出てきそうな古めかしいシャツとベスト、あとなんか筒っぽい帽子をかぶってる人たちが普通の人かな?
冒険者みたいに軽鎧着てる人もいるし、全身鎧の騎士(?)さんなんかもいる。
他には金の刺繍とか入って裾とか長い上等そうな服着てる人。
いつかの商人さんの格好に似てるから、あれも商人さんなのかな。あまり貴族とかみたいには見えない。
種族も人だけじゃない。
姫ニャンみたいに猫耳の人もいれば頭がそのまま犬猫の人もいた。
猫耳と猫顔がいるんだ。なんか衝撃。
あとリザードマンっていうのかな。鱗の生えてる人とかもいた。他にはドワーフみたいに背の小さいおじさんとか。
でも人間が一番多いように見えたよ。
なんというか私、本当に異世界に来てたんだね。
いやまあ、理解してるつもりではあったんだけど、これまでオークさんと姫ニャンくらいしかまともに交流できた人いなかったから。
あれ? でも魔法使いみたいな格好の人は見当たらないね。
魔法があると言っても一般的なものじゃなかったりするのかな?
まあそれはそうか。
誰でも魔法が使えるなら冒険者たちも魔法使い相手にもっと善戦してただろうし。
……私も魔法使えたりしないのかな?
まあサイコメトリーは魔法みたいなものかもしれないし、今は残弾四とはいえM-1もあるけど。
さて、これからが問題だ。
ギルドっぽい建物を探さなければいけないんだけど、どれも同じようにしか見えない。
看板とかに名前らしきものは書いてあるけど、私には読めないし。
幸いというか、いろんな職業人種の人がいるおかげで、私みたいにフードを目深までかぶって歩いてる人がいても変な顔はされない。
うーん、町の規模が大きすぎてどこに何があるのかさっぱりわからない。
冒険者たちが入っていく建物を覗いてみても、武器屋っぽいところだったりよくわからない雑貨屋さんだったり宿っぽいところだったり。
彷徨っているうちに、看板の形なんかである程度店の種類くらいは判断できることに気付いた。
ご飯屋さんは食べ物の形の看板だし、フライパンをそのままぶら下げているところもあった。
武器屋とか防具屋みたいなお店は剣とか盾とか。
宿っぽい店はベッドの形のところもあればご飯屋さんみたいな看板もあって、ちょっと見分けがつかなかったかな。
あと金槌の看板は武器屋じゃなくて鍛冶屋さんだった。
お店というより工房なんだろうね。扉を開けたら勝手に入ってくるなみたいに睨まれちゃったよ。
こういうのゲームだけかと思ったんだけど、わりとあるもんだね。
そういえばこの世界の識字率ってどんなものなんだろう。
誰もが学校に通えるような世界でもない限り、そんなに高くはないと思うんだよね。だから文字読めない人も一定数いるんじゃないだろうか。
そのための看板の形なんじゃないかと思う。
まあ看板がわかりやすくても、目的のギルドは見つけられなかった。
今日はひとまず町の様子を知れただけでも一歩前進かな。
異世界生活六十八日目。夜は姫ニャンのところに戻って野営したよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます