三十四日目


三十四日目


 獣が寄ってくる。


 まあ、いくら洗っても同じ場所に留まっていれば血の臭いもするだろう。

 たき火を熾しても獣が寄ってくるようになってしまった。


 姫ニャンががんばって追い払ってくれたんだけど、獣たちは少し離れただけでじっとこちらの様子をうかがっているみたいだ。


 これじゃあ身を休めることもできないので、たいまつというものを作ってみることにした。


 オークさんたちが残した荷物の中には、少量の油があった。

 石けんを作るときにも使っていたものだね。


 これを布に塗りつけて、それをさらに棒切れに巻き付ける。

 棒切れは太いめものの方がよさそうだったよ。


 それで火を付けたら、即席たいまつのできあがり。


 正直、昔見た映画の記憶を頼りに作ったから上手くできるか不安だったけれど、存外にちゃんと燃えてくれたよ。

 振り回しても消えないし、枝の方が燃えるようなこともなかった。


 こいつを振り回せば獣たちも追い払える……はず。


 ただ、姫ニャンが火を怖がったから追い払うのは自分でやるしかなかった。


 足の傷もまだ治りきってないから無理はできないけれど、ちょこっと移動して木の枝を振り回すだけの簡単なお仕事だ。


 よったよった歩いてくる私を舐めきってた獣たちも、鼻面に一発ぶつけたらギャンって鳴いて逃げていったよ。


 ……本当はめちゃくちゃ怖かったけどね。

 真っ暗だし暗闇の向こうに何がいるのか見当もつかなかったから。


 火の怖さをたたき込んでやったおかげか、たき火を囲んでいる間は獣もよってこなくなった。


 それで少し安しちゃったのかもしれないね。周囲を警戒していたつもりだったのに、いつの間にか姫ニャンと肩を寄せ合って眠っていた。


 ただ、眠れたのはいいんだけど、河原で寝るのは体によろしくない。石ころだらけだし痛いし寒いし。


 木の枝とか葉っぱを集めてベッドが作れないかとも思ったけれど、今の身体状況だとちょっと厳しいかな。


 まあ、寒いといっても最初にこの世界に来たころに比べればだいぶ暖かくなった気がする。

 そういえば草原で野宿してたころからひと月も経ってることになるんだよね。


 あと、ひとりじゃないのが大きいと思う。


 姫ニャン、ずっといっしょにいてくれるのかな。


 異世界生活三十四日目。姫ニャンはあったかいな。


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