第4話 それが弊害になっている
私はお茶の時間に王妃様のところにお邪魔するとの伝言をヴァレンティーノ殿下に頼んで、部屋を出ていってもらいました。
そして、指定された
庭園の真ん中には白いテーブルが設置してあり、すでに王妃様がいらしていました。また、嫌味を言われるのでしょう。
「わたくしを待たせるなんて貴女はそんなに偉いのですか?」
偉いも偉くないも
「申し訳ございません。」
と頭を下げます。
「それで、ヴァレンティーノ王太子殿下に言われた案件なのですが、採用不可です。」
「わたくしがそうしなさいと言っているのです。」
「ですから、私が王妃様の真意を聞きに参りました。王妃様は何がお望みですか?ヴァレンティーノ王太子殿下の手柄となることですか?」
多分、陛下から言われたことで、焦っているのでしょう。このままだと、第二王子を王太子にするぞと言う意味も陛下の言葉に中に含まれていたことに気がついたからでしょう。当の本人は全く気づかすに、私が悪いと思っているようです。
「くっ。」
図星ですか。私に指摘されるのがそんなに嫌なのですか?その様に美しい顔を歪めなくてもいいと思うのです。
「現実的に言って、北の国境沿いに廃村がありますので、そこで暮らしてもらうのが一番妥当かと思われます。ある程度の生活基盤があり、水などの確保も問題ないでしょう。そこに王太子自ら支援という形で現地に入れば、王太子の評価もあがるのではないのでしょうか?」
「それはいい案ですが、あの子にそんな田舎に行けと言うのですか!お前が行きなさい。」
は?それは意味がないと思いますよ。王太子自ら行くことに意味があるのですから。
「いいえ、それでは王太子の評価には繋がりません。」
「お前は王太子妃なのでしょう!命令です。お前が行きなさい!」
はぁ。困りました。ロバルト宰相に相談してみましょう。
「ということなのですが、どういたしましょうか?」
私はロバルト宰相の執務室に行き、今日あったヴァレンティーノ殿下の襲撃訪問から王妃様の意味が無い命令について報告しました。
目の前の人物は頭を抱えていらっしゃいます。
薄い青みがかった銀髪に、目の下の隈が日々濃くなっていく青い目が死んだ魚のようになっている人物がこの国の宰相です。お父様と同じ年だと聞きましたがココ数年で一気に老けたように見えます。心労の大半はヴァレンティーノ殿下だと思われますが。
「はぁ。難民の問題は確かに頭が痛いことです。いつまでも南の国境沿いに居てもらっても色々問題がありますから。北の廃村に移住と言う形を取ってもらうのが一番いいのかもしれませんね。で?王太子殿下に行かせるですか?」
「形だけでも行って貰えればいいかと思ったのですが、田舎は駄目だと王妃様から言われてしまいました。」
「はぁ。王太子殿下では無理でしょう。」
ロバルト宰相も駄目ですか。
「1ヶ月ほどルチルクレシェ様に行ってもらうことで、この話は解決ということでいかがでしょうか?」
「1ヶ月もちかすか?」
ロバルト宰相ご自身が・・・。
遠い目をされながら、ため息を吐いたロバルト宰相が
「もちますかねー。」
と言われました。あの、そこはもちますと言って欲しかったです。
「そう言えば、この国に大型船があるのですか?」
今日、ヴァレンティーノ殿下がおかしなことを言っていましたので、気になってロバルト宰相に聞いてみます。
「そんなものありませんよ。なんですか、いきなり。」
「いえ、今日殿下が大型船がこの国にあるように言われましたので、気になったのです。」
ロバルト宰相は机をコツコツと指で叩きます。これは宰相が考えているときの癖です。
「王妃様が個人的に何かを購入されているようなのですが、詳細は報告されていません。どうやら、マルス帝国の者たちが出入りしているので、気をつけていたのですが、何か怪しいですね。それはこちらで調べておきましょう。」
マルス帝国・・・大陸北部の強大国の一つです。色々きな臭い噂が絶えない国です。そんな国の人達が王妃様と接触していたのですか。何事もなければいいのですが。
そして私が、南のサヴァン国の難民の対応を行うことになりました。1万人の難民の方々に対し移民という形でよければ受け入れるとこちらが提示すると約8000人の方が移民を希望されました。それでも8000人です。廃村までの距離を一国分縦断するのに父から軍の1部隊を借り、軍の人達に手伝って荷馬車を用いたり、体力のある者は歩いてもらうなどして、廃村に行ってもらいました。
軍の人達はそのまま残ってもらい、森を切り開き、魔物を駆逐し、田畑を耕し、湧き出てくる魔物を蹂躙し、雨露を防ぐ簡易的な建物を建て・・・
は?ダンジョンを発見した?どおりで魔物が多いと思いました。ダンジョンを攻略し、これは使えると判断しましました。
ここは冒険者を呼び込む町にしましょう。ただの農村から辺境の町するために急遽予定を変更し、色々手続きをしていますと、一ヶ月などあっという間に経ってしまいました。
北の国境沿いで一ヶ月が過ぎようかというとき、王太子から手紙が届きました。王太子からの手紙など生まれて初めてもらいましたよ。
『すぐに戻れ。』
・・・一言だけですか?何があったかは教えてくれないのですか?
「キアン。王都で何があったのですか?」
私に宛行われた小屋のような建物の中、私一人しか居ない空間で、何処ともなく声をかけます。すると、一人の男性が私の足元に跪いた姿でその場に存在していました。
「報告を」
何も話さないキアンに催促をします。
「・・・とても悪いことになっておりまして・・・。」
どうも歯切れが悪い言い方です。悪いことになっているなら、その前に私に報告するべきではないのでしょうか?
「では、言い方をかえます。悪くなる前に私に報告をしなかった理由を言いなさい。」
「ルーシェ様を巻き込みたくありませんでした。」
「それは誰の判断で?」
「我々の判断です。」
はぁ。時々こういう事があるから困ったものです。私に害があるものから遠ざけようとしているのは、彼らの優しさなのでしょうが、それが弊害になっていることがあるのです。
「キアン。全て私に報告しなさい。」
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