旋風のルスト ~逆境少女の傭兵ライフと、無頼英傑たちの西方国境戦記~

美風慶伍 様作


あらすじ引用

『私は家畜にはならない。たとえ飢えて痩せ衰えても、自らの意思で荒野を歩む狼の生き方を掴み取る!』


■17歳の銀髪・碧眼の美少女ルストは重い病の母の治療費のために傭兵として懸命に働いていた。屈強な男たちと肩を並べて戦うが、女性としても小柄であり、実績も無く、名前も売れていないルストは傭兵として仕事を得るのも困難を極めていた。

 だが、諦めない前向きな心を持つルストは、ついに未来へとつながる大きなチャンスを掴む。


『小隊長を任されたエルスト・ターナーです。よろしくお願い致します!』


■そんなルストは、女の子故に腕っぷしや武力では屈強な男たちには敵わない。だが優れた洞察力と包容力と指導力、そして精霊科学『精術』を武器に困難な事態を次々に打ち破り、人々のために確かな明日へと繋がる未来を切り開いていく。


『みなさん! これは困難ではありません! 千載一遇のチャンスです!』


■気高さに溢れた美少女傭兵が、精霊科学の残る悠久の大地フェンデリオル国で砂漠の大帝国と戦い、人々を幸せへと導く!

 孤独な道を歩んでいた一人の少女が、傭兵となり救国の英雄となり、幸せの絆を取り戻すロマン溢れるサクセスストーリー!


【簡単なあらすじ】

ジャンル:異世界ファンタジー

それは内容に虚偽のある依頼を受けたことから始まっていく。戦闘が起きるはずのない依頼。彼女たちは隊長を失い、絶体絶命の危機に居た。自分たちは寄せ集めのメンバーであり、もちろんチームワークなどはない。相対するのは戦うことに慣れた盗賊団。生きて帰るためには、結束力と的確な判断力が必要とされた。暫定の隊長を任された主人公は、彼らと共に無事に帰還できるのか⁈


【物語の始まりは】

戦闘の一場面から始まっていく。主人公たちは〝職業傭兵〟であり、今回の仕事は林業用の森林地帯の見回り。本来なら敵がでるはずはない。その為、誰でもできる仕事のはずであった。しかし予見はあったのだろう。傭兵の五つの階級の中の上から三番目にあたる人物に、直接指名が入っていたのだから。これは罠なのか? それとも策略か? 依頼内容に虚偽があった為、寄せ集めの彼らでは対処しきれない状況となってしまった。果たしてどう切り抜けるのか?


【舞台や世界観、方向性】

国独自の職業〝職業傭兵〟という職業(?)があり、軍人、市民義勇兵に続く三番目の存在。依頼の報酬として金銭を受け取り、仕事をする。階級などもある。上から三番目の階級は準1級。

民族固有の精霊科学アイテム〝精術武具〟というものが存在する。

主人公の成長の物語である。


【主人公と登場人物について】

この物語は主人公の成長が描かれた作品。

冒頭で戦闘が開始された直後、彼女たちは自分の置かれた状況を冷静に分析し、隊について辛らつな評価をしている。しかし隊長を喪い、暫定の隊長と認められた彼女にとって頼れるのは自分と一時的な仲間だけ。その場面でも冷静に分析をし、最小限の被害に抑えようとしていた主人公だったが、冒頭の印象とは異なる。

この物語では、主人公の微細な変化も表現しているように感じた。感情の起伏をあまり感じさせない冒頭に比べ、村に帰ったのちの心境など。


【物語について】

撤退を余儀なくされた彼らであったが、事態はそう甘くはなかった。等級準一級である隊長の指示により、主人公は9人で編成された彼らを先導することになる。しかし撤退の途中で隊長は被弾。彼をその場に残さなければならない状況に。皮肉にも、ここまでは纏まりのなかった彼らだったが気持ちが一つとなり、主人公は暫定の隊長として認められるということになる。


彼女たちはこの後、絶体絶命状態から正規軍に助けられることになるが、当初の”虚偽依頼問題”についても触れられている。単に傭兵として戦って……というだけの物語ではなく、問題に解決や状況の把握などにも触れている。戦闘が含まれる物語で、刑事もののように事件の解決とその後にまでスポットがあてられて描かれている物語は、珍しい印象。事件の背景について詳しく分かるため、厚みと奥行きを感じる物語でもあると感じた。


【良い点(箇条書き)】

・物語として焦点のあてられている部分が斬新だと感じる。

通常、ファンタジー×戦闘ありという作品において、悪事が裁かれるのは多々見かける。それは商業やTVにおいても同じではあるが、依頼とそれらの関係について触れるというのは”ミステリーや刑事もの、探偵もの”などジャンルが多く、このタイプのものは珍しいと感じた。つまりこの物語で表現しているのは”生活”の部分でもあると、言えるのではないだろうか?

・さらっと描かれても不思議ではない部分に、テコ入れしている。

主人公達が何故傭兵をしているのか? これに対してのエピソードが、とても丁寧であると感じた。彼女たちは収入を得るために仕事をしている。もし報酬に不安があれば、その後の仕事自体が巧くいかなくなることもあるだろう。

その後どうなったのか? このことについて疑問を抱くのはジャンルに寄るだろうが、丁寧に描かれていることによって、彼女たちが”生きている”、”生活をしている”ということが、より強く感じられる。

・主人公だけでなく、主人公によって周りも成長していく物語である。それだけこの世界で生きることが、過酷であるということだと感じた。

・冒頭からのイメージとは違い、かなり主人公の生活に密着した物語。

バリバリの戦闘もの(息をつく暇もないほど、戦闘に次ぐ戦闘のような物語)が好きな人には物足りなさがあるかもしれないが、海外の友情ものドラマのようなライトさもあるので、逆にバリバリの戦闘ものでないものが読みたい人には好まれると感じた。(生活も感じられる作品が好きな人、という意味合い)


【備考(補足)】16ページ目まで拝読

【見どころ】

この物語での”ライフ”は少し読む前とは、イメージの違うものだと感じた。主人公はワンルームの部屋に住んでおり、17歳の少女である。過去に重いものを背負っており、そこから逃れ、自分らしく生きようとしている印象。しかし母は病にかかっており、その治療費も負担しなければならない。


魔法などが存在するファンタジーを舞台にする作品において、生活に密着し”生きる”ことに対してリアリティを追求した物語だと感じた。スポットをあてている部分がかなり斬新であり、これは筆者(自分)の偏見ではあるが”男性よりも女性”が好みそうな作品だと思った。

戦闘描写においても丁寧ではあるが、それよりも主人公の生活部分が際立ち、その方向性も既存の物語とは少し傾向が異なる印象を受けたからである。

野宿して戦って、砂や泥まみれの戦場、血なまぐさい描写が延々と続くというイメージの傭兵生活ではない。どちらかというと、貧乏なキャリアウーマンというイメージに近い。

その為、都会で貧乏暮らしをし”お金はないし、仕事を探さなければならない。どうしよう!”というような、誰もが一度は感じたことのありそうな感情も共有したり、共感できる部分もある。不思議なバランスの物語である。

読みやすく取っつきやすいという印象を持った。

あなたもお手に取られてみてはいかがでしょうか? 主人公がこの先、どのような人生を歩んで行くのか、その目で是非確かめてみてくださいね。おススメです。

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