振り向けばタコがいる

ぺんぺん草のすけ 様作


人の不安と恐怖は、自分の中から産まれているのかも知れない


【物語は】

主人公の祖父がなくなり、その日から起きた出来事と、主人公が出来事の原因を祖父の言葉と結び付けたことから展開されていく。


【不思議な世界観と心のリアルさ】


この物語で目を引くのは、自分の心と出来事が深く繋がっているが、その繋がり方に曖昧さが加わり不安と恐怖という効果を産んでいるところ。

読んでいて、何がどのように繋がっていくのだろうか。読み手を、好奇心と同時に、不安が襲う。前半から中盤。中盤から後半は全く違う。

そのきっかけは、他の人への問いかけなのだが、それまで自分の世界に籠っているように見えるので、はっきりとした分岐点であり、とてもい印象深く心に残る。


【タイトルからは全く想像の出来ない奥深さ】


ここは感動したところである。

全体を読む前に、『タイトル、あらすじ、書き出し一行』というレビュー企画にて考察させていただいているが、実際拝読させていただいた印象は、全く違う。メッセージ性が非常に高く、内容はヒューマンドラマだ。拝読以前は、ホラーかコメディなのだろうかと想像したが、モチーフの使い方がとても巧く、このモチーフのイメージが生かされている。


【周りは変わらない。しかし、自分が変われば周りは変わる】


自分が昔、人から言われた言葉である。主人公は、以前の自分と似ているところがあり、昔の自分を見ているようで感情移入がとてもし易かった。思春期に多い感情なのではないかと思われる。是非とも、中高生に読んでいただきたい物語だ。変わりたいと思ったその瞬間が、いつでも再出発なのではないかと、思う。


とてもテーマが深く、大人から子供まで自分を振り返るいい機会を与えてくれる作品だと感じました。是非、お手に取られてみてくださいね。

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