第26話 招待主の出迎え
「こんばんは、よくきたね。」
並べられた家具たちを眺めていると、聞き慣れた声が耳を掠めた。
「お邪魔しております。」
あくまで自分はこの男の部下なのだ。
それは入社した時から、肝に銘じている。
だからこそ、姿勢を正しく、頭を下げた。
「いやいや呼び立てたのはこちらだからね。気兼ねしないでくれ。」
家の主人は、手を振って答えていた。
「さあ上りたまえ。他の客人も到着している。」
「出遅れましたか。」
「いいや。時間ぴったりだな。大方柄本くんあたりと出席を押し付け合っているかとも思ったんだが。」
人の機微に鋭い上役は、年若い青年のことなどお見通しらしい。
廊下を案内されながら、ちくりと嫌味を言われる。
「いえ。まさか。」
年季の足りない愛想笑いはどうしても引き攣ってしまう。
「ところで、例の仕事は順調かね?」
「ええ。」
「王氏は有力者だからな。場を設けるのも苦労するだろうが。皆君には、いや君たちには期待しているんだ。」
肩に軽く手を置かれる。
細められた黒い瞳は普段と変わらぬ怪しい光を放っていた。
「ご期待に沿えるよう精進いたします。」
なんとも居心地の悪い場だ。
正直言って、すぐにでも暇乞いをしたい気分だった。
「まあ、今夜はたのしんでいってくれ。」
そう言って上役は談話室の扉を開けた。
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