トレーニングその十三 世界観作りの練習

 スターウォーズやガンダム、ロードス島戦記やクトゥルフ神話それにマニアックな作品ならばファイブスター物語などの作品の特徴に架空の年代記がある事があげられます。異世界の歴史、よく世界観なんて呼ばれる要素です。この世界観作りをトレーニングしようと言うのが今回のお題です。


 よくアニメや漫画のマニアの中に、ある作品の年代記や設定に異常なほど詳しい人がいたりします。作品の隅から隅まで突っついて、年代記の整合性に異常にこだわる。そう言った所から作品にのめり込む人がいる様に、この世界観も読者を惹きつける要素です。一見見たことも無いような世界でも、細かく設定を創り込み、それをエピソードにつなげていけば、魅力的な世界が出来上がります。


 世界観の中に年代記があるように、実際の世界にも歴史があります。まず世界観作りの練習として実際の歴史を勉強してみるのをお勧めします。特に自分が創りたい世界観に似た雰囲気を持つ、例えば中世ヨーロッパだとか、中国の三国志時代だとか、興味のある所からで良いので勉強してみましょう。

 そして、その歴史をちょっとずれた歴史にしてみて下さい、例えば中世ヨーロッパなのだけど魔法がある。現代なんだけど妖怪がいるとか。大正時代だけど鬼がいるとか。九十九パーセントの本当の中に一パーセントの嘘を混ぜ込む、なんて言いますが、実際の歴史知識に裏打ちされた設定はかなり強度の高いリアリティを生みます。


 あとは比較的、世界観がしっかりした作品のシェアードワールド小説を書くなんてのも有効な世界観作りのトレーニングになります。例えばクトゥルフ神話の短編なんかを書いてみるのが良いでしょう。

 クトゥルフ神話を知らない人に説明すると、百年ほど前のアメリカに怪奇小説の先駆者的作家のハワード・フィリップ・ラブクラフトと言う人がいて、彼がお遊びで自分の作品の設定を他の作家と共有して書くと言うシェアードワールドと言う手法を試み、それに後続の作家達が次々と参加して、架空の年代記や禍々しい邪神や怪物の設定を共有し小説を書いたのが、クトゥルフ神話の始まりです。

 その設定や年代記に触れて小説を書けば、自分の作品の世界観を創り出すときにも必ず役に立ちます。

 クトゥルフ神話は出版されている資料も多く、ファンも多いので、練習がてら書いた小説でファンを楽しませることもできます。興味が有ったらぜひ挑戦してみて下さい。


 シェアードワールドとはまた違うのですが、世界観のしっかりした作品の二次創作つまりパロディ、なんてのも練習としては有効です。二次創作は発表の場が限られてしまうのですが、自分の好きな作品を設定資料集なんかを含めじっくり読みこんで、そこから二次創作すればかなり力を付けられるのも事実です。とは言っても二次創作は小説投稿サイトなどでは禁止とされているところも多いです。ですが二次創作から創作の世界に入ったなんて人がいるのも事実で、初心者には二次創作でキャリアを積むと言うのは魅力的でかつ有効な創作入門と言えるところもあります。公式に二次創作を認めている作品も少数ながらありますので、行き過ぎた著作権の侵害になるような、例えば大々的にお金儲けに二次創作を利用するとかしなければ、純粋に創作を楽しむためにファンアートとしてやる……と言うのならそれほど目くじらを立てられることもないかと思います。


 世界観を勉強するうえでTRPGを勉強したりプレイするというのが、半ば欠かせない要素としてあるのですが、世界観作りとはそもそもこういったゲームのゲームデザインをすることに相当し、世界観作りに必要な要素とは何か? 怪物と実際に戦うとはどういうことだろう? 物語を喚起する設定とはどの様なものだろう? と言ったことが勉強できます。詳しいことはこの後のトレーニングTRPGで紹介しますのでお楽しみに。


 最後に世界観作りのコツを一つ挙げると、作品を書くときに世界観に矛盾するかしないかはあまり重要ではないという事を覚えておいて欲しいです。よく自らが設定した世界観に矛盾を起こさないよう配慮するあまり、実際の小説が一行も書けなくなるなんて人もいるようですが、それではせっかく作った世界観も意味を成しません。読者が読みたいのは整合性のある世界観ではなく魅力的な世界の物語なのだということを忘れないようにしてください。

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