第3話 ナンバーズNo.
「先生!服をお持ちしました!」
アイラが走って駆け寄り白衣を差し出す。
外に行く際は自分の身分が分かりやすいようにこれを着ていくのだ。
研究者は国の宝と思われている節があるため優遇されやすい。
俺はそのアイラの持ってきた白衣に袖を通しバッチをつける。
これは国から貰った物だ。
異世界研究者のバッチ。
今日は資金調達の為に王都へと向かうのだ。
なに…一つ開発した機械を持っていけば何とかなるさ。
そう考え俺は食堂を出る。
この屋敷は上は住居なのだが地下は違う。
研究費をかなりつぎ込んで地下に大きな研究施設を設けてあるのだ。
食堂を抜けて中央、ガラス張りになった壁から大きな木のある中庭が見える。
そう、ここはあの異界門の上に作られた施設。
そこを通り過ぎ突き当りの横にある部屋に入る。
一見ただの客間にも見えるが違う。
本棚の中の数本を押し込む。
ガコン…ウィーーン
機械音と共にその部屋は動き出す。
この部屋はエレベーターになっているのだ。
地下は14階ほどある
1階は異界門、研究室
2階から5階まで非常用の居住施設と食料や資金の貯蔵部屋。
後は14階まで今まで開発してきたナンバーズが保管されている。
ナンバーズ…それは俺が異世界へ向かった際、何が起こっても良いようにと考え作り出してきた品々の番号だ。
この施設の動力源もそれだ。
No.7 地下エネルギー抽出装置
ブラフマー
ある日俺は地下に強大な空間とエネルギー源がある事に気づきそのエネルギーを吸い上げ使う事にした。
その為の機械がNo.7 ブラフマーと言う訳だ。
この機械ともう一つ。
これも勇者召喚と同じで偶然できた産物なのだが、頭に埋め込まれたチップ。
No.2 異界抽出知能 スーリヤ
これは、凄まじいものだった。
勇者召喚と同じ様に人手はなく知識を召喚する機械。
異界の知識…いや未知数ではあるが全世界の知識や技術を俺に授けてくれ
た。
今ある全てのナンバーズもこれの知識から作り出した物が大半をしめる。
機能は 世界から知識の抽出
相手や物を調べ解析する機能
と言った所だろうか…。
正直、未知数過ぎて把握しきれていないと言うのが現状。
無意識のうちに能力が上がっており気づいていないと言う事も考えられるからだ。
もう異世界へ行く準備は整っている。
後はこの世界に残りバックアップしてくれる彼らが生活する為の資金が必要。
ピーン…ガシャン
地下11階。
ナンバーズ70番台、大型機械が収納されている部屋。
全てに布がかけられている中、一つの場所で立ち止まった。
…
No.40 魔導四輪
その埃が被った布を付けたまま、魔導四輪の引く荷車にそれを乗せる。
「先生!今日はお帰りになられますか?」
アイラと穂香そしてミケがその荷物を乗せるのを手伝い見送ってくれていた。
「ルークよ、その魔導四輪じゃ無くて馬にした方がいいのではないか?」
ミケさんが頭を手でかきその手を舐めながら聞いてくる。
「まあ、そうだな…でもこのほうが早い」
王様がこの機械にも目をつけて欲しがる…なんてのも考えられるが。
まあ問題なかろう。
その時は必要だとか言って他の小物をやれば良い。
「「行ってらっしゃいませ」」
「ああ、少し行ってくる。
アイラ、今日は遅くなるかもしれんから夕ご飯は勝手に食べといてくれ」
キュィイイイイン
魔導四輪に魔力エネルギーが充填され走り出す。
洋風建築の建物が次々と過ぎていく。
街の人達は、走る魔導四輪を見て指を指している。
この街で俺の名前は有名なのだ。
あの勇者召喚を作ったルークと言う名の魔術研究者…。
街の人いわくこの街の誇りらしい。
花の都 フィオーレ
5人が、出会い育った地。
街は活気に溢れ人々の笑い声が途絶える事なく響いていた地。
しかし…今ではそれも無くなった。
カシュマール戦役 開戦オヴェスト歴661年
隣国の魔族国デュナミスが小競り合いをやめ本格的に攻め入って来た。
これに対し王国デセオは勇者を用いて迎え撃つ。
しかし相手国にも勇者がいる為、戦場は混沌とかし戦争が長引いているのだ。
現在オヴェスト歴 666年の今でも続いている。
今回、わざわざ異世界研究者の称号を剥奪すると脅してきたのはその為だろう。
何か他に兵器は無いか?
と言った所だ。
王国は焦り、研究成果を絞り出そうとしている。
そんな事を考えながら街を抜けしばらく進み森の道に入ると目の前の道に馬車が置かれ塞がれているのが見えた。
あー、面倒だ。
この手口は山賊、金が無いなら戦場にでも行けばいいものを。
普段警備をしている騎士たちが戦争で居なくなり治安が悪くなっているのだ。
仕方なく魔導四輪を止めて車から降りる。
すると…。
「ほぉ、こいつはラッキーだぜ。
国の研究者様かよ。
よし、こいつをさらって国から金を巻き上げるぞ」
出てきたのは5人、まあ大した事はないな。
俺は手のひらを相手たちに向け呪文を唱える。
「テンペスタ『嵐よ』」
その瞬間、手のひらより風が生まれ渦となり山賊達の周りを覆った。
「なんだ!?」
「魔法!?」
次の瞬間風は上空へと転じ山賊たちを吹き飛ばす。
その小さな嵐はしばらくして霧散し消えた。
魔術研究者だ、当然魔術も心得ており大体の魔術は使えるのだ。
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