7話
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「──────に命ずる。この女を殺せ」
一面赤。赤、赤、……赤。
その部屋は全てが赤に染まっていた。
自分の着ている質素なシャツとズボンも部屋と同じく元の白さなど無くし、赤に塗れている。
それなのに綺麗な赤だった自慢の髪はもう半分以上が白くなっていて、目も片方だけ黒ずんだ赤になってしまっていた。
……無くした筈だった。
消した筈の、壊した筈の心が軋む音を聴く。
まだ、捨てられなかったのかもしれない。
平和に戻ることが出来る、あるかも分からない“いつか”の為に。
「──、守ってあげられなくて……ごめんな」
赤毛の女性は、そう言った。
「気にしないで良いの。私は微かな時間でも、とても幸せだったから」
美しい白髪の少女は、そう言った。
そして、いなくなってしまった。
一人に、なってしまった。
ボクが、───から。
もう、ボクの心を縛るモノは無くなってしまったようだ。
───────ナニカが崩れる音がした。
───「ふわぁ。なんだかこの夢は久しぶりに見たなぁ」
ベッドの上で飛び起きる……なんて事はせずに普通に眠りから目覚めゆっくりと起き上がったボクは、環境が変わったからかな?、と一人呟いた。
あんな夢を見た後だからトラウマが蘇ってきて……なんて、ボクはならない。
慣れてしまった。あったはずの心もなくしてしまったから。
最も、今考えてもどうにもならないんだけどね。
「ま、それはそうとして授業授業〜!」
ボクはココロを躍らせながら昨日支給された肩掛けバッグの中に筆箱などを詰めていく。
「教科書は今日配布されるみたいだし、このくらいでいっか!」
そしてバッグを肩に掛けるのではなく背負うと部屋を出た。
エレベーターでロビーに降りるとそこには龍真がいた。
まだこちらには気づいていないようだ。
「龍真ー! おはよう! 一緒に学校行こーぜ!」
「おう、おはよう。そうだな」
ボクが声を掛けると龍真が振り返り、返事をした。
「あれ? 初授業ってなんだったっけ?」
学校への道すがら、ボクが龍真に問う。
本当ははしゃいでたから知ってるけど、ちょっとだけ馬鹿っぽさを出すための演出。
やりすぎかなぁ?
「昨日言われただろ。もう忘れたのか?」
「いやぁー。持ち物が無いからつい……あはは」
「分かったぞ。お前、忘れ物多いタイプだな」
「バレたか……」
それにしても話がとんとん拍子で進む。
ボクは潜入とかもよくやってるからこういうのは得意だけど、確か蒼炎サンは特攻専門だよね?
なんでこんなに流暢に話せてるんだろ?
ま、そんなに気にする事じゃないよね。
「今日は初日だから四時間授業らしい。一時限目がホームルーム、二時限目が異能学、三時限目が歴史、四時限目が異能実技だそうだ」
「へー。異能実技って何するんだろ?」
「さあ。授業を受けてみれば分かるんじゃないか?」
それもそうか、と相槌をうち、歩き続けると学校に着いた。
が、教室の前には何故かアキちゃんがいた。
「アキ? なんでここにいるんだ?」
「ああ、やっと来た。これを渡そうと思って」
アキちゃんが差し出したのは歴史についてのプリントだった。
「お前、座学苦手だろ? これ持っとけ」
「うわ、これすげえ! めっちゃ綺麗にまとめられてる!!」
実はボクは座学も物凄く得意だけどキャラ的に考えれば頭悪そうだしね。
それに、このプリントはカモフラージュだ。
上らへんと下らへんの数枚は歴史のものだが、真中にはアゲハが収集した情報が詰まっている。
別に今日の夜でも良かったのに。
「まあ、それだけだ。頑張れよ」
「うん。サンキューな、アキ!」
アキちゃんは後ろ手に手を振りながら去っていった。
……なんてキザな。
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