第15話 仮初の威厳
珍客のリーエルさんを連れて拠点へと戻る。
何故かリーエルさんは不安な表情をしているが、強者には強者なりの悩み事があるんだろう...知らんけど...
拠点のドアを開くとシリュウが飛び込んでくる。
「きゅぴー!!」
「ただいま~」
シリュウの肌はつるつるしていてとても肌触りがいい。
ドラゴンと言ったら鱗、師匠にはびっしりと生えていたのでゴツゴツしていて肌触りが正直悪かったので、シリュウは抱きしめていてとても気持ちがいい。
シリュウを抱きしめていると正面に謎の美少女。
黒髪に赤目の小柄な少女。
歳は私と同じくらいで身長も120㎝で私と同じくらいだ。
「え?どちらさまで?」
「きゅぴー!」
「え?」
「イチゴです」
え?え?この子がイチゴ?
こんな美少女が??
あの生意気なイチゴ?
イメージと違い過ぎて一瞬だけ思考が停止する。
ていうか...人型になれるの??
装備は初期装備だがそれに劣らない顔面偏差値の高さ。あどけなさの残る表情にジト目で退屈そうな眼差し。
一目でわかったが、やはりこいつは私を下に見ている!
今に見てろ...怪しく微笑みリーエルを紹介する。
「じゃあ紹介するね、さっきそこで会ったリーエルさん」
「きゅぴ?」
シリュウが何を言ってるか理解出来ないけどイチゴの表情があからさまに悪くなっているのは理解できる。
先程までの余裕な表情は崩れ涙目になっている。
師匠よりも強い少女の登場に恐怖を感じない者は居ない。
これでイチゴも私への評価を上げる事だろう。
「リーエルさんにも紹介するね、こっちの小さいドラゴンがシリュウ、そしてこっちの女の子がイチゴ」
「畏まりました!よろしくおねがいします」
軽い自己紹介の後、拠点の紹介をした、と言っても私たちの部屋と師匠の部屋、それから浴室に倉庫、そして最後に外にある畑だ。
対した拠点ではないが、もし仮に暮らしていく事になったら知っておく必要があると思ったからだ。
そういえば...
「リーエルさんはどんな所に住んでいたんですか?やっぱり天界とかですか?天使だし...」
「いえ、私は覇王城に住んでました」
「あぁ...そうだよね...ご主人様...ていってたもんね...あはは...」
そういえば、グレース様の従者だった...。
何の気なしに会話をしていると突然師匠が帰宅した。
突然のことに驚いたが、もしかして...
「ぐぬぬ...まだあそこのボスには敵わんか...」
「師匠...まさかまた死んだんですか...?」
「うぬぬ...【深淵エリア】のボスはさすがに強敵じゃったぞ....」
師匠は残念がりながらも諦めてはいない様子。
そんな師匠はリーエルさんに気付くと一礼する。
「これわこれわ、リーエル様。精が出ますのぉ」
「いえいえ、シザースこそ以前より強くなられたようで、私なんてまだまだです」
「わしも覇王様の一配下として精進せねば...」
「はい...私もいつかはゼルセラ様の様に...」
「あの御方は規格外...途轍もない力を内包しておりましたな...」
「はい...私も同じポテンシャルはあるはずなんですけど...」
師匠よりリーエルさんの方が格上なんだ...あれ?もしかして...師匠大したことない?
いや...そんなことはないだろう、事実強い訳だし、グレース様に教育を命じられるくらいなのだからそれなりの地位に居るのだろう。
リーエルさんに聞いたところ、リーエルさん達フリューゲルはグレース様直轄の親衛隊だそうで、ゼルセラ様を筆頭に総勢201名からなる隊らしい。
その中でもリーエルさんは自分の事を落ちこぼれと言っているが、周りの基準が高いだけで一般からしたらかなりの上位者なのだ。
師匠は夜だというのに張り切って外に飛び出していくので、私たちはみんなで湯舟に浸かり、その日を終える。
明日はイチゴの戦闘力とできればリーエルさんの戦闘力を見てみたい。
リーエルさんの力を借りれば丘ぐらい簡単に越えれるのではないのだろうか...。
訪ねてみれば簡単に了承してくれたので、明日が楽しみだ。
昂る気持ちを必死に抑えつけ眠りにつき普段よりも早く飛び起きるリーエルさんを連れて外に飛び出した。
手伝わないと言いつつも、イチゴもちゃっかりついて来ている辺り、イチゴもリーエルさんの強さが気になっているのだろう。
丘を登ると大きな緑色のドラゴンと小さなドラゴンたちがあちらこちらを徘徊していた。
「うわぁ...地獄絵図...」
「きゅぴー...」
【
知ってたけど...。
「シリュウでも解析できない?」
「きゅぴ...」
「出来ない。だそうです。因みに私にもできません」
シリュウの言葉をイチゴが翻訳し教えてくれる。
この流れは定着するのだろうか?イチゴの対応に関心しつつも、そっとリーエルさんの方を振り向く。
この人ならどうせ見れるだろうという安易な考えだが...。
「あのドラゴンのステータスは平均30万程ですね」
『さ、30万ッ!!!!????』「きゅっぴー!?!?!?」
あまりの強さに全員漏れなく腰を抜かし魂が抜けそうになる。
30万に対して私のステータスは平均で...350...それも装備込みで...。
シリュウも平均4000程で30万には程遠い...。
イチゴもそうだ平均が5000でHPだけが6万...桁違いだと思っていたイチゴのHP
よりも遥かに高い....。
流石にリーエルさんには全然劣るけど...。
巻き込まれないために遠くからリーエルさんを見守る。
ステータス9999万なんてなにが起こるか見当もつかない。
どんな攻撃をするんだろう...
そんな思いで見守っているとあちらこちらにいるドラゴンの一匹の元まで歩み寄り徐に手を振り上げそのまま振り下ろす。
すると凄まじい衝撃破と共にドラゴンは弾けアイテムの水晶となった。
「嘘...周りの小さいドラゴン緑色の奴より弱いとは言え素手で行けるなんて...」
「きゅー...」
イチゴの気持ちは私でも痛いほど理解できる。
攻撃力が300あったとして防御力30の相手を素手で倒せるかと言われれば断じてない。
あれが9999万の強さなのだろう...。
遠くでリーエルさんは深く頷くと空を飛びこちらに戻ってきた。
どうやら飛翔系統のスキルを手に入れたようだ。
「お待たせしました~」
「あのでっかい緑色のドラゴンはやらないんですか?」
「それは今からです!恥ずかしながら遠距離で攻撃できるスキル持ってなかったので...」
「なるほど...」
能力吸収っていいなぁ...。
ドラゴン一体倒したことによって少なくとも飛翔能力と遠距離攻撃できる能力を手に入れたようだ...。
「では行きますね」
そういうと、ふわりと浮かび息を大きく吸い込んだ。
「きゅぴ...ぴぴ...」
「あれはまさか...とおっしゃっています」
吸い込んだ空気を吐くように口を開くとそこから炎が吐き出され辺りを炎の渦に飲み込んだ。
炎に包まれた緑色のドラゴンはもれなく消失、周りを徘徊していた小さいドラゴンも同様だ。
立ち尽くす私たちになんとも無かったかの様に成果を報告するリーエルさん。
多くのドラゴンを倒したことによるアイテムの獲得は凄まじかった。
食料品や素材さらに日用品までほとんど揃ったのではないだろうか...。
イマイチイメージが湧かなかった。あの異常な強さをもつイメージが...呆気に取られ過ぎた私たちはもう休むことにした。
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