第7話 初めての戦闘

 木造の家はかなり落ち着いた雰囲気だった、今までの孤児院と比べたらかなり生活水準が上がったともいえる

だが、家具などは何もなく部屋の隅の方に箱が置かれているだけだ

子ドラゴンが箱の所でぴょんぴょんと跳ねているので箱を開いてみる

箱の中には四種類の水晶玉が入っている様なので、それを取りだしてみる


水晶には種、鍬、じょうろ、肥料が映っている


「え?武器とか入ってないの?初心者に必要なものって剣とかじゃないの?」


子ドラゴンもあからさまに落ち込んだ様子だ、正直私にとっても想定外の事だ

だが、師匠だけが「成る程...」と言っている、いいアイテムなのかな?そうは思えないけど


「見たらわかるかもしれんが、この家には何もない、唯一ゼルセラ様から頂戴したバスキットだけじゃ、しかしこれだけでは冒険に出れない、だからまずは、作物などを植え旅に出る準備をせねばならんのじゃ

それに、先ほどのゼルセラ様の話しによると装備や家具、それに食料は近場のモンスターを倒すことで手に入れることが出来る

恐らく生活が安定するくらいまでレベルを上げてから冒険、つまりは草原の外のエリアに行けと言う事なのじゃろう」

「つまりは、弱いモンスターを一杯倒してご飯とか家具を手に入れればいいって事ですか?」

「その通りじゃ、それに、ベットがないとよくおぬしらも眠れんだろう、わしはこの後、少し周りを見てくるからの、最低限おぬしらの食料くらい確保してくるわい」


正直少し心配である、強いのかもしれないけどあの熊みたいなのには敵わないと言っていたのだから、


「大丈夫なんですか?」

「大丈夫じゃよ、こう見えてもわしは、おぬしらの居た世界からすればかなり強い方じゃからの」


師匠がそうゆうのならこれ以上引き留めはしない、それにこの世界では死ぬことがない、死ぬつまりはHPがなくなったらこの家にテレポートする仕組みになっている

なら別に大丈夫だろう。


どこかワクワクしている様にも見える師匠を見送ったので家には私と子ドラゴンだけになってしまった


「キュピ―!キュピ―!」


必死に何かを訴えかけてくれているが、人間の私には一切何を言ってるかわからない


やがて子ドラゴンが水晶を咥え始めるので食べ物じゃないよと止めようと思ったが、飲み込むつもりはないらしい、それどころかその水晶を私に差しだしてきた


これは...水晶に映っているのは種の様なものだ、もしかしてこれを畑に植えようってこと?


察してくれたのが嬉しかったのかキュピキュピと鳴いている。さっぱりわかんない


水晶から鍬などのアイテムを取りだした、子ドラゴンに種とじょうろと肥料を持ってもらい、私は鍬を持ち運ぶ

はっきり言って―――重い、すごい重たい

これだけでもいい修行になってしまいそうだ....


汗を垂らしながら外の畑まで鍬を運んだ、子ドラゴンは力があるのかとても楽そうに運んでいる、人間とはここまで力がないのか...凄いな...ドラゴン


心の中で吐き捨てながら畑を見渡す


―――これ、鍬いらないじゃん...


畑は既に耕されており、もう、植えて水をかけるだけで良さそうだ、どうして鍬を初期アイテムしたのか...問いただしたい

あの重労働はなんだったんだろうか


子ドラゴンが自慢の爪で耕された土を少し堀りその小さな穴に水晶から取り出した種を埋めた

そして土を戻しじょうろを使用して水を撒く、これで一つのレーンは終わりだ―――よし、次!


次はゼルセラ様からもらった『力の宝種』を埋めることにする

先ほどと同じように種を植えて水をまくことにする―――なぜか即座に真っ赤な花が生成された


「え?」「キュピ?」


真っ赤な花には二つの実がなっておりさらに一つ種が生成されている、つまりこれは消費しないタイプの永久期間なのだ


二つの真っ赤な実を手に取ってみる、まるでリンゴを思わせるかのような感触だがどこか温かみを感じる


一つを子ドラゴンに向けて投げるとそれを勢いよく食べてしまった、特に害は無さそうなので自分も食べてみる。けして毒見をさせたわけでは無い。


口に含むと多少の酸味がありながらも残る後味はとても甘かった、毎日でも食べれそう―――


「キュピ――!!」


急に子ドラゴンが叫ぶので慌てて子ドラゴンの方を見てみると子ドラゴンの目の前に何か透明な板の様なものに何かが描かれていた



Lv:5

名前:「  」

種族:【小さな氷竜】

称号:幼き竜

HP:521

MP:360

ATK:290

DEF:280

INT:156

RES:300

SPD:124


スキル:【竜の鉤爪ドラゴンクローLv1】【氷息吹フロストブレスLv1】【竜種威圧ドラゴンオーラLv1】

特殊スキル:【ミーシャ協力LvMAX】


意味はわからないがすごいのだろう。

レベルが一桁なのに、他が三桁もあるのだから、きっとすごいのだろう


正直、比較対象がないので何とも言えない、自分の数値が見れれば話は変わってくるのだが

突如後ろからガサガサという足音が背後で聞こえるので振り返ってみるとそこには師匠の姿があった

あれ?さっき出かけてたはずなんだけど?もう帰ってきたのかな



「もうお戻りになられたんですか?」

「なに、少ししまっただけじゃよ、心配するほどのことでもないから心配せんでええぞ」


よかった、無事そうだ―――ってならないよ!捻られたてもしかして殺されたの?先が思いやられるよ...

それでも、草原エリアのボス、もしくはエリアボスに戦いを挑んできたのかもしれない、さっきゼルセラ様が出したような熊に師匠が勝てるイメージがわかなかった


「まさか同じ龍種に後れを取るとは思わなかったわい」

「ドラゴンと戦ったんですか?!」


師匠がそれを否定する、え?でもさっき後れをとったって...ん?


「あれは戦ったうちには入らないのぉ、わしは空を飛んでただけじゃからの...」

「え?どうゆう事ですか」


師匠は自分に起きたことをすべて話してくれた

 

師、曰く草原エリアのボスを見に行こうと空を飛んでいたら遥か下の地上に竜の巣があったらしく、その上を通過しようとした瞬間に斬撃の様なものが飛んできたらしい?

師、曰く『竜の鉤爪ドラゴンクロー』だったとのこと、気付いた時には既に遅く三本の斬撃によって師匠は三枚おろしにされてしまった。らしい


なにそれ怖い


「それはいいんじゃ、それよりさっき子ドラゴンが言ったことの方が気になるじゃろ、試しに『状態ステータス』と言ってみろ」


師匠に言われるがままに「『状態ステータス』」と呟くと先ほどの子ドラゴンと同じように透明な板と数字達が現れた



Lv:2

名前:「ミーシャ・ストロニア」

種族:【人間(少女)】

職業:【盗賊見習い】

称号:【   】

HP:21

MP:10

ATK:30

DEF:10

INT:6

RES:3

SPD:14


スキル:【盗みLv1】

特殊スキル:【マーシャ(仮)協力LvMAX】


え...私子ドラゴンより圧倒的に弱い...かなりショック...でも、私はただの人間の少女なのだから仕方がない...そうやって自分を慰めるしかない...


子ドラゴンを横目に見ると勝ち誇ったかのように口元が緩んでいる。うっ...うざい


それを見兼ねたのか師匠が周囲を探検してくるようにと言われた、確かにここでいつまでも自分のステータスを見ていても強くなれるわけではないので、私としては師匠に賛成だ

ただ、子ドラゴンと一緒なことに多少の不満はあるが、今の私一人ではすぐに死んでしまうかもしれない、分かっていても納得は出来ない


「その子は覇王様に名付けをして貰うまで『シリュウ』とでも呼ぶといい、それじゃあ、わしもいくからの」


そそくさと行ってしまう師匠を送り出してから、シリュウと一緒に近場の草原をうろうろすることにした


草原にはウサギのようなモンスターがいた、その辺に落ちている木の棒を拾い上げ武器として使用する、そもそもこれくらいしか武器がない...


シリュウがキュピー!と鳴くとウサギの頭上に私達がみた半透明なものが表示される。どうやら『状態ステータス』と言っていたらしい、成る程、相手の状態もわかるのか、


Lv:3

名前:「  」

種族:【スモールレッサーラビット】

職業:【  】

称号:【   】

HP:10

MP:10

ATK:10

DEF:10

INT:5

RES:5

SPD:50


スキル:【頭突きLv2】【噛み付きLv1】【小動物威嚇Lv1】




っく!同格が相手か、ならば不足はない!と意気込んでいるとシリュウがウサギの元まで歩いていき小さな尻尾を振ることで倒してしまった


え?

どう考えても私の相手だよね?

なんでこんな弱いモンスターに手を出したん?

ただただ呆然と立ち尽くしてしまう


それに反してシリュウは褒めてほしいとばかりに短い尻尾をブルンブルンと振りキュピキュピと鳴いている


うぐ...特に悪意があったわけじゃないのが逆に申し訳ない

だからちゃんと最初に説明しないと、今後も繰り返してしまうかもしれない

でも、なんと伝えればいいのだろう...私は弱いモンスターを倒すからシリュウは強いモンスターを倒して、なんだか情けないな...却下だ

なら―――


「交代でやろ!いい?シリュウ?」


キュピ―!と了解の意思が伝わってくる


よし!うまくいったな!

さっきのモンスターがアイテムを落としたらしくシリュウが水晶を咥えて来た

水晶には剣の様なものが映っている

取りだしてみると、思いのほか短かった、長さにして15センチほどの短剣だ、シリュウには扱えない物だから渡してくれたらしい


試しに装備してみるが見た目通り軽くて扱いやすそうだ『状態ステータス』と呟くとさっきよりATKが5上昇してATKが35になっている

嬉しいがシリュウの攻撃力と比べると、涙が出てきそうになる、まさに天と地ほどの差がある


気分を入れ替えてもう一度モンスターを探す、するとまたさっきと同じウサギが現れる、今度は私と伝えてあるのでシリュウは見守ってくれていた


短剣で攻撃をしてみるが一向に当たる気配がない、もし仮にさっきのウサギと同じ『状態ステータス』ならあのうさぎはSPDが50もありかなりの強敵だ

何度も攻撃するが当たる気配は無く終いには【頭突き】を食らってしまった、かなり痛い


自分のHPを確認してみると10も減っており現在のHPは11しか残っていない...後一撃喰らったら終わり?

―――信じたくないが事実だ、一般的な子供ではモンスターには敵わないと言う事


それを見兼ねたのかシリュウが手を貸してくれた。といってもスキル『竜種威圧ドラゴンオーラ』による相手の状態を下げ降伏状態にすることだ

ウサギは戦闘を止めお腹を見せて降伏の姿勢をとっている。

無防備にお腹を見せているウサギに短剣を突き立てる

心が痛い、物凄い罪悪感に襲われた様な気分だった


するとウサギは水晶に変わり水晶には肉の様なものが映っている

そしてもう一つレベルが上がった


Lv:3

名前:「ミーシャ・ストロニア」

種族:【人間(少女)】

職業:【盗賊見習い】

称号:【   】

HP:25

MP:12

ATK:40

DEF:15

INT:10

RES:8

SPD:20


スキル:【盗みLv1】【短剣技術Lv1】【解体Lv1】

特殊スキル【無慈悲Lv1】【鬼畜Lv1】【シリュウ協力LvMAX】



短剣技術と解体はまだ許せる...だけど【無慈悲】と【鬼畜】だけは許せない、確かに降伏している相手に止めを刺したけど...

よしこの二つのレベルは上げないようにしよう。


それから日が暮れるまでウサギを狩っていった

レベルが上がったおかげで途中からは一人で倒せるようになっていた、それも複数体同時でも意外とまともに戦えるまでになった


Lv:10

名前:「ミーシャ・ストロニア」

種族:【人間(少女)】

職業:【戦士見習い】

称号:【   】

HP:95

MP:36

ATK:75

DEF:50

INT:45

RES:24

SPD:55


スキル:【盗みLv1】【短剣技術Lv3】【解体Lv3】

特殊スキル【無慈悲Lv3】【鬼畜Lv2】【兎狩人Lv5】【シリュウ協力LvMAX】



あがってしまった...ステータスも...上げないと決めたはずの特殊スキルまでも...

アイテムもそれなりに入手できたので一度拠点に戻る事にする

ふと、気になったのでシリュウのステータスも見せて貰う


Lv:8

名前:「シリュウ」

種族:【小さな氷竜】

称号:幼き竜

HP:921

MP:760

ATK:690

DEF:780

INT:356

RES:500

SPD:324

スキル:【竜の鉤爪ドラゴンクローLv3】【噛み付きLv6】【氷息吹Lv2】【龍種威圧ドラゴンオーラLv2】【竜の鋭尾ドラゴンテール

特殊スキル:【破壊の芽Lv0】【弱肉強食Lv1】【食いしん坊Lv3】【マーシャ協力LvMAX】



え?ステータス上がり過ぎじゃない?そんなに上がるの?

それに物騒な特殊スキルも覚えてるし...食いしん坊って..まさか食べたの?


動揺もあるがひとまず拠点、もといマイホームに辿り着いた。今回の冒険は死ななかったのだから大成功ともいえるだろう。

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