第159話ソシャゲアプリに親の金で課金しまくった小学生に対抗してみた2
新太はぽかんとした後、全力で睨んできた。
「は? 何言ってんの? アプリゲームは無料だっつーの。売ってるゲームと違うんだよ! バカじゃねぇの?」
「ゲームに使ったことに変わりないだろ。八十万でゲームのソフト買うのと、無料とか言ってるのに金かけてガチャ回すのとどの辺が違うんだよ?」
「だからさぁ、カードが支払ってくれるんだろ? それで良いじゃん」
「カードが支払うわけないだろ。ただのプラスティックの板が金払えるわけないだろ。一体何言ってんだ?」
「は、はぁ?」
新太に動揺が走る。
「お、お前、知らねぇのかよ。クレジットカードは買い物が出来るんだぜ?」
「へぇ、じゃあそのクレジットカードはどこかで働いて給料もらってんのか? 働いた金でお前の八十万払ってくれんのか?」
「何、言ってんだ、こいつ、頭おかしいだろ!?」
奏介は冷めた目で見て、
「すみません、タブレットに登録してあるカードって英治さんがお持ちですか?」
英治は目を瞬かせる。
「え、ああ、これを」
よく聞く、J○Bカードだった。
「お借りします」
それを受け取って、新太に見せつける。
「ほら、自分で動けないし、喋れないし、生き物でもないし、人間でもないプラスティックが金を払えるわけないだろ」
奏介は新太に歩み寄って目の前でカードをパタパタと振る。
「これが一体どうやって金払うんだよ。説明してくれ」
「ぐ……」
何か言い返したいのだろうが、出来ないのだろう。当然だ。恐らく彼はクレジットカードの仕組みを理解していない。
「か、カードが払ってるわけじゃないことくらい知ってるっつーの」
「じゃあ誰の金だよ」
間髪入れない奏介の問いに、再び言葉が止まる。
「誰の金だって聞いてんだよ。カードが払うわけじゃないなら誰の金だ」
「……と、父ちゃんと母ちゃんの」
ようやく認めた。カード会社の存在を知らない小学生はそう答えるしかないだろう。
クレジットカードとは、後払いができるカードのことなのだ。コンビニやスーパー、ネットショッピング、水道や光熱費などの公共料金、税金など幅広い支払いに使用できる。現金を持っていなくても買物ができるため、非常に便利なのだが。
一ヶ月に一度、使った分を口座から引き落とされるわけだ。
「お前さ、お母さんとお父さんの金ならいくら使っても良いと思ってんのか? そりゃ働いてない小学生の子どもだしお父さん達の金を使うのは当然の権利だけど、それは食べ物や服や学校に行くための金だろ。おもちゃやゲームをねだるのも良いけど、今回は頼んだわけじゃないよな? 勝手に、お父さん達の八十万をアプリゲームに突っ込んだよな?」
「だ、だからそれは使えるようにしておくのが悪いんだってっ、使えるなら使うじゃん、そりゃ」
「そっか、悪いのはお父さん達が。で? 使った金、どうすんの?」
「へ?」
「お前が使った金はお父さん達のものだろ。どうやって返すんだ?」
と、そこで姫が口を開いた。
「生活費と野牧さん達に頼んで買ってもらった物以外、つまり勝手に使った八十万は返済しないといけないわよね」
「はぁ!? なんでオレがっ」
「このクソガキ、しばくわよ?」
青筋が立った笑顔を向けられて、新太は黙った。
「まぁ、返済は無理だろうから、毎月の小遣いなしだな」
「っ! なんでだよっ、ふざけんなっ、父ちゃん達もなんか言って……」
両親が怪訝そうな顔で自分を見ていることに気づき、びくっと肩を揺らした。
「お菓子とかおやつもなしね。誕生日プレゼント、クリスマスプレゼント、家族旅行もなしかしら」
「え、え……」
英治が息をついた。
「そうだな。一ヶ月で八十万が消えたんだ。しばらく節約生活だ」
「返金出来そうにないしね」
ゆこも困ったように頬に手を当てる。
二人が本気なのを感じたのか、新太が顔を青くする。
「ま、待ってよ。オレ、ただ強いキャラがほしくて」
奏介は腕を組んだ。
「じゃあ、手に入れたそのキャラが次の誕生日プレゼントだな。それと、働けるようになったら働いて金返せよ」
そろって頷く、英治とゆこ。
「ねぇ、新太君」
姫がすっと手を伸ばし、彼の顎を掴む。まったく力は入れていないよう。
「将来、やりたいことがあっても、出来ないと思うわよ? 何をするにもお金がかかるし、若いうちは親を頼りにすることもあるけど、あなたを助けてくれたりはしないから」
震え始めた新太を奏介は見下ろす。
「いっちょ前にカードが支払ってくれるとか抜かしてんじゃねぇよ。カードの意味を調べてから使え。それに、他人の物を勝手に使っておいて、許されると思うなよ。子どもだからってなっ」
「ご……ごめんな、さい」
大人四人に責められてはこうなるのも仕方がない。しかし大金だし、態度も悪かったので仕方ないだろう。
同情はしない。
客である奏介と姫の前ではやらなかったが、これから両親のお説教が始まるのだろう。それを考慮し、お暇することにした。
帰り道にて。
「夕飯、焼肉でどう?」
「え、良いの?」
「いい働きしてもらったし、ボコボコにするのを回避出来たから。はー、危なかった。腹にニ、三発入れるところだったわ」
それに関しては少し共感出来る。
「ちゃんと反省すれば良いけど」
「大丈夫よ。英治さん、バリバリのヤンキーでスイッチが入って、怒ると物凄く怖いから。子育てする前にヤンキー感は封印するって言ってたけど今回は解禁ね」
奏介は頷いた。恐らく、それが良いだろう。
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