第12話 そして、殺人
「そんな……そんなはずありません!」
ななみの悲鳴にも似た声が夜を裂いた。鍵と笹桑にあてがわれた寝室には、いま煌々と明かりが点いて、祈部豊楽が、九南が、霜松市松が、馬雲千香と八乃野いずるが集まり、数人の刑事たちが、正座する一人の女を取り囲んでいた。白い薄手の着物を着た、鍵の知らない女。幾谷いつみ、ななみの母親である。
「母さんは病気で、そんな、霜松先生も何か言ってください、何で、こんな事」
動揺するななみに、いつみは青白い顔を優しく微笑ませた。
「いいのよ、ななみ。全部、私がやったのだから」
白手袋の築根麻耶が、透明なビニール袋をななみに見せる。中に入っているのは、
「お母さんの物で間違いないですか」
ななみの目は、玉かんざしに釘付けになった。
「そうです、母さんのです、だけど、母さんに人殺しなんてできるはずない」
築根がいつみを振り返ると、女はうなずいた。
「全部、私がやりました」
そのいつみに、豊楽が廊下から声をかける。
「しかしなあ、いつみさんや。死んだのは大の男が二人じゃぞ。あんた一人で全部っちゅうのは無理がないか。実際、探偵さんにはこうして捕まっとるし」
けれど、いつみは首を振る。
「いいえ、すべて私が一人でやった事です。刑事さん」
いつみは築根を見上げた。
「これ以上、娘にこの姿を見せるのはつらいです。警察に連れて行ってくださいませんか」
築根は鍵に目をやった。何やらいつもと雰囲気が違うが、いまはそんな事を気にしている場合ではない。鍵は仕方ないという風にうなずいている。次に市警の数坂を見た。連行に問題はないらしく、数坂もうなずいた。
「ちょっと待った」
豊楽がそれを止めた。
「いくら何でも、そんな格好で留置場は寒すぎるじゃろう。何か羽織る物を持って行きなさい」
そして周囲を見回す。
「戸女。戸女は来とらんのか。何しとるんだ、こんなときに」
確かに、言われてみれば戸女の姿がない。
「私が呼んで来ましょう」
そう言ったのは九南。大柄な身を翻すと、母屋の戸女の部屋に廊下を走って向かった。豊楽は、ななみに目を向ける。
「おまえさんは部屋にお戻り」
「嫌です、母さんと一緒に行きます。だって」
かぶりを振るななみを、いつみは静かに諭す。
「わがままを言うものではありません」
そして、豊楽に向かって手を付き、頭を下げた。
「今日まで、本当にありがとうございました。今後とも、娘をよろしくお願い致します」
続けて、霜松市松にも頭を下げた。
「先生も、よろしくお願い致します」
と、そこへ廊下を慌ただしく走る音が響いた。九南が戻って来たのだ。
「た、大変だ!」
その声に、廊下の刑事たちは顔を向ける。部屋の中から顔を出した者もいた。衆目の集まる中、うわずった声で九南が叫ぶ。
「戸女さんが死んでる!」
そのとき、鍵は――鍵蔵人の姿をした別人は――見た。幾谷いつみの目が、驚愕に見開かれるのを。
九南の絶叫を聞いて、僕たちは母屋にある戸女の部屋に走った。障子は開け放たれている。思わず部屋に入りかけた僕を、刑事の声が止めた。
「入っちゃいかん!」
慌てて後ろに戻ると、入れ替わるように、懐中電灯を手にした刑事たちが部屋へ入り、照明のスイッチを探す。天井のシーリングライトが点いた。部屋の真ん中に、戸女が倒れている。仰向けで、首には帯締めを巻き付けられて。明らかに自殺ではない。
ひときわ体格の大きな刑事が、女刑事に向かってたずねるのが聞こえた。
「これも、さっきの女がやったんでしょうか」
僕は笑い出しそうになるのを堪えなくてはならなかった。そんな訳があるか。あの病弱な幾谷いつみに、いかに相手が老婆とは言え、首を締め上げるような腕力があるはずがない。いや、仮にあったとしても。
後ろに目をやると、九南が遠巻きに部屋の様子を見つめている。あのとき九南は言った。ハッキリ言った。「戸女さんが死んでる!」と。しかし何故わかったのだろう。九南がこの障子を開けたとき、部屋は真っ暗だったはずだ。いったい九南は何を見て、戸女が死んでいると思ったのか。
見なかったのではないか。何も見ずに、戸女が死んでいるのを確信したのではないか。それはすなわち障子を開ける前から、ここで戸女が死んでいるのを知っていたという事。
明確な証拠がある訳ではないから断言はできないが、少なくとも戸女の死と九南が無関係とは思えない。九南の腕力があれば、戸女を絞め殺すくらい簡単だろう。ただ、どうして絞め殺した。何故、他の事件のように自殺に見せかけようとしなかった。
簡単に思いつくのは、慌てたという事だろう。戸女を殺す計画はなかった。それが急遽、殺さなくてはならなくなった。一連の事件が自殺ではないと明らかになるよりも、マズい事態が発生したのだ。だから慌てて殺した。そして死体を隠さず、あえて警察に見せた。疑惑を向けられないために。
だがそのマズい事態とは何だ。そもそも、これらの殺人を考えついたのは九南なのか。何のために。確実に豊楽の後継者となるため? 財産を独り占めするため? 確かに人は欲に駆られれば、越えてはいけない一線を簡単に越える。しかし、どうにも納得が行かない。
他の事件も九南が犯人なのだろうか。実行犯である可能性は低くない。凶器を隠し持って兄弟の背後に回っても、九南なら怪しまれないかも知れない。PCの操作もできるだろうから、遺書だって書ける。条件は揃っている。それでも。
開け放たれた障子の真ん前に立つ祈部豊楽は、呆然と立ち尽くしているようにも見えるが、もしかしたら単に見えるだけかも知れない。果たして豊楽が、九南の犯行を知らなかったという可能性はあるだろうか。あるいは九南が兄弟を殺すのを、させるがままに放置していたなど考えられるだろうか。
いや、そんな事は有り得ない。豊楽は知っていた。放置などしていない。それどころか、豊楽が主体的かつ積極的に事件を計画し、それに基づき九南が実行したのだろう。
何故なら、この屋敷の中で豊楽は絶対者だからだ。豊楽に隠れて何かをするよりも、豊楽の指示の下に何かをする方が簡単と言えるし、豊楽が指示を出せば、九南は断れないはずだ。その力関係を考えれば、背後で豊楽が動いていたと見る方がわかりやすい。
無論、これはまだ推理の段階でしかない。もしくは空論とも憶測とも言える。証拠が何もないからだ。証拠さえあれば告発もできるのだが、捜査権限を持たない一般人の僕に、捜せる証拠はそうないだろう。さて、どうしたものか。
九南の向こう側では、探偵の鍵が廊下の柱にもたれかかっている。じっと何かを考えていた。そのさらに向こう側で膝を抱えて座り込んでいるのは、あのよくわからない女。笹桑だっけ。
そんな事を思っていると、不意に鍵の顔が上がり、僕と視線が合った。鍵はチョイチョイと手招きをする。え、何だろう。周りを見ても、鍵の方を向いているのは僕しかいないし、呼ばれているのは間違いないのだが。
僕が近付くと、鍵は「よう」と話しかけてきた。以前話したときと、どこか雰囲気が違うような気がする。
「婆さん死んでたか」
そのやけにフランクな口調に違和感を覚えながら、ええ、戸女さんは亡くなってましたね、と僕が答えると、鍵は質問を続けた。
「何か刺さってたか」
いえ、首を絞められてましたよ。そう言いつつ、少し迷惑そうな顔をしてみる。人が死んだ直後にこんな話をするなど不謹慎だと思う者が、ここにもいるかも知れない。たとえば刑事の中にとか。
だが鍵は気にならないのか、こんな事を聞いてきた。
「おまえはどう思う」
は? 僕がどう思うって、どういう意味でしょうか。ちょっと大袈裟に驚いた顔をした僕に対して、鍵の表情は変わらない。
「言葉通りの意味だよ。おまえの考えが聞きたい」
「ちょっと失礼よね、それ」
僕と鍵の間に、千香が割り込んできた。
「別に友達でもないのに、いきなりおまえ呼ばわりって失礼じゃない」
だがそれでも鍵の顔に動揺は見られなかった。それどころか。
「結構平気そうだな」
「え?」
「いや、昔馴染みの婆さんが死んだにしては、ショックが小さそうだと思ってな」
「なっ」
頭にメキメキと血が上る音が聞こえそうな勢いで、千香は眼を見開く。僕が思わず羽交い締めにしたのを見て、鍵は柱から離れ、自分の寝室の方に歩いて行った。
馬雲千香はクロだ。もちろん印象に過ぎない。証拠はない。だがそういう前提で考えていい相手だ。当然、八乃野いずるも何かを知っている。二人ともクロかも知れない。
祈部豊楽はクロだ。これも印象で証拠はないが、この屋敷の中で起きた事について、何も知らないなんて考えられない。祈部九南もクロだ。こいつはミスを犯した。真っ暗な戸女の部屋で、明かりも点けずに死体があると叫んだんだ。それは最初から、そこに死体があると知っていた証拠だろう。
そして、幾谷いつみはシロだ。かんざしを振り回したのは事実だが、あの女は何も知らない。戸女が死んでいた事も知らなかった。誰か操ってるヤツがいるはずだ。
当面の問題は、馬雲千香と祈部豊楽のクロ同士がどうつながるのか、それがわからない。考えろ。その謎を解き明かせ。おまえの頭なら答が見つかるはずだ。 JC
翌日の昼前、鍵と笹桑は事情聴取のために市警に向かった。さすがの霜松市松も、パトカーで迎えに来た警官にまで嫌な顔を見せられなかったようで、二人はすんなり祈部邸から出る事ができた。
「まさか、警察に来て息が抜けるとは」
取調室で築根の顔を見て、苦笑した鍵が口にした言葉である。もっとも。
「取調室の外でそれ言うなよ。捜査課はみんな睡眠不足でカリカリしてるからな」
とは原樹の忠告である。
幾谷いつみは昨夜の犯行を自供している。と言うより、「すべて私がやりました」としか話さない。一つ一つの事件を挙げて、これを実行したのかと問えばうなずく。だが、どのように実行したかをたずねても口をつぐむ。刑事の雑談にも応じず、病気だと聞いているのに警察医の診察にも押し黙ったままだ。
「アンタを疑う訳じゃないんだが」
ごま塩頭の数坂が鍵にたずねる。
「あの幾谷いつみに襲われたのは、間違いないのか」
鍵はちょっと困ってしまった。「実は覚えていない」などと言って通じる訳もないからだ。しかし笹桑が先に喋り始めた。
「間違いないっすよ。私、鍵さんがあの人を押さえ込んでるの見たっすから。手元にかんざしがあるのも見ましたし」
「まあ、防犯カメラのあるような場所じゃないですから、疑うのは仕方ないですよ。でもマジックの入れ替わりみたいに大層なトリックでもない限り、あの人がかんざしを持って私の寝てるところで暴れたのは事実、です」
だと思います、と言いそうになって、慌てて鍵は言い切った。
「時刻は覚えてるかね」
数坂の言葉に、鍵は笹桑と顔を見合わせる。
「それは、さすがに無理でしょう」
「けど、鍵さんが押さえつけてから私が通報するまで、三分とかかってないと思うんすけど。警察の方に記録が残ってないすか」
鍵の前に、横手から茶の入った湯飲みが置かれた。多登キラリが不審げな目で見つめている。
「あんな病弱な女の人が、何人も人を殺したとは思えません」
「とは言え、だ」
キラリの向かい側から声がする。
「三太郎と四界は首の後ろを刺されてる訳だし、女の細腕でもできないとは限らない」
いつみ犯人説を主張しているのは原樹。岩のような体格で取調室を圧迫している。そもそも、いまこの部屋には刑事が四人もいるのだ。人口密度が高すぎると言えた。鍵は湯飲みに口をつけるとこう言った。
「幾谷いつみさんは、豊楽さんに手を付いてこう言いましたよね。『今後とも、娘をよろしくお願い致します』。息子を二人も殺しといて、この言い草はおかしくないですか」
原樹は、ムムッと口を曲げて言い返す。
「それは、アレだ。精神が錯乱していたのかも知れんだろう」
しかし鍵はそれを無視して、もう一口茶を飲んだ。
「スルーかよ」
「もし三太郎さんと四界さんと戸女さんが、いつみさんに殺されたんだとしたら」
そして探偵は長々とため息をつく。
「……国田満夫さんは、誰に殺されたんでしょう」
築根の顔に緊張が走った。
「馬雲千香、か」
それに鍵は首をかしげる。
「国田さんが千香さんに殺されたんだとしましょう。で。それと、いつみさんがどうつながるんですか。何故二人は同じやり方で人を殺したのか。共通点は何か」
キラリが声を上げた。
「犯人が女性! だからどちらも腕力のいらない殺し方を選んだんじゃ」
「だよな!」
原樹が思わずガッツポーズを取る。だが。
「そいつはどうかね」
疑問を呈したのは数坂。キラリを鋭い目で見つめている。
「おまえさん、自分の言った事を覚えてるか。三太郎は仰け反って死んでいた、何で背中が丸まってなかったんだろうって言ったよな」
「あ、はい」
まさか覚えていると思わなかったのか、キラリは目を丸くして立ち尽くした。数坂は諭すように続ける。
「もし、幾谷いつみが三太郎を殺したんなら、首を刺した後で仰け反らせる必要がある。三太郎は山のような大男じゃないが、決して小柄とも言えない。仰け反らせるのは不可能じゃないにしても、かなり苦労しただろう。腕力のない女が、何故そこまでした」
それを聞いていた鍵が、築根にたずねた。
「検視の結果はどうなんです。傷の深さで、自殺か他殺かわからないものなんですか」
「それが微妙なところらしい。確かに傷は深いんだが、男の腕力ならあり得るとか何とか」
鍵はしばらく考え込むと、再び築根にこうたずねた。
「いつみさんは、パソコンかスマホを使ってたんですか」
「いや、どちらもその形跡はない。寝床以外には鏡台とタンスが一つあるだけの、何もない部屋だった」
「だったら若い頃にパソコンを使う職場で働いてたとか、そういうのがないと変ですね」
「三太郎の遺書か」
築根の言葉に鍵はうなずいた。
「パソコンに遺書を書き残すのは、パソコンが使える人なら誰にでもできますが、使えない人にはほぼ不可能です。マグレでできるなんて事はまずない」
しかし、キラリには納得できない。
「タイプライターかワープロが使える人なら、キーは打てるんじゃ」
「メモ帳を引っ張り出してくる時点で無理でしょうね。ただスマホが使えるなら応用は効くかも知れない。デスクトップにメモ帳のショートカットがあればの話ですけど」
これに築根が首を振った。
「ショートカットはなかった。デスクトップにはゴミ箱しかなかったよ」
三太郎の神経症的な部屋を思い出し、さもありなんと鍵は思う。数坂は一つため息をついた。
「つまり三太郎を殺したのは、それなりに腕力があってPCが使える人物」
「首吊り屋ならピッタリだ」
と原樹が真面目くさった顔で言う。また茶を一口飲みながら半目で原樹をにらむ探偵に、築根がたずねた。
「そもそも犯人は、何故三太郎のPCに遺書を残したと思う」
「そりゃあ、『自殺』させるんですから、遺書くらいなきゃ『可哀想』と思ったんじゃないですか」
鍵の返答に、築根の眉が寄った。納得行かないという顔だ。
「おまえ、自分が疑われてるって自覚があるか」
「あ、警部補、それは」
原樹は慌てたが、当の鍵には動揺はない。
「何です、三太郎さんの遺書に私の名前でも書いてましたか」
取調室を肯定の沈黙が包む。
「マジですか」
「そりゃ、鍵さん疑われますよね」
笹桑が楽しそうに湯飲みを口にした。仕方ない、という風に数坂が口を開く。
「名前は書いていなかったが、遺書の最後に『探偵に殺される』と書いてたよ」
「ああ、数坂さんまで」
原樹は頭を抱えている。鍵は、またため息をつきながら苦笑した。
「なるほどね、疑われる訳だ」
しかし、そう言いながらも首をひねる。
「でもそれ、本人が書いてたんなら何かおかしくないですか」
「どこがおかしいんですか」
まだ鍵犯人説にこだわっているのか、疑わしげなキラリに、探偵はこう答える。
「自殺を考えて遺書を書いている人が、自分を殺そうとする者に恐怖するでしょうか。その事実を誰かに伝えようとするでしょうか。そもそも私が犯人なら、そんな遺書は消しますよ。リスクを考えるなら、内容はどうあれ遺書がある時点で消すべきです。犯人は何で消さなかったんでしょうか」
そう口にした瞬間、鍵の頭の中に遠い日の光景がフラッシュバックした。あの日、あのとき、自分が何をしたのかを思い出したのだ。嘘。そうだ、嘘だ。自分は嘘をついていた。
妻は遺書を書いていた。それを灰にして流したのは自分だ。
「鍵さん、気分でも悪いんすか」
笹桑の声で我に返る。鍵は軽く頭を振った。
「……私も寝不足かも知れませんね」
先程の鍵の問いに、答えたのは築根。
「遺書は被害者の意思ではなく、犯人側の意思で書かれた可能性もある。三太郎は、犯人に遺書を書くよう強要されていたのかも知れない。それで隙を見て、最後の一文を見つからないように書き足した、と考えれば筋は通る」
だが鍵は、弱々しく鼻先で笑う。
「死体に抵抗した跡はありましたっけ」
「いや、それらしい形跡はまったくなかった」
「随分と従順ですよね。遺書で犯人を名指しはするのに、自分が殺されるときには抵抗もしないなんて、マトモとは思えません」
「それは、つまり」
のぞき込むキラリに、鍵は言った。
「つまり、三太郎さんは突然殺されたんでしょう。そしてその後で犯人が遺書を書いた。本当は『鍵に殺される』と書きたかったが、犯人は私の名前を知らなかったか、思い出せなかったんじゃないですか」
「遺書は、文章として繋がりがおかしいんだが」
数坂の言葉に、鍵は応える。
「内容を考えたのは実行犯じゃないのかも知れませんね」
「実際のところ、おまえは誰が怪しいと思ってる」
そう言う築根に、鍵は厳しい視線を向けた。
「それを調べるのは警察の仕事のはずですが」
「だからいま、こうして調べている。おまえの目には誰が怪しい。やはり祈部九南か」
鍵は面白くなさそうに湯飲みの茶を飲み干すと、少し間を取る。
「……ま、三太郎さんに限るなら、九南さんでしょうね」
「限るなら?」
数坂は、その言い回しが気に入らなかったらしい。鍵は続けた。
「いや、戸女さんを殺したのも九南さんかも知れない。でも四界さんを殺したのは九南さんじゃないかも知れない」
原樹が目を剥いて前のめりになる。
「何でそう思うんだ」
鍵は空っぽの湯飲みを見て、少し悲しげな顔。原樹が焦れる。
「おい、首吊り屋!」
「ああもう、ハイハイ、わかりましたよ」
そうため息をつくと、鍵は腕を組んでキラリにたずねた。
「四界さんの体から、睡眠薬か何か出てないですか」
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